第7話
「なあなあ、あこちゃん、あと、なんこ? なんこ乗るん?」
眞心は我慢のできない質でいつもそわそわしている。わからないことがあるとすぐになんでも聞いてくるので、少しは自分で考えないと、本当にバカなまま大人になってしまうのではないかと不安になってくる。
もう一年生なのに、助詞の「へ」を「え」、「は」を「わ」と発音しないといけないことを忘れて本を読むし、時計の針もよめない。今が何時かわからない状態でよく平然と生きていられるもんだと、つくづく呆れてしまう。
あとなんこ乗ればいいかなんて、私にもわかるはずない。
そういやさっき停まっていた駅の名前はなんというのだっけ。乗り換えないといけない駅の名前は、ミクニガオカ、だったはず。
電車がとまるたびに駅の名前を確認してみるけど、ミクニガオカが登場する気配はない。まさかとは思うけど、見逃したかな。
もしかすると、ミクニガオカと勝手に思い込んでいるだけで、記憶違いかも知れない。そう思うと、またどきどきしてきた。
でも聞いたこともない駅名を、思い込んで覚えてしまっているなんてことあるかな。
電車がとまるたびに乗客はどんどん減って、車内は閑散としてきた。このままこの電車に乗っていて本当に大丈夫かな。
でもきっとミクニガオカ駅は、こんな小さな駅のはずはないと思う。乗り換えするような駅はきっと大きいに決っている。
慌てて各駅停車なんかに乗ってしまったからいけないんだ。急行に乗ってればもっと早く到着するし、小さい駅にいちいち止まったりしなかった。
だけど各駅停車なら、どこにでも絶対止まるから安心。乗り過ごしたり間違えたり絶対にしないから。
もう少し先に行けば、きっとなにかわかる。ここで戻って、やっぱりさっきの方角が正しかった、戻らなければよかったということになっても困るから、とりあえずあとちょっとだけ自分の直感を信じてみようと思う。
そう決心してみると、なんだかそれ以外正しい答えなんてないように思えてきて、気持が軽くなった。
眞心はもう、あとなんこ乗ればいいのかなんていう質問をしたことさえ忘れているみたいに、足をぶらぶらさせて、連れてきたお人形のみこちゃんとお買い物ごっこをして遊んでいた。




