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トガミキタへ行きたい  作者: 宝や。なんしい


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第4話

 本当はすごく面倒だった。

 

 でも今回はお父さんが珍しく噓をつかず、少し恥ずかしそうにしながらわざわざ連れていってくれると言ってるし、眞心(まこ)もまあるいほっぺたをぺかぺか盛り上がらせて、私のこたえを待っている。


 しゃあないなあ、つきあってやることにするか。玉子焼きをごくりと飲み込んで「わかった」と返事をした。


 でも実は中学生にもなって私は、未だに一人で電車に乗ったことがない。今まで一人で電車に乗らないといけないような用事なんてなかったから、それは仕方がないと思う。


 こんなこと誰にも確認したことなんてないからわからないけど、同級生たちはどうだろう。大人がついていなくてもみんな平気で電車に乗って、ほかの場所なんかに行けるのだろうか。


 いつでもどこへでも、行きたいところに自由に行けたら、いいだろうな。


 眞心(まこ)の分も合わせて切符を二枚買い、駅員の立っているところまで行って渡した。駅員は近くで見ると顔からものすごい汗をかいていた。こんなに汗をかいて大丈夫なのかなと、少し心配になる。


 この間テレビ番組で、人間の体の七割は水分でできていると言っててびっくりした。今まで人間が何でできているかなんて考えたことがなかった。


 それにしても、こんなに汗をかきっぱなしだと、生きていくために必要な水分がなくなってしまうんじゃないだろうか。干からびたキュウリみたいに、しなしなになってしまったら、そのあとこの駅員はどうなるんだろう。汗をかきすぎてキュウリみたいになってしまった人を見たことはないから、きっと大丈夫だろうとは思うけれど。


 切符を切ってもらってから、改札を抜けて少し行ったところで振り返ると、駅員はしなしなキュウリになって、緑色の顔からまだ汗を流し続けていた。私は見ないふりをした。だって私にはどうすることもできないし、今はすごく先を急いでいる。


 右手でしっかりと握りしめた切符を、ときどき手を広げて確認してみる。大丈夫。ちゃんと二枚ある。


 緊張して手のひらがべたべたしてきた。汗で濡れてぐちゃぐちゃになってしまうと困るので、肩から下げたポシェットに慎重にしまう。その後もしばらくはポシェットを開けたり閉めたりして、何度も確認しなければならなかった。


 ふたを閉めると、途端に消えてなくなってしまうような気がして怖かった。

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