第33話
結局今年も夏祭りには行けなかった。
お父さんに、今日一日のことを説明すると、
「ほんまかいな、ようそれでここまで来れたな」と、半分感心していた。
眞心が必死に「まこねえ、まこねえ、かいだんのあるでんしゃにのったよ、おとうさん」と一生懸命しゃべっていた。
いろいろあったけど、眞心にとってはそれが一番すごいことだったんだと思った。
お父さんに怒られるとばかり思っていたのに、ぜんぜん怒られなかった。眞心を肩車して高台にあるトガミキタの駅から、夜景を見せてくれた。仕事中のお父さんはいつもの酔っ払いとは違って、ほかの同級生たちの親みたいにフツウの人に見えた。
「お腹空いてへんか? 飯食うか?」
自分はさっき食べたばっかりなのに「エビフライ食べるか? 熱々のやつ。うまえいでえ。なあ、眞心」と私たちに気を使って言った。
眞心がたべるたべるたべるをいつまでも連発していたので、お父さんは嬉しそうな顔をして、今出てきたばっかりの店にもう一度入り、おばちゃんに「娘やねん」と紹介したあと、エビフライ定食を二つ注文した。
眞心は体が私の半分くらしかないくせに、大きなエビフライをふたつともぺろりと平らげた。お父さんはそれを見て「よお食うなあ、眞心。お父さんびっくりしたわ」と大げさにリアクションしながら笑っていた。普段のお父さんに戻ったみたいで、ちょっとほっとした。
おばあちゃん家に行ってすぐのころ、煮物とか魚の焼いたんとかばかりやったら若い子は物足らんやろと言って、ポテトサラダを作ってくれた。わくわくしたような顔をして「どや、うまいか? どや?」と圧力をかけてくるので「めっちゃおいしいよ」と言ってがんばって全部一人で平らげた。
お母さんとのカレー事件の失敗を繰り返してはいけない。
それからおばあちゃんは、葵心はハイカラなもん好きやからなあと言って、毎日、私のおかずだけポテトサラダを出してくれるようになった。
お母さんのポテトサラダにはリンゴが入っているので、まずい。おばあちゃんのはすごくおいしいとは思うけど、ずっと続くとなるとさすがに飽きる。
「もう、ええよ」と、今日は絶対に言おうと思うんだけど、おばあちゃんが嬉しそうに「葵心はこれ好きやなあ」と作ってくれるのを見ていると、やっぱりどうしても言えなくなってしまう。いったいどうしたらいいんやろう。このまま一生、毎日ポテトサラダを食べる羽目になるのかな。
久々に食堂でご飯を食べたらすごくおいしかった。お父さんと眞心と三人で食べると懐かしい気分。
でも、エビフライ定食の横に添えられていたポテトサラダは、おばあちゃんがつくったほうがおいしい。




