第30話
眞心と私は、駅前の整然としたロータリーをあてもなく歩いてみた。
何か探さないと。
この駅にお父さんはよく来るはずだから、きっと何か痕跡のようなものがあるに違いない。
必死で考えた。同じ会社のタクシーをとにかく探そう。お父さんのことを知っているだろうし、連絡を取ってもらうことができる。近くの食堂に手当たり次第に入って、お父さんの会社に連絡をとってもらうこともできる。
「まこちゃん、お父さんがどっかにおるかもわからんから、一緒に探そう」
そう言うと、眞心はがぜん張り切り出した。
そして、
「あこちゃん、お父さんのタクシーやあ」
眞心が指したところに、お父さんがいつも着ている制服の胸のバッジと同じマークのついたタクシーが止まっていた。
誰も乗っていない。そんなうまい具合にお父さんの車が見つかるはずはないと思ったけど、フロントガラスに貼り付けられてある名札のプレートを確認すると、紛れもなくこのタクシーの持ち主はお父さんだった。
お父さんの名前だ。お父さん、もしかすると、ずっと待っててくれたんかな。
「でかした! まこちゃん」
そう言うと、眞心はぽってりとまるいお腹を突き出して得意そうな顔をした。汗で張りついたTシャツから出べそがくっきりとうつっている。しばらくはこの話題が出るたびに「まこがなあ、お父さんの車みつけてんでえ」と自慢するに違いない。
車に触れると温かかった。どうやら今止めたばかりみたいだ。おそらくこのあたりのどこかでご飯でも食べているのだろう。食堂をひとつひとつ覗いてみるのもいいが、すれ違いになってしまうのが怖くてむやみに動くのはやめた。
私たちは車のすぐそばにしゃがんで、お父さんが帰ってくるのを待つことにした。




