第27話
つまり、この二人にそのままお金を渡してしまうと、子どもにだってわかるくらいつまらない使い方をしてしまうのだ。
賞金をもらったら絶対に貯金しようと決めた。
漫画家になって連載でもするようになったら、印税が入ってくる。原稿料というのは安いらしく売れるまでは何かと大変かも知れないが、私は天才だからきっと漫画家にさえなればあとは心配はいらない。
そしたらこの家を出て、眞心と二人で暮らすことになるだろう。
そのときお母さんも呼んであげてもいい。お父さんもああ見えて淋しがり屋なので、一緒に暮らそうと言われたら一緒に暮らしてあげてもいい。もしおばあちゃんとシゲちゃんも来たいというなら、みんなで一緒に暮らすのも悪くない。
ミクニガオカ駅に到着したときには、もうすっかり夜になっていた。
このまま乗り換えて、今からトガミキタに行ったところで、お父さんが待っているとはとても思えない。清潔駅員に書いてもらった乗り換えの紙を見ながら、今、私が一番やらなくてはいけないことを考えてみた。
私がとるべき最適な行動とは。
ポシェットの中には、十五円。
夜の駅は、そこだけがぽっかりと浮かんでるみたいだった。
次々と発着する電車は宇宙空間を行き来している。触ったらきっと、お母さんのベッチンのコートみたいに、しっとりやわらかいんじゃないかと思うような深い紺色の夜。街のほうから冷たい風がときおり吹いて、眞心の額に汗でへばりついた髪の先っぽをふわりと揺らしていった。
駅を見渡してみると公衆電話が一台ぽつんと置かれていて、自動販売機の薄暗い光にぼんやりと浮かび上がっていた。
そうだ、電話だ。電話。誰に?
お父さんは無理だ。タクシー会社に電話してもお父さんがすぐに出ることはない。待っている間に電話は切れてしまうだろうし、折り返し電話をかけるお金はもうない。
家だ。それしかない。
おばあちゃんに電話をかけることにした。
チャンスは一回きり。
覚えたての新しい家の電話番号を、何度か頭の中で繰り返した。よし。受話器を耳にあてる。コール音が鳴った。
自分の家にかけるだけなのに、なぜか緊張した。




