第25話
私は漫画を描くのが上手い。天才と言っても過言ではない。
本を読むのは好きだけど勉強はあまり好きじゃないので、成績はいつも中くらいだし、よく貧血をおこすのであまり運動も好きじゃない。ピアノなんて習えるくらい裕福な家でもないので音楽も苦手。
だけど漫画だけは、誰とも比べものにならないくらい上手いという自負がある。お母さんにナイショで、漫画大賞の公募に出したことがあったけどCクラスだった。Cクラスの下にはなんの賞ももらえない人がいるので、はじめて出したわりにはなかなかいいほうじゃないかと思っている。
しかもそのときまだ小学校5年生だった。子どもがこんな作品をちょいちょいと描いてしまうなんて、天才と言わずしてなんと言おうか。もっと本気を出して描けば、佳作くらいはちょろいんじゃないかという手応えをそのときに感じた。
少女漫画と出会ったのは眞心が生まれるとき、お母さんが病院から帰ってくるまで親戚の家で寝泊まりしていたことがあって、普段なら絶対に買ってもらうことのできない少女漫画の雑誌を、さくらちゃんの本を買うついでにおばさんに買ってもらったことがきっかけだった。
初めて読んだ少女漫画にすっかり心を奪われた。かわいらしいイラスト、ドラマチックな物語。同じ本を何度も何度も読み返した。
連載中の漫画は、その回だけしか読むことはできなかったので前後の内容はわからないままだったけど、私はそれでもじゅうぶんだった。ボロボロになった今でも大切に持っている。そしていまだに読み返したりしている。
隅から隅まで読み返しているうちに、漫画大賞の募集の記事に気がついた。
私でも漫画家になることができる。私は興奮した。
そしてなによりも興味をひいたのは、賞金。大賞を取ると、なんと百万円。百万円なんてお金をそのころも、そして今も見たことがない。
きっと百万円あればなんでもできる。
毎日喧嘩ばかりしているお父さんとお母さんを捨てて、眞心を連れて家を出ていこう。私と眞心が出て行ってしまったら、さすがに二人とも反省するだろう。本当はあまり信用してないけれど、もしもう喧嘩はしません、仲良くしますと心の底から反省するんだったら戻ってあげてもいいかな。
私だけならどうかわからないけど、眞心がいないと二人とも困るだろうし。




