第22話
今までは子ども扱いされていた私も、今日は大事なことを決めなあかんから葵心はもう中学生なんやし、だいたいこのとはわかるんやから一緒に出席せいとおじさんに言われた。
話し合いのだいたいの主旨は、私たち三人がおばあちゃんの家に引っ越しをするということだった。
これには断固反対した。
なぜならおばあちゃんの家は隣町なので、どうやっても転校をしなくちゃならなくなる。
そんなもの受け入れてしまったら、なんのためにお母さんの誘いを断ったのか。それにお母さんは絶対に帰ってくる。家を出てしまったりしたら、お母さんはどこに帰ってきたらいいのかわからなってしまう。せっかく意を決して帰ってきても、私たちがいないと思ったらまたどっかに行ってしまうかもしれない。
こういうことはタイミングが大事。ちょっとしたタイミングのズレが命取りになることを私は知っている。
何度も説得を続ける大人たち。私はなだめてもすかしても、決してうんとは言ってやらなかった。
これだけは死んだって認めるわけにはいかない。新しい友だちをつくることはきっと簡単だろう。そういう意味では、転校してしまえば、もっと私の家庭の事情を知らない人たちばかりになる。
でも私にとって小学校から続いてきたクラスメイトたちとの微妙な距離感が、一番安らぐことのできる場所だし、それに、クラスが変わってからもうほとんど話をすることはなくなったけど、水野だって同じ学校にいる。
小学校の頃はしょうもない喧嘩ばっかりしてたけど、本当はずっと好きだった。サッカーがめちゃくちゃうまくて、そばかすのいっぱいある男子。恥ずかしすぎて絶対に告白なんてできないけど、たぶん一生好きだと思う。水野以上に好きになれる人なんて、きっとこの先現れることはないだろう。
「葵心、お父さん、無理やねん。なあ、無理やねん。お前ら二人、お父さんひとりでは、どもでけへんねん」
鼻をすするような声がしたので上目遣いにして見ると、お父さんが泣いていた。
お父さんが泣いたのを見たのははじめてだった。心臓がドキドキ鳴って、見ちゃいけないものを見てしまったような、ひどいことをしてしまったような、罪悪感でいっぱいになった。




