第21話
眞心はこれからも正直者で生きていくのだろうか。
私とは違って。
眞心の頭に結ばれたリボンがふわりと揺れた。左右のわっかがきれいに対照になっていた。この結び方はやっぱりお母さんに違いない。姿を現してくれなかったことは残念だけど、眞心の晴れ舞台を見てくれて嬉しかった。
その舞台を最後に、眞心はバレエを辞めた。
「眞心な、バレエ辞める言うたで。嫌やったんかいな。すぐ飽きるんやな、あの年頃の子は。まあでも助かったわ。月謝高いさかいな」と、おばあちゃんが私に言った。
違うよ、おばあちゃん。眞心はおばあちゃんに負担かけたらあかんと思って辞めてん。月謝高いから。眞心の夢はバレリーナやったんやもん。眞心はおバカやけど、こういうことはわかる子やねん。それをわかってるのも私だけ。大人たちはなんもわかってへん。
空が少し赤く染まりはじめた頃、電車は和歌山駅に到着した。さすがの私も、トガミキタがここではないことはわかった。
眞心がバレエを辞めてからしばらくして、親戚の家で話し合いをすることになった。
親戚の家は近くにあるので、お母さんが実家に帰っていなくなると、毎日、朝と晩にごはんを食べに行くことになっていた。いとこのちい兄ちゃんと妹のさくらちゃんもいるから寂しくはなかったけど、できればあまり行きたくはなかった。
お母さんは寝ぼうばっかりするし、晩も仕事で帰ってくるのが遅いので、朝ごはんも晩ごはんもちゃんと作ってくれるわけじゃなくて家でみんなでごはんを食べるという習慣はわが家にはなかったけど、一人ぽっちだとしても家でご飯を食べるほうがよかった。卵焼きくらいなら作れるし、がんばったらなんでも作れる自信はある。
ツチノコ探しの冒険に出かけたとき、刈り取られた田んぼの真ん中で、鍋にポットのお湯を入れて生の大根と醤油を入れて食べてみたら、まずすぎて食べられなかった。
本当は焚き火をして鍋を火にかけて煮込もうと思っていたんだけど、火をつけようとしたら田んぼにいたおじさんに叱られたのでやめた。
でもそういうことじゃなくて、大根の味がまったくしなかったのが原因だと思う。醤油も入れたのに、いったい何が悪かったのかな。その問題がちゃんと解決してないので少し不安は残る。
料理なんて、雰囲気でなんとかなるもんだと思っていたけど、案外複雑なのかもしれない。




