第20話
私が結んだリボンはきれいに結びなおされていた。
はるみちゃんのお母さんが直してくれたんだろうな。リボンもちゃんと結べなくて、お母さんの代わりなんかできへんやん。
私はまた涙が出てきた。
こんなに大きくなったんやな。お母さんおらんようになって、まだ二ヶ月くらしか経ってへんけど、こんな大きく育ったんやな。
私はとうとう、ぐぷふうっぐぴふううっと、変な声をだして泣いてしまった。恥ずかしいけどどうにもとめられない。
お父さんは相変わらず動かなかったけど、気づかないふりをしていてくれることが嬉しかった。
「リボン、はるみちゃんのお母さんに結びなおしてもらったん?」
帰りの車の中で眞心に聞いたら、「ううん、むすんでもらってないよ。あこちゃんがむすんでくれてん」と誰かに自慢するみたいに言った。
そんなはずはない。だってお母さんが結んだみたいに、ふんわりしているし、結び目もぴっちりきれい。
心の中がざわざわした。もしかすると、知らない間にお母さんが見に来てたのかな。お母さんも眞心の発表会はすごく楽しみにしてたから。ささっと忍者みたいに忍び寄って、眞心のリボンを直してくれたのかもしれない。
眞心にも誰にも見つからないように姿を消して。
お母さんがそんなに素早く動いているところを見たことはないけど、なんとなくそれが一番理にかなっている気がした。一瞬、眞心が私に気を遣って嘘を言ったのかと思ったけど、眞心はおバカなぶん嘘をつくこともできない。
「眞心ちゃん。これは内緒やで、絶対にしゃべったらあかんで。もし、おばあちゃんに聞かれても知らんって言わなあかんで」と、釘を刺していたことを、聞いたそばからべらべらしゃべって、ご丁寧に「あこちゃんが、内緒やで、って言うてた」までちゃんと伝えてくれるくらいなのだから。
「だからしゃべったらあかんていうたのに、なんで言うんよ」
「だってずっと待ってても、おばあちゃん、まこにきいてくれへんねんもん。おばあちゃんがきいてくれへんかったら、まこ、しらんっていわれへんやん」
でもこれは、眞心がまだ子どもだからじゃなくて、きっと遺伝だと思う。だってお父さんも同じだから。
「今日な、葵心とハンバーグ食べてんなあ。銀のフォークのあるとこ行ってんなあ。なあ葵心」
お母さんにナイショで、二人で高級そうなレストランでお昼ご飯を食べたことに罪悪感があったのか、このことは葵心とお父さんの秘密なと自ら言っておきながら、聞かれてもないのに勝手にべらべら告白してしまった。
私がこの事実を隠すために、お母さんについた嘘をどうしてくれるのか。
裏切られた気分になった。大人でもこんな節操のないおしゃべりな人っているんだと、我が親ながら情けなかった。




