第19話
客席から舞台を見るとすごく立派で、こんなところで眞心が演技をするなんて信じられなかった。
ブザーがなって音楽が流れると、舞台の袖から開いた小さな傘がちょこんとあらわれた。あ、家の中で振り回していた傘。
音楽がリズムを刻む。
ぴんと張った細くて小さな片足。リズムに合わせて、かかとで床をコツンと鳴らす。
にゅっと頭。
一生懸命つくった笑顔。紛れもなく眞心だ。次の瞬間、私は泣いていた。親心というものはこういう感じなんだな、としみじみ思う。
泣いていることを隣に座っているお父さんに気づかれたくなかったから、ハンカチを鞄から出すのを我慢した。先に用意しておくべきだった。
涙がじゃぶじゃぶあふれてくる。鼻をすするのも我慢していたら、顔中がぐしゃぐしゃになってしまった。諦めてハンカチをだして顔をごしごし拭いてから、目だけ動かしてちらりと隣を見てみたけど、お父さんはちっとも動かないのでどんな顔をしているのかわからない。
若い頃、お父さんとデートで映画を見に行ったらはじめから終わりまでずっと寝ていて、ぐうぐう大いびきをかいてめちゃ恥ずかしかったのよ、とお母さんが言っていたことがあったので、もしかして寝ているのじゃあるまいなと思ったけどそうでもないようだった。
私が泣いていることはあきらかなのに、全然こっちを見ないということはもしかするとお父さんも泣いているのかもしれない。お父さんは、私が泣いている理由はわかっているのかな。子どもが親の気持になるなんて、生意気とか思っているんじゃないかな。
眞心は小さな体を目一杯使って、上手にバレエを踊っていた。
「あんどぅ、とろわ。あんどぅ、とろわ。みてみて、あこちゃん。まこ、こんなんできるようになったで」
つま先で立ったり、かかとをつけて足の甲を一八〇度に開いたり、背ずじをぴんと伸ばして手を縦に伸ばしたり横に伸ばしたり、くるくると回転してみたり。
いっぱしのバレリーナみたいに優雅に。狭い家の中でも一生懸命練習していた。




