第17話
バレエの発表会があるというので、お父さんと一緒に観にいった。前の日に「葵心、一緒に行ってくれるか? 眞心の着替えるのとかお父さんにはでけへんから」と言われて、私も一緒についていくことになった。
言われなくても行くつもりではいたけど、お母さんの変わりに着替えとかをしてあげないといけないことをこのときはじめて知った。
必要なものは注意事項として渡されていた用紙に箇条書きしてあったので、ひとつひとつ前日の晩に眞心と一緒に準備した。
今まで特に眞心のバレエには関与したことがなかったので、トウシューズとかチュチュとか珍しいものがいっぱいあって面白かった。どれも高価そうでうちには似合わないものばかり。舞台で着る衣装を購入しないといけないけど、あんなに高いものなんて買えないとかなんとかおばあちゃんがぶつぶつ言っていて、それでてっきり発表会は辞退するもんだとばかり思っていた。
衣装を広げてみると、淡いピンク色で何重にも重なったスカートが真横にぴんとはりだしている。小さくてかわいい衣装。眞心はピンクが似合うのできっとかわいいに違いない。
ちなみにおばあちゃんはもったいないが口癖で、やぶれた靴下とか下着とかつづくろって使うのが当たり前だと思っているような人なので、おばあちゃんの手作りの衣装だったらどうしようとまじで心配したけど、ちゃんと買ってもらえてよかった。
控え室に入ると、たくさんの小さな女の子とお母さんたちがそれぞれに着替えをしている。忙しそうにで誰も私たちのことに気がつかない。
どの子も幸せそうにキラキラしている。私は絶対に眞心に恥をかかしちゃいけないと思った。どこのお家の子より眞心が一番幸せ。お母さんがいなくてもちっともかわいそうじゃないし、どこの子より眞心が一番かわいい。
私たちは空いていた僅かなスペースに荷物を置いて、見よう見まねで着替えをはじめる。
ここには私と眞心しかいない。お母さんの代わりを頼まれた。頼る人は誰もいないのだからしっかりしないと。
なんとか着替えは無事に済ませることができた。さて、次は何をするのかと、隣の子の顔をみてびっくりした。




