第13話
あぜ道を行くと田んぼの中には蓮華が群れて、ため池にはおたまじゃくしが溢れている。ひばりがまっすぐに空に向かって昇っていったと思ったら急に羽を振るのをやめて、そのまま墜落。よくわからないけれど、ひばりは泣き叫びながら何度も何度もそれを繰り返している。
それぞれが生きることに貪欲で、その生々しさが鬱陶しい。
日光に熱せられた生温い風が、わざとそうしているみたいに執拗にまとわりついてくる。
吐き気がする。
しばらく歩いていると、小さな公園があって平日の昼間だからか誰もいなかった。学校からはそんなに離れていないけれど、こんな公園、知らないと思った。お母さんは何かを確認するみたいにして辺りを見渡してから、そこに入った。
私は照れくさいような、なんだかよくわからないそわそわした気持ちになって、ブランコに乗ってみた。気まずそうにお母さんが、押してあげようか小さい頃よくやってあげたじゃん、と言ったが、私は下を向いて、覚えてへんとこたえた。声がかすれてしまって、頭の中で考えてるようにうまくはしゃべれない。
「覚えてへんの? 愛想ないなあ」
乾燥した笑い声は、色褪せて剥がれ落ちたポスターみたいにぺらぺらして、私とお母さんの間にとどまったまま。ひばりはまだ昇ったり墜落したりを続けている。
「あこちゃん」
あこちゃん? いつも私のことあこって呼び捨てにするのに、なんでちゃん付けやねん、気色悪い。一週間ほど離れただけで呼び方すら忘れてしまったのかと、少し不安になった。
なるほど、そうか、わかった。この人はお母さんの体を乗っ取った宇宙人に違いない。地球を侵略しにきた宇宙人。なんでターゲットがお母さんなのかはわからないけど。
お母さんを返してって言ってみようかな。
でもそうすると「つまんない空想みたいなことばかり言わないで。あんたって本当に理解できない」と言って泣き出すかも知れない。
カレー事件のときみたいに。
面倒なことになるのはうざいので言うのはやめた。




