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欠落した満月と冷酷な太陽  作者: 武臣 賢
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第四十八話

「すいません。実は、あの夜、水浴びしているあなたを覗いていたのは私なのです。その時に私の気配を察知されてしまった。ほとんど気体と同化して、察知される訳はないと自信を持っていたのですが、あっさりと察知されました」


 なるほど、あの時の気配はこの光の塊だったのか、ボクは納得する。

 完全に消し去ったと思えた気配を察知できるのだから、腕も相当に立つに違いないと見当が付いたのだろう。


「あ、申し遅れました。私は精霊のラン・フランシーヌ。そしてこの蜘蛛は聖獣のキナ・ルーリーと言います」


 二人はそう名乗った。ボクも、帝都エレプタールにある冒険者ギルトに所属しているミスミ・ミタマだと教えた。


「それで、今度はこちらが助けてもらいたいのだけれども、他に出口はあるのだろうか? あれば案内をお願いしたいのだが」


 金属片のようになったレギオンワームの残骸をひとつ二つ手にとって、先程放り投げたリュックサックに詰め込む。

 これだけの量のレギオンワームの残骸であれば、帝都に持って帰ればそれなりの額で引き取ってくれるのだが、流石に全部は無理だ。提出用のサンプルだけを持ち帰るしかない。


「はい。それは大丈夫です。あの出入り口から最も近い出口へとご案内致しますので、安心してください」


 光の塊、いや、ランが案内をしてくれると言う。

 ランは巨大蜘蛛のキナにはここに残って休んでいるようにと伝えると、ボクを先導して出入口まで案内してくれた。


「ボクは、この洞窟の調査にきているのだけれども、どのあたりまで報告をするか迷っている、意見を聞かせて欲しいし、いくつか質問もあるんだけれどいいだろうか?」


 光の塊の後を歩きながら尋ねた。ランはコクリと頷いたので話を先に進めた。


「まず、ボクは遺跡があるかどうかの調査のためにこの洞窟へとやって来たのだけれど、実際に遺跡はあるのだろうか?」


 するとランは、聖獣にまつわる遺跡が確かにある、と教えてくれた。


「ただし、ここから数十日はかかります。洞窟は何層もあり、しかも入り組んでいます。あなた方が見つけた洞窟は、数年前に出来た一番新しい出入り口で、しかも、遺跡からは最も遠い」


 となると、実質的にはあそこから遺跡には、まずたどり着けない。

 しかも、先程の落盤で塞がれているとなると、調査はここでお終いになってしまう。


「ボクはギルドの依頼でここの調査に来ているのは承知だと思うけれど、では報告はどのようにすればいいだろうか? 意見を聞きたい」


 ランは応える。

 できれば私たちの存在は伏せておいてもらいたい。実際には階層があり、ボクも下の階層へと来ている訳だが、できればその事実も報告しないで欲しい、という。


「では、この地図を見て欲しい、いままでボクが実際に調査をしてマッピングしたものだ」


 地図を見せた。


「この地図の範囲であれば、全く問題はありません。報告していただいても大丈夫です。それに上層は落盤があって途中で途切れてしまった。あの出入り口は使えなくなるでしょう」


 もっとも、大勢の人数を掛け、落盤箇所を切り開けば先に進めるけれども……。


「そこまでして、道を切り開いても、遺跡があるのははるか彼方というわけだね、うん、わかった。遺跡がある可能性はほとんどない、と報告して、モンスターのサンプルとこの地図を提出するとしよう。君たちにも触れはしないよ」


 約束すると、ありがとうございました、とランは礼を言った。


「ところで、君は精霊で、巨大蜘蛛は聖獣と言ったけれど、どんな存在だと考えればいいのか? 君たちについて少しでもいいから教えてほしい。もちろん報告なんてしないから」


 精霊は森の守護者、聖獣は大地の守護神、簡単に説明するとそうなるとランは言う。


「森の守護者と聞くと、エルフやドライアドと言った種族がいるけれども知っているのか?」


 ランを首を少しかしげて、


「エルフ? 始めて聞く種族名です。森にはそういった種族はいませんね。ドライアドは私たちの下位の存在で、森の管理を手伝ってくれています」


 聖獣は鉱物資源などの管理もしていると言う。

 例えば鍛冶に秀でたドワーフなどが崇拝する神々のひとつにあたる。もし、もっと詳しく話を聞きたいのであれば、戻って巨大蜘蛛のキナに話を聞く手もあるけれど、どうしましょうか? と聞かれた。


「いや、どうせ報告するつもりもないから、そんなに詳しい話はいらないんだ。ただ、ちょっとしたボクの好奇心だと思ってもらえればそれでいいんだ」


 ボクは応えた。

 そして地図を取り出すと、今から向かう出入り口はどこに当たるのかを確認してもらった。


「ちょっとよろしいですか? 少し嘘になりますが、落盤箇所からの行き方を書き加えておきましょう。近すぎると、なぜその出入り口が発見されていないのか、別の問題になるでしょうから、落盤箇所から枝分かれせずに一本道で、しかもある程度の距離があった、といふうにしておいてもらえば助かります」


 サラサラと地図に道を書き加えていった。


「それじゃあ、落盤にはあったけれど、その先が一本道になっていて、ボクはそこから生還できた幸運の持ち主になる訳だね」


 ボクは笑いながら言った。

 そういう話になれば、再調査に気が向く可能性も低くなる。ちょっとした嘘だが、ボクに利害があるわけでもないし、こうやって精霊と聖獣にも接したのだから、むしろ収穫は大きかったと言えるだろう。

 光が見えてきた。出口だ。一体あの崩落からどれぐらいの時間が経ったのか感覚がちょっと狂ってしまっている。洞窟への出入り口は、人が屈んでやっと通れるほどの狭さで、これならば発見される可能性も低く、外からみて分からなかったのも当然と言える。ボクはランに礼を言うと、キナにもよろしくと伝えておいてほしい、と洞窟を出たのだった。

【拙い文章ですが、最後までお読みいただきありがとうございます。ちょっと堅めだけど、こういう小説嫌いじゃない、先がちょっとだけでも気になっちゃったという方、評価などを頂戴できればありがたいです。感想もお待ちしています。作品の参考にさせていただきます】

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