003 聖都(2)リューリア姫
「はじめまして、リューリアと申します」
ちっちゃい。そして白い。
それよりなにより、このにっこり笑顔。キレイっていうよりも圧倒的に可愛いが勝ってる愛嬌のある笑顔。
「この度は大変にお手数をおかけします。何卒、よろしくお願いいたします」
リューリア姫が、俺の前でスッと膝を落としてから姿勢を正すと、シルバーブルーの長い髪が肩の先でサラサラと揺れる。
不思議そうに、それでも笑顔で、固まってる俺をみる。少しタレ気味の大きな目には、色白の肌とは対照的な深紅の瞳が浮かんでいる。
「えと、あの……俺はノブ、17歳……いや、その……トーガル辺境伯家三男、オーデァティ騎士爵、ノブ・トーガルにございます。この度は、姫君護衛の任にあずかり大変に光栄にて……えと……こちらこそ……よろしくお願い、します」
うわー、ダメだ。噛みまくりやん。
「うふふ。ノブくん、リューリアがあんまり可愛いからって、そんなに緊張しなくてもいいわよ。らしくもない」
「いや、その……あはは」
そんなこと言ったって……
ネーネ様の庇護下にいるとはいえ、父親をあんな形で亡くしちゃって、つらい思いもしてきたんだろうし、大悪人の娘として身を縮めてひっそりと隠れて暮らしてきたはずなのに……
今回だって、命の危険もある逃避行、もっと悲壮な感じを想像してた。
「いや、なんかもっと、こう……泣きながら出てきたら、どうしようかって思ってたから……」
「うふふ。なんたって、私の娘ですからね。私にそっくりでしょ?」
そっくりもなにも、血の繋がりはないはずなんだけど、どこかネーネ様のお気楽さ──いや、豪胆さを見習ってということなら、分からなくもないかな……
「さあ、ノブくん、そろそろ時間よ。よろしくお願いね」
「う、うん。そうだったね」
さて、そうだな。こっからは切り替えないとな。リューリア姫のこれからの人生がかかってるんだからな。
「最初は、お駕籠での聖都内移動でしょ? そんなに緊張しなくても大丈夫よ」
「分かってるって。あ、一応、確認だけど、道中は俺の婚約者って──いや、その……」
こんなかわいいお姫様が、俺の……いいのか?
「うふふ、よろしくね」
「えと……とにかく、リューリア姫、よろしくね」
「はい」
ネーネ様の私邸の勝手口を出たところに待たせておいた駕籠へと、リューリア姫を誘導する。
俺は、中を覗けないように駕籠の覆いを下ろしながら、リューリア姫に声をかける。
「それじゃ、オヤシロまでは危険はないよ。心配しなくてもいいからね」
大丈夫だ。これは命がけの逃避行なんかじゃない。
俺は、決して命を賭けたりなんかしない。必ず生きて逃がす。そのための準備をしてきた。
「じゃあ、よろしく頼むよ」
俺が声をかけると、屈強な男ふたりが頷いて、駕籠の前後を持ち上げて歩きだす。俺は、周囲を見渡しながら、駕籠についていく。
「おや、これはノブ殿。どちらへ?」
急に声をかけられ──
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夕方、もう1話公開します。引き続きよろしくお願いします!
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