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だって私は、真の悪役なのだから。(改訂)  作者: wawa


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リリー16歳⑥〜

 


  階段事件で休学していたけど秋休みが迫っていたので、結局そのまま皆でダナー(おうち)に帰ってきた今現在。


  お兄様たちはそれぞれの領地の見回りに忙しく、警備員たちも同じ様な理由でとっかえひっかえ居なくなる。


  暇なのは、いまだに念のためだと首にむち打ちギプスを巻かれている私だけ……。


  (孤児院の視察は終わったし、家庭学習テストも取りあえずクリアしたし…。散歩も飽きたし、街には出てはいけないし…。ふーーむ……)


  回想と共に視界に映るのは、我が家では見慣れた広大で殺風景な窓の外の自然風景。そして本日の護衛はイケメン・ローデルートさん。


  にこっ!


  「……」


  窓越しに目が合ったので、笑顔のコミュニケーションでゴマをする。うっすら返ってきた紳士な笑顔に、親密度アップの手応えを感じる私。


  ローデルートさん。


  彼はお兄様ズの次に私の推しである。


  ただ単に彼の場合、従兄弟なので上のお兄様に似て安心感があるという、身内びいきな一票なのだけど。


  でも気をつけなければいけないのは、ローデルートさんは私よりも上の兄貴が大好きで、なんでもかんでも余計な事までグレイお兄様に報告してしまうところがあるんだよね。


  (何故か学院行く前に、グレイお兄様に胃腸薬を強く勧められた事がある。なんでってしつこく問いつめたら、ローデルートさんから報告受けたって自白した、謎の胃腸薬押し付け疑惑)


  きっとお兄様と長く会話したくて、私のちょっとしたおやつの食べ過ぎまで報告しているよね、彼。


  そこに私は、勝手にビーエルタグを張り付けている。


  グレイお兄様(受)VSローデルートさん(攻)。


  彼らを邪な目でみている不純(ひま)(わたし)


  「……」


  それはそうと、パピーとマミーは、もう学校に行かせたくないって騒いでいたけど、安心してほしい。


  私、悪役の役目をきちんと果たし、

  今まさに、生還しているのであります!!


  これってつまり?


  もう脱・悪役したんじゃない?


  振り返ってみてみると、ゲームの場面的には地味な悪役ざまあ展開、階段からのドンだったけれど、現実ではかなり大事だったよね。


  突き飛ばされた私だって、過去の走馬灯まで夢見たんだし。セオさんに怪我まで負わせたのだし。


  本当に、打ち所が悪ければやばかったんだ。


  セオさんが居なければ、マジでやばかった。


  そんなこんなで生きてる私って、これってやっぱり、悪役回避したんじゃない?


  それに私が居ない休学中に、主人公はグーさんとしっかりくっついて、邪魔者(あくやく)が居なくなった現在、アフターエピソードしてる頃だよね。


  グーさんといえば、我が家(こっち)に帰ってきてから探してみた、洗濯場の女性グーサンは、体調不良でお暇を頂いたらしいけど…。


  よく考えたら、ダナー(うち)に簡単に入り込んだあのグーサンて、ちょっとやり手で怖いよね。実はすごく危険だったのかも。


  やり手なら、いつだって私のこと、暗さ……。


  ……。


  ぶるっ!


  気を取り直して! 明るいこと考えよう!


  まずはピアンちゃんのお家騒動が落ち着いたら、今度は冬季休暇でうちに遊びにおいでよってご招待してみたい。


  ピアンちゃんの恋ばなとか聞いたり、お泊まり会とか、パジャマパーティーもここではしたことないから誘ってみよう。


  それから脱悪役したんなら、残りのライフポイントで、過去世で出来なかった彼氏作りとか、今から学院で頑張ったっていいわけだよね。


  初彼氏と、二人で公園デート……。


  ……テレる。


  あのフルーツ飴、二人で食べちゃう?


  きゃっ!


  しかも春になったら、待ちに待った十七歳がやって来るよ。


  三段重ねのケーキへのこだわりはね、過去世で出席した従姉妹のお姉さんの結婚式からなんだ。


  スペシャルな三段重ねに入刀されたケーキが、細く小さく一切れになって自分のお皿にたどり着いたショックで、お姉さんへのイメージが悪くなった悲しい思い出。


  それは当時園児だった、私のケーキに対する初めての悲しみ。今も根深く心に刻み込まれている。


  だからお金に不自由の無いお城の子供に転生して、寝転がって天井を眺めていたベビーの頃に、これを思い付いた時は小躍りしたよね。


  でも大きくなっても、一向にバースディケーキに三段重ねは現れなかった。


  異世界特有の飾り細工のおしゃれな平たいケーキばっかりで、重ねてねってお願いしても、説明が上手く出来なくて二段重ね止まりだった幼少期。


  だからこそ、であるならば、これは十七歳の記念日まで取っておこうって、心に決めていたんだ。


  誕生日にでっかいウェディングケーキ一人占めって、過去世の私では考えられない贅沢三昧。


  ふかふかの焼きたてスポンジケーキの間には、様々なフルーツと生クリーム。全体的にほんのりピンク色の苺クリームをコーティングして、芸術的センスでドレスのように砂糖菓子と生クリームをトッピング。


  朝から胃袋に飯を入れずに準備する。


  入刀なんかしないで、上層部からお肉用のでかいフォーク突き刺して食べるつもりで待っている。


  でも誕生日会場ではさすがに皆見てるから、シェフに直接注文して、こっそり自室に用意してもらうという計算もしっかりしているの。現在世のファミリーは、何かとマナーに厳しいからね。



  完・璧な計画だ。



  もしかして私、このために転生してきたんじゃない?


  三段重ねケーキが叶った暁には、次は転生せずに、大人しく成仏出来るかもしれない。


  それがもうすぐ近づいてくる…。


  次は冬学期、そして春学期に私の誕生日はやって来る。そんな野望を心に秘めつつ、ギプスの取れた私は再び学院に通い始めた。


 

✳✳



  久しぶりの登校は冬学期からスタート。冬だけど、王都はダナー(うち)の領地よりも暖かいから、雪なんて全く降らない秋の延長気温。


  (でも前よりも紅葉が綺麗。涼しさがいい感じ)


  過去世なら、焼き芋が旨い季節だよね。でも現在世では、スイートポテトや大学芋をアピールする広告を見かけない…。


  馬車から降りて、正門から玄関までの長ーい道のりを仲間たちと歩く。


  おや?


  ざわざわと深緑色の制服たちが遠巻きにこちらをチラ見しているんだけど、今日はなんだか様子がおかしい。


  怪我から復帰した私の久々の登校だから?


  なんて自意識過剰に考えてみたりもしたけど、周囲の目線は私たちと少し離れた先を行き来する。


  (……なにあれ…)


  通学生徒たちの前方。玄関の少し手前に、いつもよりも白い奴らが固まっていた。


  なる程ね、左側(アトワ)とうちの一触即発を警戒しているんだ。


  男子生徒、女子生徒、パッと見で十人くらいは居るのかな? もちろん彼らは、さっさと玄関に入らずに、もれなく私にメンチ斬っている。


  相変わらずだね。今となっては番長のために取ってはいないけど、わたくし、久しぶりの登校で、朝っぱらからメンチ使うほど暇ではない。


  なのでここも、いつも睨んでくる幼稚でワンパタな白色メンバーズに、上から笑顔で微笑んでやった。


  ニッコリ…。


  マミーお得意の嘲りスマイル。


  うちのマミーは面倒な来客に対しては、憐れむ様に客人に眉をひそめて、口の端をすこし上げるの。そしていらっしゃいませの声かけもせずに、気だるげに扇をパタリと閉じる。


  するとせっかく来てくれたお客様は、係の代表に帰宅してって扉を開かれる。なかなか失礼なシステムでしょう?


  いい大人のおじさま達がこれを食らうもんだから、反応は人それぞれ。がっかりする人や、イライラを必死でのみ込んで我慢する人など、被害者は多数見受けられる。


  もちろん私も、この嘲りスマイルを習得済み。


  私のスマイルに白女子メンバーズは逆ギレしてるけど、白男子メンバーズはそれ以上メンチ斬っては来なかった。


  主人公対策に脱悪役したけれど、白色(アトワ)黒色(うち)の敵であることに変わりはありません。なのでこれからも、堂々とバチバチしてやるの。


  「姫様、フィエルです」


  「?」


  エレクトくんの声かけに、白色たちに取り囲まれる中心を確認する。


  「…………」


  目が合った。


  まあまあそこそこな顔の白髪、赤い目の男。


  (キャラが出来上がってる。絶対、あれはどっかで見たヴィジュアル)


  おそらくきっと、攻略対象の一人。


  思い出せそうで未だに思い出せないゲーム名。でもあの冷たそうな雰囲気のキャラを、攻略したことあったかな……。


  白髪、赤い目…。


  色的に、ウサギに変身するとかないよね?


  今のところ、獣人キャラは登場していないから、この世界にはケモ耳は居ないと思うけど。


  でもあの彼が、あの体型密度を度外視して、突然ほんまもんの小さなウサギにキャラチェンジしたら、それはそれで燃えるけど。


  萌えるじゃなくて、燃える。


  メラッ!


  ガチでウサギになったら追いかけて、捕まえて、セクハラって言われても、嫌がって後ろ脚をタンタン地団駄踏んだって、完全無視で撫でて撫でて撫でまくって、お腹の匂いまでくんくん嗅ぐけどね。


  今ちょっとだけ、ストーカー気質でヒロインを檻に閉じ込めたり、バッドエンドでたまに変質者と化すヒーローのムラムラが理解できたのかも。


  監禁や無許可のおさわりなんて、現実にはただの変態犯罪行為で、推奨なんてもっての他だけど。


  でもあのウサギ男、白髪と赤目のキャラなんて、なんてありがちな乙女ゲーム設定だ。吸血ものに多発しそうだけど、意外とそっち系?


  学校 × 吸血鬼…あり得る。しかも主人公の名前はフェアリーだし…。でもどのアプリゲームかな…?


  やっぱり思い出せないな。


  (恋愛ゲームは、あの子にもスチル回収を手伝ってもらっていたから、もしかすると、自分で攻略していないかもしれない)


  過去世の両親と共に思い出すのは、私が助けられなかった隣のあの子。


  あの子は、あの後どうなったんだろう。


  きっと私を叩いたのはあの子の母親かあの男。私の件で奴らが警察に捕まっていてほしいけど、どうなったかはわからない。


  ただあの子は、あの後、救われていればいいのになって、孤児院に行くたびに考える。


 

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