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だって私は、真の悪役なのだから。(改訂)  作者: wawa


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リリー16歳〜②

 

  なんとか教室までやって来た。必死すぎて記憶は飛び飛びなんだけど、私、自然に逃げてきた?


  内心では「ギャーー!!」って叫んで走って逃げたかったけど、悪役の威厳を損なわないように、自然に静かに逃げてきたつもり。


  でも、


  いつも主人公(ヒロイン)と自分のバッドエンドを意識していたからか、なんかすごく、怖かった。


  初めて見た主人公の印象は、見た目はクラスに一人は居るよねってタイプ。美人でも不細工でもない、そんな感じの普通のタイプ。


  (たしか深緑だった…)


  黒でも白でも紺でもない。この学院に一番多い深緑。つまり一般生徒だ。


  ありえるよね。


  大体の主人公って、庶民生まれの庶民育ち。それが貴族の学校でチートなラッキーをゲットして、悪役をざまぁしてイケメンを何人落とせるか勝負する。


  悪役とはいえ我が家の強権力に護られて、最近まで都会にも出たことのなかった箱詰め田舎育ちの私。


  甘かった。


  ぼーっとしてた。


  (何のゲームだっけ、早く思い出さないと)


  どの金髪王子だった? それとも黒髪王子? いや待てよ、もしかするとあの赤髪王子のゲームかも…。白かも、青と緑は、王子じゃなかったかも。


  ピンク頭のキャラはここにはいない。だからあのゲームではない。


  まてよ、王子何処にいる?


  そうだよ、グーさん以外の王子って、今のところ見たこと無い。


  学年が違うのかな?


  学年を乗り越えて派閥作りをしているのは黒と白。王族が多い紺色は、目立ってバチバチしてないからあんまり意識してなかったけど、紺色のどれかは王太子なはず。


  (あとは二番目あたりが怪しいよね)


  絶対居るはずの王族の攻略キャラ。


  番長を探してる場合じゃなかった。


  そいつを確認して、絶対に絡まれないように細心の注意を張り巡らせるよ。



 **



  「え?」


  あれは、まさか!


  歴史の授業の教師の一人に、身に覚えのある顔を発見。


  「セオ!!」


  ふんわりとにっこり微笑んだのは、私がベビーの時からお世話になっていた係の人の一人。


  私の浅はかな木登りチャレンジにより、彼が転勤させられた事は何年か後で聞いたよ。


  幼児期の失敗を謝罪する。


  「そんなこと、お気になさらないで下さい」


  係の人は優しいままだった。ほっとした。



 **



  学食には行っていない。ほぼ教室と家を往復している。


  だからかな、主人公にはあれ以来会っていない。


  そして全然、なんの漫画かゲームとかも思い出せてない。


  主人公の名前はフェアリーエル・クロスというらしいが、少女少年含めてフェアリー系ってどのフェアリー漫画なのか、ゲーム名はなんなのかもやっぱり思い出せない。


  あったような、なかったような、


  むぉーん…てなってる。


  だって乙女ゲームの主人公って、どれもあんまり記憶に残ってない。回収してたのは男子の美麗スチルだけ。


  もしかして、ここにきて小説だったり?


  むぉーーーーん……。


  私の様子が変すぎて、黒色メンバーズや警護の人達もいつもと違う。そしてこっちに来てからはご飯時にしか現れない、二人の兄の様子もおかしい。


  パピーとマミーに私の管理を任されてしまった兄たちは、こっちに来てからよりピリピリしている。なのでお友達のお家に遊びに行く許可は、上の兄が握っていたから説得が大変だったよ。


  でも、でも、ゲットしました外出許可を!


  今日は初めての王都でのお買い物。そして手土産片手にお友達のお家にお邪魔するの。


  最近までの、主人公ストレスが一気に緩和される。


  わくわくと乗り込む馬車の中。ドレスの懐に潜ませていたあれを確認。


  ーーチャリ。


  「うふふっ」


  久しぶりに再会出来た係の人セオさんと、授業で会うたびにけっこうお喋りしてる私。


  今回の初お出かけを話したら、手土産買って行けばとか、街の屋台が美味しいよとかいろいろと現在世のアドバイスをしてくれた。


  串焼き、フルーツ飴、焼きパン。


  けど私はお金を持ってないから串焼きは買えないねって悲しいことを言ったら、警備員たちには内緒ねって、こっそりお小遣いをくれたの。


  ダナーの地元でも結局出来なかった街でのお買い物、大都会でしちゃう?


  警備の目を盗んで、出店でつぶつぶがいっぱいのフルーツ飴買おうと思ってる。


  さっき子供が持ってるの、窓から見てたフルーツ飴。


  きっと警備の皆はびっくりするよね。「これ下さい」サッてお支払いしたら、お前、小銭持ってたの? って、誰が私に与えたのか大騒ぎするはず。


  (…………マミーから貰ってたって、嘘つこう)


  もちろん私は悪役なので、嘘をつくことに良心を痛めたりはしない。生活環境を整えるためには、適材適所に嘘をつくのよ。


  周りに迷惑はかけられないからね。


  そうこう計画していたら、馬車は賑やかな大通りに到着した。



  「本じ……、来て……、ありが……」



  うん、よく聞こえないけれど、頑張ってるね。

 

  やっぱり手土産は警備員の皆様がすでに準備していて、私は馬車から商店街に降りる事はなかった。


  またね、フルーツ飴。


  訪問したピアンちゃんのお家は、超都会のど真ん中の大きな邸宅だった。


  大きさは、うちの家には負けるけど。


  ピアンちゃんのお部屋に案内されて、もじもじの見学をする。


  「…、……、………、」


  (聞こえないよ……)


  だから椅子を隣にずらして、耳を澄ませて聞くことにした。


  「………、………、」


  私と同じく長い黒髪は、うらやましいほどのストレート。私はマミーに似てるので、緩やかに天然パーマがうねってる。でもピアンちゃん、学院ではサラサラ下ろしていたのに、今日は休日なのにパンツでスタイリッシュにポニーテールしてるよね。


  まさか学院での私のスタイル、真似したの?


  (いいじゃん…。真似っこ。親密度上げられてる?)


  黄色っぽい目に褐色の肌。綺麗なお顔は耳まで真っ赤で汗だくだよ。なんかこれ、何にもしていないのに、私がこの子を苦しめてるの図?


  私、悪役だからね…。仕方ないよね。


  見回せば、ピアンちゃんのお部屋は意外と乙女感溢れてはなく、地図とか珍しい置物がいっぱいある。


  (ご家族は有名な商人だって言ってたものね)


  大半をピアンちゃんの発声練習に付き合いながら、おやつをつまむ。そんな感じでお茶会は終わったけれど、しょんぼり玄関で俯くピアンちゃんに、私は笑顔で頷いた。


  「今日はとっても楽しかった。またの会を楽しみにしているわ」


  「……はいっ!」


  出たじゃん声。成果あり。


  ほとんど会話は出来なかったけど、彼女の発声リハビリを口実に、私は次の外出、屋台チャンスを狙うことにした。


 

 **



  ピアンちゃんの家で過ごした休日。次の登校日には、久しぶりにグーさんがやって来た。


  (そうだ、グーさんに聞いてみよう)


  珍しく私の方からランチに誘ってみると、紳士なグーさんは断らなかった。内心、お断り仕返しされるかもと覚悟だけはしていた。よかった。


  お昼休み。黒色メンバーズは少し離れて見守っている。そういえば、グーさんはあんまり、紺色たちと群がっているのを見たことがないな。気のせいかな?


  「グランディア様の、ご兄弟はこの学院にいらっしゃるの?」


  「そうですね。上の兄と弟たちは、在学していますよ」


  「……一番上の方と二番目の方は?」


  「彼らはもう修了し、国務を担当しています」


  「え、」


  意外だった。まさかの王太子と二番目が、この学院ゲームの生徒ではないのか?


  いやいや待って。誰かとの繋がりで出てきたり、学校関係者だったり、生徒じゃなくても攻略対象はあり得る。


  昨日一日考えて、多分ゲーム世界だと絞ることにした。


  漫画や小説ならある程度主人公が思い出せるのに、それがぼんやりしてるから、やっぱりゲームだと思うんだ。


  だって主人公の顔さえ思い浮かばないからね。


  実物のフェアリーエルさんを見たって思い出せないのは、きっと主人公は吹き出しのみで、顔もあんまり描かれなかったゲームの可能性大。


  「ご一緒しても、宜しいですか?」


  「?」


  グーさんと食後のお茶を飲んでいたら、ピアンちゃんがやって来た。


  出てるじゃん。声。


  ボイストレーナーとして、生徒の成長を温かく見守る私。


  「もちろんよ。こちらにどうぞ!」


  グーさんにも私の初お友達を紹介して、三人でおやつをつまむ。


  和やかな午後休憩のひと時。


  もちろん私は、周囲から主人公が見ていないか、柱や通路をしっかりチェックしていた。


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