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だって私は、真の悪役なのだから。(改訂)  作者: wawa


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リリー16歳〜①

 

  王都の端っこに、我が(ダナー)家の別邸はある。都会である中心都市から西側に離れた端っこの森の中。


  閑静な住宅地。そこから馬車でおよそ一時間、フカフカのクッションの上にいたってお尻が悲鳴をあげ始める頃、下車。


  あいたたた、なんて腰なんか曲げたりしない。


  「姫様、お手を」


  「ありがとう」


  警備員師匠の手を借りて、用意された足場を軽やかに降りる。だって悪役なのだから、お尻を地味に負傷しているなどの、周囲に隙を見せたりはしない。


  やって来ました!


  スクラローサ王立学院!


  大きな門に集う学生たち。形はお揃いだけど色違いの黒、白、紺、深緑の制服。


  個性を活かしてスカートは短く出来ないよ。


  だって女子も男子もパンツスタイルだから。


  髪型も制服に合わせてキリッとクールなポニーテールをリクエスト。


  私の機能的な装いを初めて見たお兄さまたち、ブスッとしていて絶賛もお世辞もくれなかった。


  だから今度はパピーとマミーに「似合うでしょ?」ってお披露目しに行ったら、パピーは無言でマミーはちょっと苦笑い。


  家族たち(ファミリー)は、最後まで私の通学に苦い顔をしていたから仕方ないね。


  私が通学することにより、王都に出張が決まり、仕事が増えてしまったお兄さまズと警備員の皆さま。


  出来るだけ、彼らに迷惑をかけないように頑張るつもり。


  そしてここまでの道のりで気になった事は、門から入り口までの制服カラー。大多数が深緑で、別カラーは極端に少ないんだよね。


  ……不安。


  (間違えてないよね? グーさん、正門から入っていいって書いてあったよね?)


  裏口の方に、他の色が密集してたらどうしよう。


  でも色が違うというだけで、浮いてる感じが悪役としてはあり?


  深緑さんたちは、黒色の悪役を警戒しているのか近寄ってはこない。


  初めからじわじわ離れていく彼らのお陰で、既に私の前だけ混みあってなく、モーゼごっこはここでは出来なかった。


  「ここより先は、我らは入る事が出来ません。お気をつけて」


  門から進むことおよそ十五分。学校入り口に到着した。不安そうな警備員師匠に学校バックを手渡される。


  にっこり私。

 

  現在世では初めての学園ライフ。だけど私は過去世と合わせると、保育幼稚園プラス小中高校は途中までの記録保持者なの。


  素人ではない。


  ここはベテランにお任せあれ。


  「ん?」


  警備員師匠とお別れする間際、少し離れた所からこっちを見ている白色。


  白っていえば、アトワ(てき)だよね?

 

  まさかこっちを、睨んでない?

 

  きたよきた。


  迷わず私もメンチ斬ると思うでしょ?


  でもしない。あれはどう見ても番長じゃないからしない。メンチは直ぐに斬らないの。番長のために大切に取っておく。


  だからにっこり微笑んで、余裕かましてやったのよ。


  ね、警備員師匠!


  どうやら間違っていなかったようで、師匠から小言は聞こえなかった。

 

  「あ、」


  あれってまさか、


  紺色制服、ふわふわ感満載の少女を発見。あの金髪のふわふわ感、あの主張、おそらくきっと、この物語のヒロインに間違いないよね?


  ここは悪役っぽくヒロインをツンツンするか、それとも死亡フラグ回避に自分の透明性をアピールするか、悩ましいところではある。


  「リリー」


  え?


  ヒロインを観察していたら、なんとグーさんが現れた。私を荷物の様に引き取ると警備員師匠に告げると、案内してくれるって急かされる。


  だから何か言いたそうだった師匠には、帰りの会で聞いてみよ。


  それよりも何よりも、ふわふわのヒロインが、こっちを見ていた事がものすごく気になった。


   

 ✳✳



  ついに出会ってしまった主人公は、こっちをじーっと見ていた気がする。


  やな予感。


  さっきのあれで、私は主人公(ヒロイン)に敵視されるの?


  意味がわかんない。


  あんな少し離れた所からどーやって、関わってもいない私を悪役認定できるの?


  猫目の見た目?


  失礼じゃない?


  気のせいかな? 勝手な思い込み? ちょっとした悪役被害妄想入ってる?


  (まあでも、迎えに来てくれたグーさんは四番目だし…)


  「なんですか?」


  改めて観察してみたグーさんは、確かに王子様っぽさもあるけれど、やっぱり四番目感も否めない。


  まあ、大丈夫だよね。


  中途半端な四番目。


  授業が始まる前に、あちこちに連れていってくれたグーさん。だけどこんな大きな学校、一回見ただけじゃ絶対に覚えられない自信がある。


  だからグーさんの道案内は上の空で、グーさんに一番気になっていたことを聞いてみた。

 

  「そういえば私は以前グランディア様に、グーさんと口に出した事があるかしら?」


  「ありますよ」


  「!!」


  マジか…。やっぱりね…。どーりでね…。

  無意識って、怖いよね。


  「初めはまさか、それが自分だとは思いませんでしたが。貴女は私を見て、たびたびそう呼び掛けられていましたよ」


  にっこり笑うグーさん。


  私は自分の間抜けっぷりに驚いて、「ソウデスカ」と話を適当に終わらせて、その辺でちょうど学校案内も終了した。



 **



  つつがなくなんとなく日数は過ぎ去っていく。


  初めは新しい学校に慣れるだけで時が過ぎ、一週間も経つと、周囲を観察出来るようになってきた。


  私はね、お貴族ルールの二年間入学なのだけど、他の子は、小学生くらいからずっと通い続けてる子もいるみたい。


  いろいろと仲良しグループに分けられてるけど、やっぱりはっきりと、色分けチームで対抗戦してるかんじかな。


  黒VS白。紺と緑は、あんまり他の色とはっきりバチバチしてないかもね。


  まあでも、目に見えるバイオレンスな喧嘩は、今のところ校内で見たことはない。


  白も黒も、嫌味やメンチ対決が多いかも。


  私は何してるかって?


  私は今、番長を探している。


  とりあえず主人公には関わり合わない方向で、先に番長をどうにかしようと思ってる。


  ゲームでも漫画でも、番長って放っておくと後から出てきて目立とうとするから、私の出番にしゃしゃり出てこないように、調整してもらおうと思ってる。


  裏工作って、悪役っぽいでしょ?


  話し合いでなんとかするか、メンチを使わなければならないかは、ここの番長によるよね。


  それはそうと私のお友達グループは、やっぱり居たよねの警備員の子供たち。彼らが傍に来てくれたことにより、初日からぼっちにならずに皆でランチを食べているが、彼らがいることにより、私は他のいろいろメンバーズに、気軽に声をかけることもあんまり出来てない。


  だから表だって悪役だって、意思表明もまだ出来ていない。


  そういえば、皆さま、知ってる?


  悪役の登場シーン。あれってかなり、ナイスタイミングを狙わないと駄目なのよ?


  「おほほほっ」て、踏み出るのって、なかなか難しい。

 

  脱悪役したいのに、なんで悪役計画してると思う?


  だってパピーの強権力と、うちの警備員たちが番長に負けるはずないのよ。


  私、彼らに絶対の信頼を寄せている。


  番長に喧嘩売れるチャンスなんてなかなかない。しかも自分の強さとは関係なく、親の七光りと警備に護られた万全の環境。このチャンス、逃したくはない。


  別にタイマンしたいわけじゃない。


  ただこんにちはって、挨拶したい。私は強権力の持ち主だから、番長は怖くないのよって言ってやりたいだけ。


  他力本願って、悪役ならではだよね。


  だからこれを存分に利用してから、それからさりげなく悪役辞めようと思ってる。


  もちろんここに、主人公が乗り込んで来たら直ぐに撤退するつもり。


  そんな計画を考えて過ごしていた学園ライフだったけど、この日は別の悪役を発見した。


  「…えなーい!」


  え? なにあれ。


  「はっきり言いなさいよ」


  ちよっと、生意気じゃない?


  「聞こえないって、言ってんだよ!!」


  なんで私を差し置いて、あそこで悪役披露してるの?


  だから周囲を見回しここに主人公が居ないのを確認してから、悪役の座をオホホホって奪ってやった。


  ベストタイミングだったよね。


  私の横入りに一般の悪役たちは引き下がり、ついでに絡まれてた子にもはっきりと弱点を言ってやった。


  虐めって対処が難しいよね。虐められっこ庇ったら、庇ったこが標的に代わるって、永遠に終わらない、よく出来た虐めシステムが発動するの。

 

  だけど私、虐められることなんてあり得ない。


  だからこのネバーエンディング虐めシステムを、ぶった斬ることが出来るのよ。


  スパッ!


  これが悪役の強権力ってやつ。


  私が気を付けなければならないのは、強権力をヒロインパワーで押してくる、主人公だけなの。


  そんな感じで初めてオホホホってしたけれど、なんとそれが切っ掛けで、初めて深緑のお友達が出来た。


 ✳✳


  黒色メンバーズと学食の隅を牛耳って、今日も旨いメシを頬張る。


  すると一人の深緑が近寄ってきた。


  なよなよっとした仕草。もじもじっとした話し方。だけど背だけは私よりも大きい。

 

  モデルみたいにスラリとした長い手足に高い身長。それなのに俯いて下を向いて歩いていたから、昨日一般の悪役に目をつけられて絡まれていた彼女。


  上から目線で私が余計な意見してあげた深緑さん。


  見るからに引っ込み思案の彼女は、勇気を振り絞って黒色の集団、警備員に囲まれている悪役の私に声をかけに来た。


  「お名前は?」


  「あ、………………、ピア……、です、」


  「…………」


  やっぱりもじもじ、ぼそぼそしてる。そしてあんまり聞こえなかった。


  「ピアン?」


  顔が真っ赤になって俯いた。しょうがないよね。いきなり癖なんて直らないよね。


  でもこのピアンちゃん、一般人を寄せ付けない、警備員の分厚い壁を突破してやって来た勇気はすごいことだと思う。


  グーさんだって、ご飯一緒に食べようって極たまにしか言ってこないのは、うちの黒色メンバーズがブロックしているからだと思う。


  そういえば、グーさん。なんで婚約破棄してこないんだろう? 今でもけっこうお誘いお断りしたり、失礼な態度とってるのに。


  四番目だけど念のため、王族とは距離は置こうと思ってるのに、いまだに定期的に誘ってくるよね。お茶とか。


  しかも変なあだ名で呼んでたの受け入れてるし。


  やっぱりグーさん、


  マゾヒス「……あの、これ、」


  「何かしら? …これは、招待状?」


  まさか私に、自分のお家に来てって、誘いに来てくれたの?


  小走りに逃げたピアンちゃん。


  お家に来てってことは、お友達になってってことだよね?


  警備員たちも、彼女のご招待はいいんじゃないの? みたいな意見。


  それってつまり?


  初めてのお友達のお家への訪問が決まった。


  これは、夜は興奮して眠れないかも。


  ムフフッ!!


  「あれ?」


  喜びの最中、食堂から見える中庭に、なんか目立つ学生を発見した。紺色制服、しっかりした体型。うちの警備員にも負けない雰囲気の威圧感。


  紺色であの威圧感は初めて見たかも。


  まさか。


  『番長…?』


  「あの者に、何か?」


  学院内で、私が移動のたびにきょろきょろと誰かを探していることは警備員たちにお見通しなので、彼の情報を聞いてみた。


  「サイオス・カレン。エルドラード侯爵家の跡取りです」


  王族関係者の一人らしい。精悍な顔立ち。部下と思われる紺色たちが周囲を取り囲む。


  (怪しいけど、様子みようかな…)


  乗り込んで行って、番長じゃなかったら私がヤバい。


  そんな感じで観察していたら、私の背中はがら空きだった。この油断がいけなかったのかも。金髪ふわふわのヒロインが、思ったよりも近くに居たのに気づかなかった。


  振り返ってみてぎょっとした。


  「……」


  (ヤバい。この前より至近距離。しかもやっぱり、めっちゃこっちを睨んでる)


  敵意むき出しのふわふわ。でも私、あなたと積極的に、関わるつもりは全然ないの。


  学食から逃げようと、さりげなく必死に移動する。平静を装い、スタスタと早足で自然に退出。


  「…?」


  やり過ごしたと思ったふわふわヒロイン。だけど彼女の後ろに、ある違和感。


  「?」


  ヒロインのグループの中に紛れていたのは、過去世の学校で出会ったことがあるかもしれない顔立ち。

 

  (でもきっと、知り合いじゃない。見たこと無い人)


  目鼻立ちがくっきりとした顔立ちが多い転生先。家族の一族だって王族だって、割りとはっきりしてる顔かたち。そして色んな人種が混ざってる、この学校の生徒の中にはシンプル顔の人達だって居るが、なんか違う。


  みんな現在世の人だって分かるのに、あの人だけ、制服は着ているけど違和感に浮いている。


  『あれって、リリーじゃない?』


  「!!」


  今のって、この国の言葉じゃない。


  あれって、過去世で私が使っていた言葉。


  目と目があった、死のフラグ。


  そこから、私は青くなって逃げ出した。


 

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