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幼なじみの悪役令嬢に告白したら、全力で逃げていきました  作者: 夜凪 蒼


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8/12

第8話「それが一番いい」

アルヴィンに呼ばれたのは、告白から一ヶ月後だった。


 「クロード、少し話がある」


 執務室の端、二人きりになれる場所で。書類の乾いた匂いが漂っている。


 「何だ」


 「アルディアのことだ」


 「ああ」


 「あの人は、信じることが下手だ」


 「知っている」


 「だから教えてやる」アルヴィンが少し間を置いた。「アルディアが初めて誰かを信じたのは、お前だ」


 俺は黙った。


 「小さい頃から、あの人は人と距離を置いていた。公爵令嬢だから、近づいてくる人間の目的が分からないから。でもお前だけは、最初から距離が近かった」


 「幼なじみだから」


 「それだけじゃない。お前は見返りを求めなかった。いつも隣にいて、何も求めなかった。だからあの人は、お前を信じることができた」


 (知らなかった)


 「俺に言う必要があったのか、それを」


 「ある。お前が諦めないようにと思って」


 「諦めない」


 「俺には分かる。お前は根気強いが、たまに不安になる」


 (見透かされている。こいつの観察力はどうなっているんだ)


 「……少し、不安になることはある」


 「アルディアは逃げながら、ちゃんと前を向いている。安心しろ」


 「なぜお前がそんなに詳しいんだ」


 アルヴィンが少し考えた。


 「あの人を、長く見てきたから」


 「アルヴィン」


 「何だ」


 「お前は……アルディアのことを」


 「お前が好きな人だ」アルヴィンが静かに言った。「俺が何かをするつもりはない。ただ、幸せでいてほしいと思っている。それだけだ」


 俺はしばらく黙った。


 「……そうか」


 「ああ」


 「ありがとう、アルヴィン」


 「礼はいい。さっさとうまくやれ」


 アルヴィンが立ち上がって、窓の外を見た。一瞬だけ、その横顔に何かが走って、すぐに消えた。


 「アルディアが笑っていられるなら、それが一番いい」


 以前も言っていた言葉だった。


 でも今日は、その言葉の重さが違って聞こえた。


 (アルヴィンも、この人なりに大事にしている)


 「アルヴィン、お前はいいやつだな」


 「うるさい」


 「本当に」


 「うるさい。帰れ」


 俺は少し笑いながら、執務室を出た。廊下の冷たい空気が頬に触れる。




    ◇


 ──クロード・バレンシアの日記より。


 『アルヴィンに「アルディアが初めて信じた人間はお前だ」と言われた。知らなかった。俺はただ隣にいたかったから、隣にいただけだった。でも、それがアルディアには大事だったらしい。これからも、隣にいる』




次話:「アルディアが転んだ」

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