第7話「素直になる覚悟」
それから、自然に二人でいる時間が増えた。
アルディアから「今日の図書室、来る?」と聞いてくるようになった。来ると言うと「別にどちらでも」と言うが、行くと明らかに機嫌がいい。
(「別にどちらでも」と言った口で、満足そうに本を開く人間を俺は他に知らない)
帰り道、隣を歩くようになった。夕暮れの風が少し冷たくなってきた季節だ。話す内容は他愛ない。学院のこと、今読んでいる本のこと、食堂の昼飯のこと。
ただ、返事はまだもらっていなかった。
「アルディア」
「何」
「返事は、いつ出そうだ」
「……急かさないで」
「急かしていない。目安を聞いている」
「目安も出せない」
「分かった」
「……怒った?」
「怒っていない」
「でも、待たせてごめん」
(謝った。アルディアが謝った。何かの前触れか)
「謝らなくていい」
「でも」
「俺が待つと決めたんだから、お前が謝ることじゃない」
アルディアがしばらく黙った。
「クロードって」
「何」
「本当に、卑怯」
「よく言われる」
「私だけに言われてほしい、と以前言ったな」
「言ったな」
「あれは、言い間違えじゃなかったかもしれない」
俺は少し驚いた。
「……今、自分で認めたのか」
「認めた。文句ある?」
「文句はない。嬉しい」
アルディアがため息をついた。
「クロードに素直になると、すぐ嬉しそうにする」
「嬉しいから」
「だから言いにくい」
「これからも嬉しいと言う」
「分かった。覚悟した」
「何を覚悟したんだ」
「クロードに素直になる覚悟」
俺は少し笑った。
「それだけで、もう嬉しい」
「……まだ返事じゃないからね」
「分かっている」
「もう少し、待って」
「待つ」
アルディアが前を向いて歩き出した。
俺もその隣を歩いた。
(返事に近づいている気がする)
(急かさない。でも、近い)
夜、リリアから手紙が届いた。
『クロード様、アルディア様が最近よく笑っています。クロード様のおかげだと思います。もう少しですよ。──リリア』
(リリアは本当によく見ている)
返事を書いた。
『リリア、ありがとう。もう少し、待つ。──クロード』
◇
──クロード・バレンシアの日記より。
『アルディアが「言い間違えじゃなかったかもしれない」と認めた。自分から認めた。これは大進展だ。返事に近い。絶対に近い』
次話:「アルヴィンが言った」




