第3話「笑っていられるなら」
アルヴィンに相談したのは、告白から三日後だった。訓練場の裏手、革と汗の匂いが残る場所で。
「聞いてくれるか」
「話してみろ」
「アルディアに告白した」
アルヴィンが少し間を置いた。
「そうか」
「逃げられた」
「予想通りだな」
「お前は知っていたのか」
「お前がアルディアのことを好きなのは、周りには丸見えだった」
「……そうか」
「アルディアだけ気づいていなかった」
(本人だけ気づいていなかったのか。六年間バレバレだったのか。俺の青春を返してくれ)
「返事は」
「まだもらっていない。待っている」
アルヴィンが少し考えた。
「クレシェントは、人を信じるのが怖い。昔からそうだ」
「知っている」
「分かった上で待つのか」
「ああ」
「物好きだな」
「お前に言われたくない」
アルヴィンが少し口元を緩めた。
「俺は何もしていない」
「図書室で毎日アルディアの隣に座っているのは何だ」
「業務上の確認だ」
「そうか」
「そうだ」
(業務上の確認で毎日隣に座る人間がいるか)
(業務上の確認と言い張っているが、アルヴィンがアルディアのことを気にしているのは俺には分かる。ただ、アルヴィンの気持ちは俺には分からない。友人として、か、それとも別の意味か)
「アルヴィン」
「何だ」
「お前は、アルディアのことを……」
「お前が告白したなら、俺には関係ない」
短く、はっきりと言った。
「……そういうことか」
「お前が勝手に解釈しろ」
アルヴィンが立ち上がった。
「ただ」
「ただ?」
「アルディアが笑っていられるなら、それでいい」
それだけ言って、歩いていった。訓練場の砂利を踏む足音が、やけに静かに聞こえた。
(アルヴィンらしい答えだった)
俺は一人になって、考えた。
アルディアの周りには、いろんな人がいる。全員が、あの人のことを大事にしている。
(だから俺は、その中の一番近くにいたい)
幼なじみとしてではなく。
その日の夜、リリアから手紙が届いた。
『クロード様、アルディア様から聞きました。告白したんですね。応援しています。アルディア様は逃げますが、逃げながらちゃんと考えているので、待っていてください。私も背中を押します。──リリア』
(この子は、本当にいいやつだ)
俺は返事を書いた。
『リリア、ありがとう。頼む。──クロード』
◇
──クロード・バレンシアの日記より。
『アルヴィンに相談した。「アルディアが笑っていられるならそれでいい」と言った。アルヴィンがアルディアのことをどう思っているかは分からない。でも、アルヴィンは俺の邪魔をしないと分かった。それで充分だ』
次話:「アルディアが避けてきた」




