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幼なじみの悪役令嬢に告白したら、全力で逃げていきました  作者: 夜凪 蒼


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3/12

第3話「笑っていられるなら」

アルヴィンに相談したのは、告白から三日後だった。訓練場の裏手、革と汗の匂いが残る場所で。


 「聞いてくれるか」


 「話してみろ」


 「アルディアに告白した」


 アルヴィンが少し間を置いた。


 「そうか」


 「逃げられた」


 「予想通りだな」


 「お前は知っていたのか」


 「お前がアルディアのことを好きなのは、周りには丸見えだった」


 「……そうか」


 「アルディアだけ気づいていなかった」


 (本人だけ気づいていなかったのか。六年間バレバレだったのか。俺の青春を返してくれ)


 「返事は」


 「まだもらっていない。待っている」


 アルヴィンが少し考えた。


 「クレシェントは、人を信じるのが怖い。昔からそうだ」


 「知っている」


 「分かった上で待つのか」


 「ああ」


 「物好きだな」


 「お前に言われたくない」


 アルヴィンが少し口元を緩めた。


 「俺は何もしていない」


 「図書室で毎日アルディアの隣に座っているのは何だ」


 「業務上の確認だ」


 「そうか」


 「そうだ」


 (業務上の確認で毎日隣に座る人間がいるか)


 (業務上の確認と言い張っているが、アルヴィンがアルディアのことを気にしているのは俺には分かる。ただ、アルヴィンの気持ちは俺には分からない。友人として、か、それとも別の意味か)


 「アルヴィン」


 「何だ」


 「お前は、アルディアのことを……」


 「お前が告白したなら、俺には関係ない」


 短く、はっきりと言った。


 「……そういうことか」


 「お前が勝手に解釈しろ」


 アルヴィンが立ち上がった。


 「ただ」


 「ただ?」


 「アルディアが笑っていられるなら、それでいい」


 それだけ言って、歩いていった。訓練場の砂利を踏む足音が、やけに静かに聞こえた。


 (アルヴィンらしい答えだった)


 俺は一人になって、考えた。


 アルディアの周りには、いろんな人がいる。全員が、あの人のことを大事にしている。


 (だから俺は、その中の一番近くにいたい)


 幼なじみとしてではなく。




 その日の夜、リリアから手紙が届いた。


 『クロード様、アルディア様から聞きました。告白したんですね。応援しています。アルディア様は逃げますが、逃げながらちゃんと考えているので、待っていてください。私も背中を押します。──リリア』


 (この子は、本当にいいやつだ)


 俺は返事を書いた。


 『リリア、ありがとう。頼む。──クロード』




    ◇


 ──クロード・バレンシアの日記より。


 『アルヴィンに相談した。「アルディアが笑っていられるならそれでいい」と言った。アルヴィンがアルディアのことをどう思っているかは分からない。でも、アルヴィンは俺の邪魔をしないと分かった。それで充分だ』




次話:「アルディアが避けてきた」

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