第10話「七週間と二日」
返事が来たのは、告白から四十九日後だった。
七週間と二日。
数えていた。数えていたことはアルディアには言わない。重い男だと思われたくはない。
朝、学院に向かう道で、アルディアが待っていた。朝の空気がまだ冷たくて、吐く息がかすかに白い。
俺の家の前で、珍しく先に来て待っていた。
「アルディア? 珍しいな」
「……少し、話がしたくて」
「ああ、歩きながら聞く」
「歩きながらじゃなくて、ここで」
俺は立ち止まった。
アルディアが俺を見た。いつもより、少しだけ緊張した顔だった。
「クロード」
「ああ」
「告白してくれたのに、ずっと待たせてごめん」
「謝らなくていいと言った」
「言ったけど、謝りたい。それと」
アルディアが一瞬だけ目を伏せた。
それから、まっすぐ俺を見た。
「私も、クロードのことが好きです」
静かな朝の道で、少しだけ声が震えていた。でも、はっきりとした言葉だった。
俺はしばらく何も言えなかった。
「……本当か」
「本当」
「逃げないか」
「逃げない。逃げたいけど、逃げない」
「逃げたいのか」
「まだ少し怖いから。でも、逃げることにした怖さより、クロードに返事をしないことの方が嫌だった」
「そうか」
「そう」
アルディアが少し頬を染めた。
「……何か言って。黙っていると余計に恥ずかしい」
「嬉しい」
「それだけ?」
「あとは」
俺はアルディアの手を取った。
「ありがとう」
アルディアが黙った。
「待たせてよかった」
「……七週間待たせておいて」
「七週間と二日」
「数えてたの」
「数えていた。言うつもりはなかったが」
(言ってしまった。重い男だと思われる方の選択肢を取ってしまった)
アルディアが少し笑った。
「ずるい」
「ずるくない」
「ずるい。そういうこと言うから、好きになる」
「そのために言っている」
「……本当にずるい」
でも、手は離さなかった。
二人で、学院への道を歩き始めた。
七週間と二日かけて、ようやく繋いだ手で。
◇
──クロード・バレンシアの日記より。
『返事が来た。好きだと言ってくれた。手を繋いで学院まで歩いた。アルディアは途中で二回「恥ずかしい」と言ったが、手は離さなかった。七週間と二日、待ってよかった』
次話:「幼なじみが、恋人になった」




