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エピック159【神意判定】

場面は再びマリス・ソムニアの潜伏拠点へと戻る。薄暗い闇の中、幹部たちの表情には焦りよりも冷めた諦めと、どこか余裕さえ漂っていた。マゼンタ色の衣をまとったディザステトが、低い声で現状を確認する。

「セキエイたちが捕虜になり、ジョンプリミティブまでもが寝返った、というわけか……」赤黒い鎧のベロルムは舌打ちするが、白いヒビ模様のローブを着たカースは薄く笑みを浮かべ、落ち着いた様子で続けた。

「まあ、いい。最初から彼らに過度な期待はしていなかった」彼は指先で黒い魔力の糸をくるくると巻きつけながら、不吉な響きを含んだ言葉を付け加える。

「それにな――セキエイたちの体には、事前に仕掛けを施してある。ただ捕まって終わり、という単純な使い捨てではないのさ」傍らのペストも邪悪な笑い声を漏らす。

「儀式が続く限り、神殿や宮殿の警備は完全に手薄になることはない。だが、捕虜として内部に入り込むことこそ、最も確実な侵入経路になり得る。あるいは……予期せぬタイミングで、起爆する種にもなる」カースは闇の中に浮かぶ水晶の映像――神殿で次の儀式が準備されている様子を眺め、冷徹に告げた。

「血統証明までの計画は失敗した。だが儀式はまだ続いている。次の神意判定、さらにその先にある皇帝神域踏破……干渉できる機会はまだ残っている。表からの攻撃が無理なら、内部から、あるいは心の隙間を突けばいい」ディザステトも不敵に頷き、闇の気配を濃くする。

「そうだ。勝負はまだこれからだ。ジョンアイデルよ、お前がどれほど絆を得ようと、心の奥底に迷いや弱さがある限り、闇はそこに入り込む隙を探し続ける……」拠点には、表の計画が崩れてもなお、新たな手段で機会を狙おうとする闇の意思が漂い続けていた。ハキハキと、闇は新たな手駒を残していた!!マリス・ソムニアの潜伏拠点に、さらに新たな気配が流れ込んだ。空間の歪みと共に姿を現したのは、黄土色の毛皮をまとった肥満体の男。その体つきからは緩慢な印象を受けるが、瞳には計算高い光が宿っている。彼はゆっくりと一歩踏み出し、低く重みのある声で言い放つ。

「それにしても、問題は何一つ根本的に解決していないぞ。皇位継承が成立したところで、ミクスタッドには資源の偏り、経済の不安定さなど、内部から崩れる種が山ほど残っている」ディザステトは少し意外そうに眉を上げ、声に驚きを含めて問いかける。

「ファメス……お前までこの場に現れるとは。上層部の幹部がこれほど集まるとは、随分と本気になったものだ」ファメスは腹の肉を揺らしながら、冷徹な笑みを浮かべて続ける。

「表の小細工では埒が明かないことが分かっただろう? ここから先は、少し大がかりに事を運ぶ必要がある」彼は周囲の幹部たち――カース、ベロルム、ディザステトへと視線を巡らせ、宣言する。

「目標は儀式の中枢そのものだ。全員で神殿内部へ潜り込み、神意判定という場を、我らの思い通りに歪めてやるぞ」次の瞬間、四人の体はそれぞれの象徴的な色の光へと変容した。ファメスは黄土色、カースは白地に黒いヒビ模様の光、ベロルムは赤黒い炎のような光、ディザステトは毒々しいマゼンタ色の光――四つの光球となって闇に溶け込み、雲上の儀式神殿へと向けて一気に滑り込んでいった。警備の結界や探知魔術の網をすり抜けるように、彼らの気配は完全に消え、神殿内の儀式の準備が進むその真上へと忍び寄っていく。ハキハキと、闇の幹部たちが本格的に侵入を開始!!雲上の神殿の屋根裏、人目につかない暗がりに、小さな影が舞い降りた。それは一匹のコウモリの姿――ペストが変身したものだ。壁際に逆さまに止まり、赤い小さな瞳で下の儀式場の様子をうかがいながら、低く声を漏らす。

「神意判定とは、まさに心の内面をそのまま映し出す儀式……外部からの魔力干渉は難しいが、心の隙間なら話は別だ」彼の隣に、ふわりと空気が歪み、姿が現れる。黄土色の服を着た肥満体のドワーフに擬態したファメスだ。見た目は神殿の作業員か商人のように溶け込んでおり、誰も彼が闇の幹部とは気づかないだろう。ファメスは腹を揺らしながら低く応える。

「そういうことだ。ここからは段階的に動くとしよう。最初はお前と俺が、儀式の流れに自然に入り込み、少しずつ心の均衡を乱す種をまく」

彼は指で順番を数えるように続ける。

「もしそれで効果が薄ければ、次は力で干渉できるベロルム、さらに精神干渉に長けたカースを投入する。それでもだめなら……最後にディザステト様自らが、最終手段を行使する、という流れだ」ペストは翼を小さく羽ばたかせ、冷ややかに笑う。

「神意が真に正しい者を選ぶのか、それとも心の迷いによって結果が歪むのか……これから見せてもらおうじゃないか」二人はそれぞれの擬態を固め、神殿内に張り巡らされた結界のすき間から、儀式場へとじわじわと侵入を開始した。表向きは厳粛な儀式の準備が進む一方、闇の影は静かにその核心部へと忍び寄っていた。ハキハキと、儀式の核心に闇の影が迫る!!神殿の奥、次なる儀式のために設えられた祭壇の前に、ジョンアイデルは静かに立った。石造りの祭壇には四つの紋章が浮き彫りにされ、柔らかな光を放っている。勇ましいライオン、力強い竜、誇り高き馬、そして鋭き狼――それぞれの姿が古の歴史と技術の結びつきを示すかのように佇んでいた。ジョンアイデルは四つの紋章を順に見渡し、落ち着いた声で説明する。

「これらのエンブレムは、ミクスタッドが長い年月をかけて開発し運用してきた人工衛星たちを象徴している」彼はライオンの紋章に視線を留め、続ける。

「獅子の意匠はライオン――国土の全域を監視し、安全を見守る観測衛星。次に竜の紋章はドラコニア――魔力の流れや天候の変化を正確に予測する探査衛星だ」馬の紋章、そして狼の紋章へと視線を移して言葉を重ねる。

「馬の紋章はホース――国内各地、さらには遠方の地との通信を確保し、情報を伝える中継衛星。最後に狼の紋章はウルフェン――外部からの脅威を探知し、必要な時には防衛の光を放つ警備衛星を意味している」傍らに立つフィリアが頷き、補足する。

「これら四機は、建国以来ミクスタッドの平和と発展を支え続けてきた目であり、耳であり、盾でもある。神意判定は単に心のあり方を問うだけでなく――これら星々の番人たちの意志とも共鳴し、真に国を導くにふさわしいかを確かめる儀式でもあるのだ」ジョンアイデルは祭壇に手をかざし、四つの紋章が放つ光を感じ取る。遠く天空の彼方で、それぞれの衛星が微かな魔力の波動を返し、呼応するようにきらめいているのを感じた。

「なるほど……古の神々の意志と、人の英知が作り出した力。両方に見守られ、問われる儀式、というわけだな」厳粛な雰囲気が場を包み、神意判定の儀式が始まる準備が整った。一方、神殿の屋根裏や柱の陰では、闇の影がその瞬間を待ち続けていた――。ハキハキと、技術と神聖さが交わる儀式の意味が明かされる!!神殿の屋根裏の暗がりで、コウモリの姿に擬態したペストは赤い瞳を細め、祭壇の四つのレリーフ――ライオン、ドラコニア、ホース、ウルフェンの紋章へと狙いを定めた。

「人工衛星と共鳴する仕組み……ならば、この魔力の流れに少し『手を加えて』やれば、結果も思い通りに歪むだろう」彼は羽を小さく震わせ、探知結界や防御魔術に引っかからないよう、極めて微細な闇の粒子を生み出した。それは魔力で構成された魔性ウイルス――生体だけでなく、魔導具や結界、さらには遠隔通信の魔力回路にまで侵入し、機能を乱す性質を持つ。

「気づかれないように……ゆっくりと染み込ませる」ペストは意識を集中させ、四つのレリーフへ向けてウイルスの粒子を一斉に放った。粒子は闇に紛れ、光の波動に擬態しながら滑るように飛び、祭壇の紋章の表面に触れると、一瞬で石の内奥に浸透して消えた。レリーフの表面には何の変化も見られない。だが内部では、人工衛星と繋がる魔力の回路に、目に見えない小さな歪みが少しずつ生まれ始めていた。隣に立つファメスが低く笑い声を漏らす。

「いい仕事だ。これで衛星から送られる応答信号には、わずかな誤差と迷いの要素が混ざり込む。儀式が進めば進むほど、その歪みは心の内側にまで影響を及ぼすだろう」ペストは逆さまの姿のまま、祭壇の様子を見つめ続ける。

「外部から強引に干渉するのではなく、システムそのものに小さな傷を作る。これこそ私の得意とするやり方だ。さあ、どんな判定が出るか……楽しみに待つとしよう」闇の細工は誰にも気づかれることなく、静かに儀式の根幹へと忍び込んでいた。一方、祭壇の前ではジョンアイデルがこれから始まる儀式に備え、静かに呼吸を整えていた。ハキハキと、目に見えない闇の細工が施される!!祭壇の前で準備を整えながら、ジョンアイデルは四つのレリーフを見つめ、ハキハキとした口調で問いかけた。

「ところで、このレリーフがここにあるってことは、上空の衛星と接続して神威を高め、判定の精度を上げるためなんだよな?」彼は少し首を傾げ、続ける。

「だとしたら、定期的なメンテナンスはきちんと行われてるんだろうな?」傍らに控えていた神聖技術者が慌てて前に出て、はっきりと応える。

「はい、殿下。今朝の点検作業までに、魔力回路の調整も結界の強化もすべて完了しております。通常通り正常に作動するはずです」ジョンアイデルは再びレリーフに手をかざし、瞳を細めて魔力の流れを読み取ろうと集中する。すると彼の表情にわずかな曇りが浮かび、再び口を開いた。

「……にしては妙だな」四つのレリーフを順に指差しながら、彼は確信を持って告げる。

「見た目には何の傷も汚れもないし、魔力の流れも普段と大差ないように見える。だが俺には、このレリーフの内側から、はっきりと穢れた気配――不純で歪んだ魔力の残り香を感じる」その言葉に技術者は驚いてレリーフに近づき、探知用の魔導具を翳す。

「そ、そんなはずは……今朝の測定値では、どこにも異常は検出されませんでした」

「普通の探知では引っかからない種類の汚染かもしれない」ジョンアイデルは周囲を見回し、警戒の色を強める。

「魔力に擬態し、回路の隙間に隠れるような細工――外部から侵入した何者かの仕業の可能性が高い」屋根裏に潜んでいたペストとファメスは、その言葉を聞いてわずかに身を固くする。

「まさかこれほど早く気づかれるとは……」

「だがまだ完全に暴かれたわけではない。汚染はすでに回路の奥深くに浸透している――これから儀式が始まれば、必ず影響が出る」ジョンアイデルは結界を張り直すように手を動かしながら、周囲に指示を出す。

「すぐに特殊な浄化魔陣を用意してくれ。万が一に備え、汚染の拡散を防ぎつつ、正体を暴く準備をする」ハキハキと、闇の細工が早くも察知される!!屋根裏の暗がりで、自分の細工が見破られかけていることを知ったペストは、苛立ちを抑えきれず、ついに擬態を解いた。コウモリの姿が崩れ、不気味な青みがかった闇のローブをまとった男の姿が現れる。彼は宙に浮いたまま、鋭い爪を向けてジョンアイデルへと一気に襲いかかった。

「感が鋭いな、次期皇帝! だがお前の思い通りにさせるわけにはいかん!」彼は空中で体を反転させ、邪悪な笑みを浮かべながら己の正体を名乗る。

「吾輩はマリス・ソムニア四天王の一人! 疫病、菌、万物を蝕む腐敗の力を司る――青のペストだ!」突然の出現に警備兵たちが武器を構えて前に出ようとするが、ペストの周囲に漂う青い霧に触れた者は、一瞬で体の自由を奪われ、力が抜けて膝をついてしまう。一方、柱の陰でドワーフに擬態していたファメスは、その様子を見ながら小さく舌打ちし、冷ややかな声で呟いた。

「あのヤロー……バレかけたからって、まったく短気で焦りすぎだ」彼は腹の肉を揺らしながら、どこか他人事のように続ける。

「まあ、いいさ。最初から万が一の場合の捨て駒にもなり得ると考えていた。ここで暴れてもらって、少しでも時間を稼いでもらおうじゃないか」ファメスは体をさらに闇に溶け込ませ、自分の存在を再び薄れさせながら、戦いの行方を静かに見守る構えを取った。祭壇の前ではジョンアイデルが虹色の結界を一瞬で展開し、ペストの爪の一撃を受け止めていた。衝撃で石畳が砕け、神殿内に緊迫した空気が一気に高まる。

「四天王……か。だとしても、この神聖な場所を汚すことは許さない」ジョンアイデルは瞳に黄金の光を宿らせ、敵を真っ直ぐに睨み据えた。ハキハキと、闇の幹部がついに正体を現し交戦開始!!眼前に立ちはだかったペストの力を一瞬で見極め、ジョンアイデルは即座に対応策を見出し、ハキハキと宣言した。

「万物を蝕む侵食属性……ということは、対極にある神聖属性が特効となる!」彼は両手を天に掲げ、全身から虹色の輝きが溢れ出す。神殿内の清浄な魔力が一箇所に集まり、聖なる力の奔流となって渦巻く。

「聖なる裁きよ、この神聖な場を穢し、民に災いをもたらそうとする仇なす者に、正しき罰を与えよ! ゴッドジャッジメント!」叫びと共に、天井が開いたかのように上空から無数の光の塊が出現する。それはまるで隕石の雨のように、きらめきながら一点を目指して降り注いだ。

「なっ!?」予想外の反撃にペストは目を見開き、信じられないといった表情で叫ぶ。

「そんなまさか……これほど高度で純度の高い神術法を、この場で直ちに発動できるだと!? ドワァーーーッ!!」彼は必死に青い瘴気の壁を張って防ごうとするが、聖なる光は腐敗の力を浄化するように、抵抗なく瘴気を貫いていく。次々と命中する光の塊は、侵食の力を根こそぎ打ち砕き、ペストの体を粒子へと分解し始めた。

「くそ……これで終わりではない……我ら闇の意志は……」最後の言葉を残し、ペストの体は青白い粒子となって弾け散り、やがて完全に消滅した。神殿内に漂っていた青い瘴気も、聖なる光によって一瞬で浄化され、清々しい空気が戻ってくる。だがその瞬間、柱の陰から低い笑い声が漏れた。

「ははは……見事な力だ、次期皇帝。だがペストはただの前座に過ぎない。儀式はまだこれからだ」ファメスは再び姿を隠し、闇の気配を完全に断ち切って姿をくらませた。一時的な危機は去ったものの、神殿内にはまだ不穏な余韻が残されていた。ジョンアイデルは手を下ろし、まだ警戒を緩めずに周囲を見回す。

「奴らは完全に消滅したわけではない、力の核だけ逃がした可能性が高い。だが――これでレリーフの汚染源は一掃できたはずだ」ハキハキと、四天王の一人は退けられるも闇はまだ潜む!!ペストの騒ぎが収まり、神聖技術者たちによってレリーフの魔力回路の最終確認と簡易浄化が済むと、ジョンアイデルは祭壇の正面、一段高くなった場所に置かれた石造りの玉座へと歩み寄った。彼はゆっくりと腰を下ろし、背もたれに身を預ける。すると側近が慎重に両手で運んできたのは、金属と魔力結晶を組み合わせた機械仕掛けの帽子だった。表面には細かな回路模様が刻まれ、四つのレリーフと対応するように四つの小さな光石がはめ込まれている。

「これが衛星との接続を安定させ、心の内面をそのまま星々へと伝えるための装置か」ジョンアイデルは帽子を受け取り、頭にかぶる。すると瞬く間に帽子の結晶が淡い黄金色に輝き、頭の周囲に柔らかな魔力の膜が張られたのを感じた。神聖技術者が操作盤を調整しながら告げる。

「はい、殿下。この『星見の冠』は、精神に負担をかけずに上空のライオン、ドラコニア、ホース、ウルフェンと直接精神波を同調させる役割を持っています。接続が完了すれば、人工衛星に搭載された古の神託装置が、真の資質と意志を判定してくれます」 ジョンアイデルは目を閉じ、ゆっくりと呼吸を整えた。帽子から流れ込む微細な魔力が自身の精神と共鳴し、やがて頭の中に遠く天空から届くような、澄んだ四つの呼び声が響き始める。一方、柱の陰に身を潜めたままのファメスは、その様子を冷ややかに見つめながら指先で魔力の糸を操る。

「装置を介するということは……信号の流れる経路は単純ではないが、逆に言えば干渉できる隙間も残されている。ペストの残したウイルスが完全に浄化されていなければ、この同調の瞬間に必ず影響が出るはずだ」

玉座に座るジョンアイデルの周囲では、四つのレリーフが徐々に強い光を放ち始め、神意判定の儀式がいよいよ本格的に始まろうとしていた。ハキハキと、儀式の核心へと踏み込む!!星見の冠から流れ込む魔力が全身に満ち、ジョンアイデルの意識は次第に肉体の感覚から離れていった。


まず手足の輪郭が淡い光に溶け、次に体全体が細かな光の粒子へと分解されていく。痛みはなく、まるで深い眠りに落ちるような感覚の中で、彼の存在そのものがデータへと変換され、現実世界から切り離された空間へと送り込まれた。


次の瞬間、意識を取り戻したジョンアイデルは、一面が真っ白に染まった空間に立っていた。上下左右の区別もつかず、遠近感さえ曖昧な、まったく何もない無限の広がり。


「まさか……これが衛星たちの精神世界というのか。何もない空間だとはな」


彼が周囲を警戒しながら見渡していると、正面の白い闇の中からゆっくりと形が浮かび上がってきた。柔らかな長い髪を持ち、全身を淡い銀色の衣で包んだ一人の女性。

挿絵(By みてみん)

彼女はまるで光そのものから生まれたかのような透明感をまとい、穏やかな瞳でジョンアイデルを見つめている。女性は静かに一歩踏み出し、澄んだ声で語りかけた。

「ここは『神託の記録領域』。物理的な形も時間も存在しない、ただ真実だけが記録され、問われる場所です」ジョンアイデルは警戒を解かず、彼女を真っ直ぐに見据える。

「お前は一体何者だ? 衛星の制御プログラム、それとも古の神々の意志の具現か?」女性は柔らかく微笑み、四方向に淡い光の紋様――ライオン、ドラコニア、ホース、ウルフェンの姿が一瞬だけ浮かんでは消えるのを見せた。

「私はこの四機の衛星が長い年月をかけて育んできた集合意志。名前など必要ない存在です。ただ、これからお前の心と意志を確かめ、判定を下す役割を持っています」白い空間に緊張感が漂い始めた。何もないように見えたこの領域こそ、神意判定の真の舞台だったのだ。ハキハキと、真実だけが問われる世界へ踏み込むのである。一面が白に包まれた記録領域で、銀色の衣をまとった女性はまっすぐにジョンアイデルを見つめ、ハキハキとしたはっきりとした声で問いかけた。


「これから最初の問いを立てます」

彼女の周囲に、四機の衛星の紋章が淡く浮かび、静かな重みを帯びた言葉が響く。

「あなたは神としてミクスタッドの皇帝の座につくことを誓いますか?」問いかけは単純なようでいて、深い意味を含んでいた。この国の皇帝は単なる統治者ではなく、祖龍の血と国の基盤である神聖技術の意志を受け継ぎ、民の平和と未来を守る存在――まさに「人の世にあって神に連なる責任」を持つ立場であることを示している。ジョンアイデルは一瞬考え込むように目を閉じ、これまで歩んできた道、出会った人々、そして自分が描く理想の国の姿を心に浮かべた。やがて彼は力強く目を開き、黄金色の瞳で女性を真っ直ぐに見据え、はっきりと答える。

「誓います。ただし――」彼は少し言葉を区切り、自分なりの考えを加える。

「『神として』という言葉は、権威や絶対的な力を振るうという意味ではないと俺は思っています。民のために自らを捧げ、導き、守り続ける。その責任と意志を持つことこそが、この問いの真の意味であると理解しています」彼は胸に手を置き、誓いを明確にする。

「俺はミクスタッドの皇帝となり、この国に暮らすすべての者たちが安心して生き、未来に希望を持てる世界を作るため、全力を尽くすことを誓います。どんな困難があろうと、この誓いを曲げることはない」女性はその答えを静かに聞き、無表情だった顔にわずかな柔らかさが浮かんだように見えた。

「……責任の重さを正しく理解し、自らの言葉で誓いを立てた。それでは次の問いに移ります」ハキハキと、最初の問いへの答えが示される!!白い空間に、女性の澄んだ声が再び響く。

「次の問いです。これまでの資質と意志から、次代の皇帝となるのはおそらくあなたであろうと思われます。そこで問います――統治は永遠に続けるものと考えますか?」問いかけに、ジョンアイデルは迷いなく真っ直ぐに答え、ハキハキと自分の立場を明らかにした。

「私は不老不死の体を持っています。だから、統治はこの国が滅びるその時まで、私が見届けられる限り続けるつもりです」女性はわずかに瞳を細め、さらに言葉を重ねる。

「不老であるがゆえに、権力を握り続けることになります。長き時間の中で、心が腐り、民を支配するだけの存在になる恐れはないのですか?」ジョンアイデルは首を横に振り、力強く続ける。

「時間が長いこと自体が悪いわけではない。問題はその使い方だ。私は永遠に一人で支配し続けようとは思っていません。この国には皇配たちがあり、優れた人材たちが育ち、共に考え、共に導く体制を作り上げます」彼は誓いを新たにするように胸に手を置く。

「私が永遠に持つのは、民を守り続ける責任感と理想です。権力は国のため、民のために使う。もし私の心が歪み、道を踏み外すことがあれば――そのときはこの国の民たちこそが、正しい道を示してくれると信じています」その言葉に、女性の周囲に浮かんだ四つの紋章が、柔らかな輝きを増してゆっくりと回り始めた。

「永遠の時間を重荷とせず、国と共に歩み続ける意志……確かに聞き届けました」ハキハキと、永遠の誓いの意味が明らかにされる!!銀色の衣をまとった女性は、穏やかながらもはっきりとした口調で告げた。


「これで意志の確認は完了しました。真に国と民のために生きる覚悟と責任感――それがこの領域に証明されました」


彼女は少し言葉を区切り、重要な事実を付け加える。

「それと、君には一つだけ教えておきましょう。マリス・ソムニアの者たちは、まだ儀式の場に潜み続けています。力ずくではなく、隙をついて行動する可能性が高い。現実の世界に戻ったら、どうか気をつけてください」ジョンアイデルは真剣な表情で頷く。

「……ありがとう、教えてくれて。警戒を怠らないようにする」

「では、元の世界へお戻りください。道はこれから始まります」女性の声と共に、白い空間全体が柔らかな光に包まれた。ジョンアイデルの体は再び細かな光の粒子へと戻り、ゆっくりと元の形へと再構成されていく。次の瞬間、彼は祭壇前の玉座で目を開けた。頭にかぶっていた星見の冠は自動的に解除され、静かに脇に収まる。現実の世界の感触が戻り、神殿の空気や周囲の様子がはっきりと感じ取れるようになった。側に控えていたクレティアやフィリアがすぐに駆け寄る。

「ジョンアイデル、無事ですか? 同調は問題なく完了したようですが……」

「ああ、大丈夫だ」ジョンアイデルはゆっくりと立ち上がり、周囲の柱の陰や結界の状態を確認しながら答える。

「神意判定は成立した。だが、まだ完全に安心できる状況ではない」彼は低い声で続ける。

「マリス・ソムニアの幹部の一人、ファメスがまだ潜伏している可能性が高い。見えないところから次の手を狙っているはずだ」神殿内に再び緊張感が走る。神意判定自体は無事に終わったものの、闇の影はまだ完全には払拭されていなかった。ハキハキと、神意判定は成立するも闇の脅威は残る!!神意判定が終わり、警戒を強めようとしたその瞬間――神殿の高い天井の闇の中から、重い風を切る音と共に巨大な影が急降下してきた。擬態を完全に解き、本来の黄土色の毛皮をまとった肥満体の姿に戻ったファメスである。

「今が隙だ! 神託の同調から戻った直後、力が不安定になっているはず――!」彼は大きな体からは想像もつかない速さで拳を振り下ろし、地面ごと叩き砕こうとする。だが――

「甘い!」ジョンアイデルは頭上から迫る殺気と重い魔力の気配を即座に感知し、体をわずかに横に滑らせるようにして回避した。次の瞬間、ファメスの拳は彼がいた場所に激突し、石畳が大きく陥没し、砂塵が舞い上がった。ファメスは陥没した地面に立ったまま、重い息をつきながら冷ややかに笑う。

「なかなか勘が鋭い。だが、これで儀式の場の結界も一部が緩んだ。吾輩はマリス・ソムニア四天王の一人、飢えと不足、経済と資源の歪みを司る黄のファメス!」彼の体からは、まるで周囲の魔力や物質の力を吸い取るかのような、どんよりと重たい黄土色の瘴気が立ち込め始める。近くにあった魔導具の輝きが一瞬で鈍くなり、結界の魔力の流れが淀んでいくのが見て取れた。

「力だけではない。吾輩の前では、資源も富も力も、やがて枯渇し衰えていく。長き時間を生きるお前にこそ、この力は効果的だろうよ」ジョンアイデルは後ろに下がり、虹色の結界を張りながら敵の力の性質を見極める。

「周囲の力を吸い取り、枯渇させる能力か……だが、俺だけではない、この場には多くの仲間がいる」クレティアをはじめとする皇配たち、警備兵たちも即座に武器と魔力を構え、ファメスを包囲するように配置についた。神殿内の緊張は再び最高潮に達した。 ハキハキと、潜伏していた四天王がついに正体を現す!!ファメスの瘴気が神殿内に広がり、魔力の流れが淀み始める中、ジョンアイデルは素早く右手をかざした。手のひらの中心に、生命力に満ちた鮮やかな緑色の光が集まり、やがてコンパクトな球体へと形作られる。それは枯渇や衰えとは対極にある、自然の再生と活力の魔力が凝縮されたものだ。

「力を吸い取り枯渇させる力なら――これで相殺するまでだ!」ジョンアイデルは狙いを定め、緑色の球体を勢いよくファメスに向かって投げつけた。球体は空気を切り裂きながら飛び、ファメスの周囲に漂う黄土色の瘴気の壁に触れた瞬間、柔らかく弾けた。すると、広がった緑色の光がまるで根を張るように瘴気の中へ染み込んでいく。

「なっ……! 吾輩の『飢え』の瘴気が……」ファメスは驚いて目を見開く。自分の力であるはずの瘴気が、緑の光に触れた部分から徐々に薄れ、吸収されるどころか逆に中和され、さらには周囲の魔力の流れまで少しずつ回復し始めていた。

「お前の力は『不足』を引き起こす力だが、世の中にはそれを補い、満たし、再生させる力も存在する」ジョンアイデルはさらに魔力を込め、周囲の結界を強固にしながら続ける。「資源が枯れれば植え直し、力が尽きれば共に分け合う――それがこの国が長年培ってきた生き方だ。お前の力だけが絶対ではない」緑の光はファメスの体の周囲まで広がり、彼が放つ瘴気の勢いを完全に抑え込んでいく。神殿内の淀んでいた空気も、次第に清々しさを取り戻し始めた。ファメスは舌打ちしながら体を後ろに反らし、警戒の色を強める。

「なるほど……単純な力のぶつかり合いではなく、力の性質そのものを理解しているというわけか。だが、これで終わりではないぞ……!」彼は体からさらに濃い黄土色の光を滲ませ、次なる手段に備え始めた。 ハキハキと、敵の力の性質を見抜き対抗する!!緑の魔力で瘴気の勢いを抑えたそのとき、ジョンアイデルは軽く指を鳴らした。

カチッ

小さな音が響いた瞬間、先ほど投げた球体から広がっていた緑の光が一気に活性化する。まるで生き物のように流動し、ファメスの体を中心に輪を描くように集まり、一瞬で彼の全身を柔らかな緑の光で包み込んだ。

「なっ、これは何だ!? 吾輩の魔力が……」ファメスは驚いて体を動かそうとするが、光は拘束するわけではない。それどころか、彼の体の内側から滲み出ようとしていた黄土色の飢えの力が、緑の光に触れるたびに中和され、安定していくのを感じた。ジョンアイデルは落ち着いた声で告げる。

「お前の力は『枯渇』『不足』『飢え』を引き起こす。だがそれは裏を返せば、『満たされる』ことで力の根源そのものが抑えられる性質でもある」彼は手を少し前に差し伸べ、光の流れを整える。

「この光は再生だけでなく、均衡を取り戻す力でもある。周囲の力を奪うのではなく、必要なだけを満たし、余剰を循環させる――それが正しい力の使い方だ。お前の力も、使い方次第では国の安定に役立つはずだ」

緑の光に包まれたファメスは、自分の瘴気が抑え込まれたことに怒りを感じながらも、同時に長年渇いたような心の奥に、わずかな安らぎが広がるのを否定できなかった。

「くっ……力で吾輩を封じるのではなく、性質ごと上回ろうというのか……!」彼は奥歯を噛みしめ、体からさらに力を絞り出そうとする。だが緑の光はそのたびに柔らかく受け止め、過剰な力を拡散させてしまう。神殿内には両者の魔力がせめぎ合う緊張感が漂いながらも、ジョンアイデルの力が徐々に優位に立ち始めていた。ハキハキと、力の本質を理解した均衡の力が発揮される!!緑の光に全身を包まれ、力の流れを抑え込まれたファメスは、次第に顔を歪めていった。

「くっ……このまま押さえつけられるくらいなら……!」彼は己の力を無理やり凝縮させ、体内に留めようとする。だが、枯渇と飢えの性質を持つ魔力は、無理に閉じ込められるほど暴走し始める。

パンパンッ――!

体の内側から不自然な膨張音が響き、ファメスの体は風船のようにみるみる膨らみ始めた。毛皮の服ははち切れんばかりに張り、黄土色の瘴気が皮膚の隙間から噴き出し、不安定に渦巻く。

「これ以上吾輩の力を抑えるなら……共に消し飛べ!!」次の瞬間――大きな破裂音と共に、彼の体は一気に弾け飛んだ。だが、緑の光が瞬時に展開され、爆発の衝撃波と瘴気の拡散を柔らかく包み込む。魔力の破片は中和され、神殿の壁や祭壇に損傷が及ぶことなく、ただ黄土色の粒子が舞いながらゆっくりと消えていく。

「捨て身の爆発か……だが、力の暴走は自分自身を滅ぼすだけだ」ジョンアイデルは光の結界を解き、辺りの魔力の流れを確認する。ファメスの存在は完全に消えたように見えたが、彼は警戒を緩めない。

「四天王が二人まで退けられた。だが、まだベロルム、カース、そしてディザステトが残っている。儀式はまだ力の証明と教養の証明、最後の段階が残っている」クレティアたちも周囲の警戒を強め、神殿内に再び厳粛な緊張感が戻ってきた。ハキハキと、ファメスは自滅する形で退場!!

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