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No.61 交わる縁

「実は私も、紹介したい人がいるの。

私のボディーガードの魔術師、海成(かいな)よ」


鈴菜たちの前に、

年齢に似合わぬ落ち着いた雰囲気の少年が現れた。


年は玲音と同じくらいだろうか。


黒髪の少年は一歩前に出ると、静かに頭を下げた。


その瞳には感情らしい感情が見えず、

ただ主人である梨亜の側に控えることだけを当然としているようだった。


(……どこかで会った?)


鈴菜は小さく眉をひそめる。


初対面のはずなのに、不思議な既視感があった。


理由は分からない。


けれど、その静かな佇まいの奥に、なぜか見覚えがある気がした。


だが、その正体を考えるより先に――


「お、海成じゃん」


軽い声が飛んできた。


振り返ると、いつの間にか颯馬が手をひらひらと振っている。


「久しぶり。ちゃんと学校も行ってるか」


「……一応」


海成は短く答える。


相変わらず表情の変化は乏しい。


だが、颯馬へ向ける視線からは警戒心が感じられなかった。


むしろ、数少ない心を許した相手に向けるような静かな信頼が滲んでいる。


二人がただの知り合いではないことは、鈴菜たちにもすぐに分かった。


梨亜が驚いた表現で颯馬と海成を見る。


「あら、二人は知り合いだったのね」


梨亜は少し意外そうに目を瞬かせた。


「改めて紹介するわ。

海成は私のボディーガードなの」


改めてそう告げると、梨亜は海成へ視線を向ける。


「もっとも、私としては同年代の子に守られるのは少し複雑なのだけれど」


「問題ありません」


海成は淡々と返した。


感情の起伏をほとんど感じさせない声だった。


「海成は中学三年生。

私の家に幼い頃から仕えていて、護衛を担当しているの」


「神坂家の……梨亜さんの護衛専門って感じですか?」


玲音が思わず聞き返す。


「そうよ」


梨亜は小さく頷いた。


「護衛としても優秀だし、魔術師としての実力も高いわ。

私が安心して外を出歩けるのは海成のおかげと言っても過言ではないもの」


「恐縮です」


褒められても海成の表情はほとんど変わらない。


だが否定もしないあたり、事実として受け止めているらしい。


「へぇ……」


玲音は感心したように声を漏らした。


同い年の少年がボディーガードをしているというのは、それだけで驚きだった。


一方の菖蒲は海成をじっと見上げる。


「なんか大人っぽいね」


「……よく言われます」


返事は短い。


けれど無視しているわけではなく、聞かれたことにはきちんと答える。


無口なだけなのだろう。


鈴菜はそんな海成を見つめながら、胸の奥に残る違和感の正体を探していた。


「今日、海成を連れてきたのには理由があるの。

今後、皆と一緒に行動する機会が増えると思うのよ」


「護衛のために?」


鈴菜の問いに梨亜は頷く。


「ええ。私が動く時は海成も一緒だから。

だから先に紹介しておこうと思ったの。これから何度も顔を合わせるでしょうし」


そこで梨亜は少し困ったように笑った。


「それに、彼は護衛の仕事ばかりしようとするのよ。

護衛だけでなく学校も行くように言っているのだけどね」


「護衛は私の仕事ですので」


海成は淡々と返した。


「あなたはまだ中学生でしょう?」


即座に返されても、梨亜は気にした様子もない。


「せっかく同年代の子たちと知り合える機会なのだから、もっと学校生活も楽しんでほしいの」


「護衛には不要です」


「必要よ」


梨亜はきっぱりと言い切った。


「勉強も、人との関わりも、今しかできない経験だもの。護衛だけしていればいいなんて、私は思わないわ」


海成は何か言い返そうとして、結局口を閉じた。


どうやら何度も繰り返されたやり取りらしい。


微妙な沈黙が落ちる。


その空気を断ち切るように、鈴菜は一歩前へ出た。


「まあ、その辺は置いといて」


そう言って海成へ手を差し出す。


「改めてよろしく、海成くん」

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