No.60 笑い声のひとつぶ
颯馬は腹を抱えた。
「……姉の威厳、どこ置いてきた」
「うるさい」
鈴菜は顔を上げずに返した。
菖蒲の頭に額を預けたまま、声だけが低い。
菖蒲が鈴菜の裾をくいくいと引っ張り、新たな足音へ目を向けた。
石畳に、複数の足音。
軽いものと、規則正しいものと――ほとんど音を立てないものが、一つ。
最初に声を漏らしたのは玲音だった。
「先輩――」
言いかけて、止まる。
視界に飛び込んできた光景に、完全に固まった。
しゃがみ込んで、妹に頭を預けている鈴菜。
数秒、時が止まる。
鈴菜がゆっくりと顔を上げた。
玲音と目が合う。
一拍置いて、
「……見た?」
低い声。
「い、いや……その……!」
玲音の声が裏返った。しどろもどろの反応が、そのまま答えになっていた。
その後ろから、小さな笑い声が落ちた。
「ふふ。仲が良いのね。姉妹なんでしょう? 玲音くんから話は聞いているわ」
「紹介がまだでしたね」
鈴菜は何事もなかったかのように立ち上がり、菖蒲の背に手を当てた。
「妹の菖蒲ちゃんです。私たちは血の繋がった姉妹です」
「アヤメです!」
菖蒲が無邪気に笑う。それを見て、梨亜の顔も自然とほころんだ。
「スズ姉が言ってたお姉さんだよね!」
鈴菜は菖蒲へ視線を向け、頷いた。
「うん。私と同じ学校で、同い年。それに魔法師として、私たちのチームの新人メンバーでもある」
「菖蒲ちゃん、よろしくね」
梨亜はしゃがんで菖蒲の目線に合わせた。
「うん! よろしくお願いします!」
二人は笑顔で初対面を終えた。
鈴菜はそこで思い出したように、隣へ視線を向ける。
「あと、こっちは颯馬」
「扱い雑すぎない?」
「説明いる?」
「お前な……」
鈴菜は小さくため息を吐いた。
「一歳年上の幼なじみ。昔からの腐れ縁。以上」
「他にも俺の魅力あるだろ」
「だいたい合ってるでしょ」
颯馬は肩を竦める。
「まあ、否定はしないでおくか」
「颯馬さんね。よろしくお願いしますわ」
梨亜が柔らかく微笑む。
「どうも」
軽く手を挙げて応じた。
「実は私も、紹介したい人がいるの」
梨亜がふと切り出し、後ろを振り向く。
タイミングを合わせたように、一つの足音が近づいてきた。
「私のボディーガードの魔術師、海成よ」
鈴菜たちの前に、
年齢に似合わぬ落ち着いた雰囲気の少年が現れた。
「実は私も、紹介したい人がいるの」
梨亜がふと切り出し、後ろを振り向く。
タイミングを合わせたように、一つの足音が近づいてきた。
「私のボディーガードの魔術師、海成よ」
鈴菜たちの前に、
年齢に似合わぬ落ち着いた雰囲気の少年が現れた。




