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黒炎の月 昼 ⑤

ここに来て新キャラ登場!

 王の決断は早かった。


 俯きながらの業務に、聞き流しの報告。

 一人娘を失った王の落胆ぶりや如何なる行楽にも見向きもせず、来る日も来る日も心を無にしていた。


「――ナデシコ様に似た――――」

「今何と――!!」


 報告に来た下っ端近衛兵が一瞬固まった……


「……ナデシコ様に似た人型がダンジョンで目撃され――」

「馬鹿もんが!!今すぐに捜索隊を派遣せよ!!!!」

 王の怒号は謁見部屋の外までに響いた。

 近衛兵は泡を食ったかのように部屋を出、直ぐさまに新しい警備兵長の下へと向かった。


「ヌ、ヌックラ様!!大変です!!」

 勢い良く扉を開けた先には、ティーカップを吹き飛ばされ紅茶塗れになった警備兵長ヌックラが居た。


「し!失礼致しました!!」

 下っ端近衛兵は見る見る小さくなり縮こまってしまった……。


「あ、ああ、大丈夫だ。それより何事だ?」

 ヌックラはシルクのハンカチで顔を押さえると、欠伸にも出さず凛とした顔付きで下っ端近衛兵を迎えた。


「王より直々の伝令です。ダンジョン内で目撃されたナデシコ様似の人物について捜索隊を派遣せよ、との事です!」

 それを聞き、口角が僅かに上がるが直ぐにキリッとした顔立ちへと戻すヌックラ。


「そ、そうか。報告ご苦労。下がって宜しい」

「はっ!」


「……面倒だなぁ~行きたくないな~何故かお外暗いんだもん~!!」

 身体をクネクネしながら窓に躙り寄るヌックラ。そこに兵長の威厳は無い。


「失礼します!!」

「!!」

 ヌックラは姿勢をピンと戻し、リズミカルに振り返った。


「ララ様がお呼びです!」

 兵士が立ち去ると、ヌックラは椅子にへたり込んだ。


「え~!!姉上が呼んでるって、面倒事に決まってるじゃん~」

 ヌックラは重い腰を上げ、トボトボと歩き始めた。


「遅いわボケカス!!!!」

「!!」

 廊下をフラフラと歩くヌックラに、後ろから罵声が浴びせられた。


「姉上……」

 ヌックラはこれでもかと言うくらいに嫌な顔をしたが、姉であるララは人差し指を立てお構いなしに話し始めた。

「あんた分かってるの!?今の王様が亡くなれば、王位継承権的に次は貴方なのよ!!もう少ししっかりしなさい!!草葉の陰でお父様が泣いているわよ!!」


「……分かってる……よ……多分」

「全く……それじゃあ行くわよ!!」

 ララはヌックラの首根っこを掴み引きずり始めた。


「え!?え!?え!?どこ!?どこ!?ねぇ!?」

 ヌックラは訳も分からずパニックに陥る。ララは手を離し、ヌックラの顔の前に近付き小声で話し始めた。


「いい?万が一捜索隊がナデシコを見つけたら、アンタの王位継承権は吹き飛ぶのよ?当然私の地位も下がるわ」

「……?」

「私達が直々に捜索隊に加わって、こっそりナデシコを始末するのよ。居ても居なくても王には恩が売れて地位は安泰よ……」


 一瞬の間の後、ヌックラは理解したかのように表情を明るくした。

「姉上頭良いね!」

「さ、分かったなら行くわよ?」

 ララは鉄扇を鳴らしながら優雅に歩き始めた。その後ろをノロノロとヌックラが追う。

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