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変身少女のタマゴ系ライブ  作者: 葉月 優奈
五話:『宇野中 撫子』のタマゴアイドル:前編
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『6月17日』

あれから、私は毎日夕方のシンデレラだ。

学校から帰って、タマドルで変身をする。

いつもの『オレンジプリンセス』コーデで、私は学校に戻って奥津先輩に会う。

それは、私にとって一番楽しい時間だった。


彼は毎日、私の写真を撮ってくれた。

私が気に入ったこのアバターを、撮ってくれた。

ブレザーにカメラをぶら下げた奥津先輩は、私をファインダー越しに見ていた。


「いいね、ナデシコ。こっちの校庭を背景に」

「こうですか?」

噴水に足をかけて、ポーズを取った。

それは、彼専属モデルになった素敵な時間。


「そうそう、じゃあ、これが終わったら休憩取ろうか」

「はい」私は丁寧に頭を下げた。

最後の写真を撮ると、奥津先輩が「おつかれ」と私に声をかけてきた。


「はい、奥津先輩」

「じゃあ、あっちのベンチに座ろっか」

私は奥津先輩に導かれるまま、近くのベンチに座っていた。


「先輩」

「ああ、なにか飲み物を買ってこようか?何がいい?」

「えと……おまかせで」

「わかった。じゃあいつものお茶でいい?」

私は照れながら無言で頷いた。奥津先輩が、近くの自販機に走って行く。

ずっと頭の中で考えていた。


(私は、大好きな先輩とこうしている。

大好きな先輩に、想いを伝えたい。

だけど本当のことを伝えてしまうと、この時間が壊れてしまう)

私の中では、ずっと迷いがあった。


写真を撮られている今は、私が先輩に今までで一番近づいている時間。

すぐ近くに先輩を感じられた、幸せの瞬間。

だけど、告白をすることで壊れてしまうのではないかという不安。

それでも、私の胸はずっと熱い。この感情は抑えられない。


「はい、お茶」ペットボトルのお茶を私に買ってきた、奥津先輩。

「お金は……」

「いいのいいの、おごりだから。

今までも、ずっと俺の撮影につき合ってくれているし」

奥津先輩は、やっぱり優しい。私は、そんな先輩に甘えっぱなしだ。


「あの……さ」

「どうしましたか?」

「『ナデシコ』っていくつなの?いつも制服を着ていないけど」

「あっ、はい。私はここの学校の生徒ですよ」

「そうか、この学校の制服の定義はちょっと曖昧だからな。

最近生徒会でもひとつの議題が上がっていてね。

おっと、これは生徒会だけの秘密なんだ」

「秘密……ですか」

彼の上に、オランダ人生徒会長のあの子の顔が思い浮かぶ。


「うん」そんな時、奥津先輩が不意に私の肩を抱き寄せた。

「ああっ」私の胸の心拍数が、一気に上昇した。


「でも、ナデシコはほかの人に言わないなら教えてあげる」

「えっ、はい」私がそう言うと、私の耳元に彼が小さな声で囁いた。

「実は、近々制服廃止をする話があるんだ」

「ほんとうですか?」

それは私にとって、思いのほか些細なことだ。


「びっくりしただろ、これまだ生徒会長には言っていないんだけど。

生徒会の役員はみんな賛成しているんだ。まあ、最終的には会長のハンコがなければ施行されないけど。

それでも、この計画は水面下で動いていて署名活動も極秘にしているんだ。

うまくいけば、来年から学校が変わるかも」

「ですね、それは素晴らしいです」

でも、その学校に奥津先輩はいない。


「まあ、会長がここの制服好きなのと、学年主任の加藤先生が唯一の問題だけどな」

「ふふっ、そうですね」

「それに……『ナデシコ』のその服も、似合っているよ」

「そ、そうですか」私は奥津先輩に言われて、顔が真っ赤になっていた。

ボッと、顔に火がついたかのように赤い。

そんな私の反応を見て、奥津先輩も表情が赤くなった。


「あ、あのさ」

「はいっ!」

「ナデシコのほかの服も、見たいな」

「え?」

「明後日の日曜日……でいいけど、空いている?」

いきなり私の赤い顔を見ながら、やはり少し照れた様子で言ってきた奥津先輩。

私は、その言葉に心を落ち着かせた。

同時に赤くなった顔も、落ち着かせていた。


「はい、空いています」

「そうか、なら一緒に買い物とか……いかない?」

「いいですよ」

「ありがとう、じゃあ日曜日朝十時に四日市駅で」

「はい」私は笑顔で、奥津先輩の言葉に応えた。



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