064
私が通っているのは二年C組。
このクラスは、女子が割合として多い。
あの一件以来、私は再びクラスで距離を取るようになってしまった。
教室では、目立たないようにしている私。
そして、三時間目は体育だ。
更衣室に行く途中に、廊下を歩いていた。
いつもどおりの、一人での移動。
「お主は、学校でも大人しいのだな」
いきなり喋ったのは、タマドルカードだ。
このカードは、タマちゃんの魂が乗り移っているらしい。
タマちゃんの喋りは、普通の人間に聞こえない。
ハコベの言う理論だと、しゃべれる人は稀有な一部の人間ということだ。
「タマちゃん、どうしたの?」
「いや、なんか最近あの男ばかり見てため息をついているからな」
「そうじゃないで!」
私は口を尖らせて否定した。
そんな私の前には、一人の少女が歩いていた。
ブロンドの髪で、背の高い外国人の少女。
「あの女と一緒にいるのが、嫌なのか?」
「生徒会長、シエル カーネーション。
奥津先輩は副会長だから……これなら私も生徒会に立候補すればよかったです」
「意外と根に持つのだな」
「違います……あの子とは嫌な過去があるの」
生徒会長の背中を見ながら、私は深くため息をついていた。
「もしかしたら、あの女に取られるかもな」
「えっ、やだ!」
あたしは思わず、大きな声を上げていた。
すると、前を歩いていた生徒会長がチラリとこちらを見た。
見たけど、私の顔が視覚に入ったのかすぐに前を向く。
ちょうとタイミングよく、一人の女子が生徒会長に話しかけてきた。
「ふうっ、とにかく私は……」
「先輩が好きだな」タマちゃんに言われて、顔が真っ赤になった。
「はい」
「じゃが、高校の三年というのは忙しいのじゃろ」
「はい、秋から受験勉強があります」
「今は六月も半ば、ならばチャンスはもうないな。話したこともないのだろう」
「はい」
そう言いながら私は、大きくため息をついていた。
彼のことを考えて、フラれた時のことばかり考えてしまう。
一度ちゃんと話をしたいのに、話すことなく終わってしまうのはイヤだ。
「自信がないのか」
「はい」
「そろそろ朕の力を、使ってみても良いのでは?」
「朕の力?でもそれだと……これは私のことですし」
「お主を見てられんのじゃ、このままではいつまでも自分の気持ちすら伝えられぬぞ」
タマちゃんは的確に、私に言ってきた。
いつもそばで見ているからこそ、私のことを心配しているのだ。
「変身できれば、私は言えるのでしょうか?」
「少なくとも、今のお主と奥津様とは接点が無いな。
変身した姿なら、話せるやも知れぬ。丁度筐体も家にあるしな」
「そういうものなのですか?」
「まずはお主が変わってみよ」
タマちゃんは、どこまでも私の味方だ。
私はそれを見て、心が動かされそうになっていた。
そんな私は、さらに廊下の掲示物で立ち止まっていた
「こ、これです!」
そう、私は彼に近づくひとつの方法を見つけたのだ。




