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『6月14日』
ゲーム筐体が来て、二日が過ぎた。
私はいつもどおり、黒い車に乗り込んでいた。
セーラー服の私と、黒いメイド服のハコベ。
ハコベは学校のセーラー服が着られないので、彼女は私にいつも付き添いをしていた。
「ハコベは、本当はいくつなのですか?」
「自分は、人間の年齢で換算すると十五ということになります」
「まあ、私より年下なのですね。随分としっかりしているから、年上かと思いました」
私は両手を挙げて、好意を示した。
だけど、ハコベは首を横に振っていた。
「そういえば、ハコベの両親は?」
「残念ながら、自分は両親の顔を知りません」
「それは大変ですね」
ハコベは、わたしが思っている以上に苦労人だ。
最近は、こうして私とハコベが話す機会も増えていた。
ハコベのことは、この二ヶ月でだいぶ分かってきた。
「でも、ハコベは本当にタマゴ王国から来たのですか?」
「はい、自分はここの人間ではありません。
この世界の服を受け付けないのは、本来の体が八次元にあり世界の歪みによって私が見えるだけです。
人間の視覚は、光に反射したものしか見ることができません。
自分の体は、八次元の中から座標軸を操作して、あくまで姿を投影していいるだけに過ぎません。
まあ、影絵のような被写体があって……」
「そうですか、難しいですね」
「原理的には難しいです。でも、今こうして自分がここにいるのはお嬢様のおかげです」
ハコベは笑顔を見せていた。
「そういえば、緑魔女は見つかりましたか?」
「いえ、残念ながら一昨日見つけることはできませんでした。
イースターの方も、見つかりませんでした」
「そうですか、でもニュースで昨日神隠しがありましたよね」
「はい、主婦が消えるニュース」
それは昨日の夕方に放送されたもの。
事件は日曜の夜に、隣の鈴鹿市で買い物中の主婦が突如消えた。
スーパーの駐車場で、急に主婦が買い物袋を残してその場から消えた事件。
「事件は日曜日、『危険な日曜』と重なります。
もしかしたら、そこに緑魔女が現れたのかもしれません。
最近、四日市に数件の神隠しもありましたし」
「緑魔女も出てきた……ですか」
「はい」
難しい顔で、ハコベが見ていた。
「今日は、鈴鹿市に行こうと思います。お嬢様を送ったら鈴鹿市に……」
「ちょっと、徐行してもらえますか?」
学校付近に差し掛かった車の窓を見て、私は前にいる運転手に頼んだ。
「はい、お嬢様」運転手が減速していた。
「彼ですか?」
「はい」私はずっと窓を眺めた。顔を赤くして、胸が熱くなった。
そこには、一人の男性が通学路を歩いていたからだ。
「また、彼ですか?」
「はい、私の大好きな奥津先輩です」
私が見ているのは、少し背の高い奥津先輩。
三年生の先輩は、眠そうな顔で歩いていた。




