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私とハコベはライブを終えて、戻ってきていた。
戻ったのは、色鮮やかに飾りつけられた蔵。
それはハコベの趣味らしい。今、彼女にこの住処を私は与えていた。
屋敷にも空き部屋があるのだけど、自分は使用人だからとこの蔵を選んだ。
浴衣姿の私は、ライブを踊り終えてくたびれた表情を見せた。
隣のハコベは、相変わらず落ち着いた顔を見せていた。
「撫子お嬢様、申し訳ありません」
「ううん、ハコベ。私は気にしていませんよ。
それより私のライブを良くしようとしているのですね。それなのに……私は」
私は、ハコベに心配をかけまいと微笑んで見せた。
「いえ、お嬢様は助かっています。
自分はお嬢様を、巻き込んでしまっているのですから」
「それにしても……最近のライブは難しいですね」
「はい、やることが増えてきます。『アイドルアピール』に『エッグアピール』。
これらを使えるようになると、ライブで稼げるグッドも大幅に増えますから。
あとは……やはり『トリオ』にしたいですね」
「三人目ですね、やはり先週鈴鹿川で出会ったあの少女」
「シエルですね」
私は先週、一人のタマドルと出会った。
「お嬢様が保護した『シエル』と名乗った名前の少女は、間違いなくタマドルです。
タマドルの姿で現れることは、イースターも彼女と一緒に行動しています。
ボロボロの衣装は、カクイドリに襲われたのだと推測できます」
「あのまま保護して、連れてくればよかったですね」
「まあ、あの時は緑の魔女を追いかけるのが先だった。逃げられたが」
ハコベは、かなり悔しそうな顔を見せていた。
「とにかく自分は、今日は『緑魔女』を追いかけます。
危険な日曜なので、彼女は必ず現れますから」
「わかりました、私はシエルについて調べています」
「本当にお嬢様、すいません。わざわざこのようなことまで」
「いえ、ハコベが早く帰れるといいですね。
帰る家がないのは、とても辛いですから」
私はハコベの気持ちが、少し理解できた。
理解できたからこそ、私は彼女に協力できた。
「では、また……」
「はい」こうして、私はハコベと別れたのだった。




