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重力1/100 〜コンテナ暮らしの宇宙人は世界を救う神らしい〜  作者: 益城 茜


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無謀な回答

いつもお楽しみいただきありがとうございます。

本日は素晴らしい仲間たちの暴走の話です。

どうぞお楽しみください。

 

 海中から現れた「巨像」が初動で何気なく腕を振るい、フランチェスカとコラスたちを行動不能に落とした。だが、それはあくまで巨体を島へと完全に立ち上がるための予備動作に過ぎなかった。

 巨像が完全にその巨体を支えて大地に踏み出し、バランスを取るように再び巨大な腕を大きく振り上げたのが二度目の動作。


 ――その強烈な旋回運動の余波が、湾全域を揺るがす二度目の衝撃波となって周囲を薙ぎ払わんとした。

 先ほどよりも大量な空を覆うほどのガレキがナナオや白雪たちに向かって襲い掛かる。ガレキというにはあまりにも大きな、資材倉庫と言った構造物や小型の船舶などが容赦なく巻き上げられ、埠頭めがけて降り注いだ。


 コラスたちやフランチェスカ、そして白雪を護るようにして、ナナオは空中に飛び上がると、ガレキの直撃を防ぐべく凄まじい音速の拳を連発する。空に放たれた拳は、音の壁を割りながら映画でも見ている様に大量のガレキを粉々に粉砕した。


 だが、その直後に襲いかかった超高圧衝撃波の余波そのものを空中でダイレクトに食らい、ナナオは受け身を取る間もなく、「がはっ」と息を詰まらせて、バウンドするように地面に落下すると盛大に倒れ伏した。


 全身の服はボロボロに引き裂かれ、生傷が絶えない。


 それでも、肉体的なダメージ自体は致命的というほどではなく、意識を失っているわけでもない。ただ、規格外の質量が生んだ衝撃そのものに押し切られるようにして、ナナオはその場に膝をついていた。


「……っは、あ……」


 息を整えながら、ナナオは這うようにして上半身を起こす。立ち上がること自体は十分に可能と思われていたが、衝撃波で揺さぶられた内臓はそれを拒んだ。あまりにも理不尽な「第一撃」の余波によって、体のコントロールが断ち切られたような感覚だった。


 心配そうに白雪が、荒い息をつくナナオのすぐ近くに佇んでいる。

 第一波から仲間たちを庇い切ったコラスたちやフランチェスカたちもまた、血を吐くような気迫の果てに地面へ倒れ伏していた。

 周囲には激しい余波で粉々に破砕された無数のガレキと荒れ狂う波飛沫が降り注いだが、

 ナナオとフランチェスカ、コラスたちの奮闘により白雪は唯一無傷だった。


 その圧倒的な余波は物理的な湾内に大波を巻き起こし、外洋からマンダラキ港へと侵入を開始していた松河たちの高速揚陸艇(トランスポーター)をも激しく吹き飛ばす。

 ラプター、四神の面々、そして鳳凰に助けられたヴァンスや玲奈、松河たちの一行が、崩壊しかかる埠頭へと次々に飛び降りて合流を果たした。


 砂煙の上がる地面に降り立った彼らを見るやいなや、白雪は青筋を立てて絶叫した。


「ちょっと、あなたたち……! 一体、何しに来たのよっ!? ここは今、人類の存亡をかけた最前線なのよ、危険だから今すぐ離れてっ!」


「何言ってるのよ、白雪。わざわざこんな世界の果てまで、あんたたちを助けに来たに決まってるでしょう!」


「そうそう、白雪ちゃんとナナオ君が拐われたって聞いて、お姉さんたちがほっとけるわけないじゃない」


 鳳凰やラプターたちも、やれやれといった様子でそれに続く。

 そんな緊迫した空気を微塵も気にせず、松河だけは遠くでひしゃげた自身の特務艇を一瞥し、ホッとしたような、しかしどこか嬉しそうな声を上げた。


「まったく、自慢の高速揚陸艇はあそこの埠頭の端っこで綺麗にひっくり返っちゃってるわ。居住区のほうはペチャンコにひしゃげてそうだけど、肝心の船殻(ハル)部分は無事みたいね。さすがワタクシちゃんの神庫重工製、いい仕事してるわぁ」


「船の心配してる場合じゃないでしょ!」


 松河に言い放つと、玲奈は片膝をつくナナオへと駆け寄った。


「ナナオ!あんた、無事なの?」


 近寄る玲奈を目で確認したナナオであったが、腹を抑え片膝をついたままで荒い息を吐き続けていた。


「これは嬉しい誤算だ。巨像の力は代行者にも届くようだな。とはいえ目立った外傷もないが、おそらく腹を揺さぶられたな。ああなるとすぐに立ち上がるにはちょっときついぞ」


 リチャードは、地面に倒れ伏したナナオを見据えて不敵に笑う。

 アイザックもそれに続き満足げにうなずいた。


「それでこその巨像だよ。圧倒的存在感と単純な破壊の力で人々の畏怖を起こす。最低限の破壊で最大限の効果が生まれるんだ。人類が作り出した『疑似太陽』の特殊爆弾よりもよっぽどいい」


 ライプニッツもナナオを見つめながら達観した表情で語った。

 戦局を見守る彼らの余裕は、その場を支配していた。


「――さて、運動会と言ったな。代行者が立ち上がれないとあれば、巨像の使用は差し控えよう。とはいえ、我々は強い。圧倒的にだ」


 リチャードは射貫くような眼で白雪を見据えると、余裕に満ちた声を続けた。


「運動会という枠を受け入れ、巨像を使わないという譲歩を行った。であれば競技は我々が決めたいと思うがいかがかな、お嬢さん?」


「……参加者に平等な内容で、試合に関係ない人へ被害が及ばないなら、受けて立つわよ」


「ルールはこうだ。島の南端から君たちを、我々武人の四名がそれぞれ追いかける。我々と一戦を交え、勝利あるいは条件を満たした者は、そのまま本陣である島の北端のこの港へ向かうことができる。最終的に、この港に到着した者たちが持ち寄った『旗』の数が多い方が勝ちだ」


 リチャードはそう言って、手元に用意された真新しい紅白の旗を軽く掲げてみせた。


「我々武人四名は各自が旗を所持している。道中で相手の旗を奪い、最終的に巨像のあるこの港のゴールへどれだけ多くの旗を持ち帰れるか。それを勝敗の基準としよう。君たちも四組に分かれて、それぞれ自軍の旗を持ってもらう。現状動けないもの、我々の学者たち四名は本陣に待機だ。単純明快にして正々堂々じゃないか」


 運動会という枠組みを利用した、島全土を巻き込む英雄たちとの「旗取り合戦」の提案。それは、古い神話と最新のテクノロジーが入り交じるこの戦場において、あまりにも不敵な宣戦布告だった。


「どこのどいつか知らないけど、うちのナナオに手を出すなんて。やってやろうじゃないの!ここに居る仲間全員で受けて立つわ」

「いいじゃないの。あなたたちを倒したら、白雪ちゃんもナナオ君も返してもらうからね」

「彼我の戦闘力が分からないのに、神崎女史も松河重役もあっさり返事を……白雪君、詳細な説明を頼むよ」


 負けず嫌いの玲奈と松河はあっさりとリチャードに向かって言い放つ。この勢いにヴァンスも白雪も苦笑いで応えざるを得なかった。


いつもご愛読いただいありがとうございます。

火、木、金曜 18時の週3回投稿になります。火木金曜はナナオの日 お忘れなく。

『続きが気になる!』『面白い!』と思っていただけたら、

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