表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/32

強欲なるナルシストと、最強の兄妹喧嘩

黄金の国境線を越えた私たちを見下ろすように、巨大なホログラムの青年が優雅に微笑んでいた。

 私の実の兄であり、この国を支配する『強欲の神』。


『美しいだろう? この黄金の都も、そこに這いつくばる愚民の命も、すべて僕のものだ』


兄は自身の美しい金糸の髪をかき上げ、陶酔したように語り始めた。


『僕は、すべての神の頂点である「傲慢の神」……愛する父上に、最も愛されて生まれた特別な存在だ。だから僕には、この世のすべてを僕のものにする権利がある』

「……気味が悪いほどのナルシストね。他人の命をコレクションして、何が楽しいの」


私が冷たく吐き捨てると、兄は愉快そうに肩を揺らした。


『楽しいさ。でも、まだ足りない。僕は父上を超えたいんだ。父上の至高の力すらも、僕のコレクションに加えなければ気が済まない』


兄の真紅の瞳が、ホログラム越しに私をねっとりと見据えた。


『だからカノン、君の力が必要なんだ。神々を次々と葬り去った君の異常な力と、僕の力を合わせれば、父上にも勝てる。……さあ、僕の元へおいで。君の力を、僕によこしなさい』

「……お断りよ。誰があんたみたいな薄気味悪い男の所有物になるもんですか」

『強情だね。もちろん、君のことはこの国のVIPとして丁重に迎え入れるつもりだよ。僕の可愛い妹にして、最高のコレクションだからね』


兄はそう言うと、ふっと視線を私の背後――セラフィたち四人へと向け、あからさまに顔をしかめた。


『……でも、君の後ろにいるその薄汚いゴミ共は、今すぐそこに捨ててきなさい。底辺の羽なし天使に、野良猫、トカゲ、それに下劣な人間のメス……僕の完璧な黄金の都が、そんな生ゴミの悪臭で汚れてしまう』

「――ッ!」


その言葉を聞いた瞬間。

 私の内側で、かつてないほどの激しい怒りが沸点に達した。


「カノン様、お気になさらず。あのような戯言……」

「主を侮辱したこと、絶対に許さない……っ」


セラフィたちが武器を構えようとするが、私はそれを手で制し、ギリッと大鎌の柄を握りしめた。


「……私の大切な眷属かぞくを、ゴミ呼ばわりしたわね」


私の全身から、周囲の黄金を腐食させるほどの濃密な殺気と魔力が溢れ出す。


「あんたの愛する父上がどうだか知らないけれど。……私に与えられたのは、絶望と孤独だけだった。そんな私を救ってくれたのは、あんたがゴミと呼んだこの子たちよ」


私は大鎌の切っ先を、ホログラムの兄へと真っ直ぐに突きつけた。


「あんたなんかより、この子たちの方がずっと美しくて尊いわ。……そのふざけた口、二度と叩けないように八つ裂きにしてあげる」


私の純粋な殺意を受けても、兄は余裕の笑みを崩さなかった。


『そうか。残念だよ、カノン。僕のコレクションにならないと言うのなら……』


兄が、ホログラムの向こう側でパチンと指を鳴らした。


『無理やりにでも従えるまでさ』


――カッ!!


瞬間、私の足元にだけ、目も眩むような黄金の魔法陣が展開された。


「なッ……転移魔法!?」

「カノン様ッ!!」

「カノン!!」


四人が私に手を伸ばすより早く、私の視界は強烈な光に飲み込まれた。

 強制的な空間転移。圧倒的な魔力差がなければ成立しない、問答無用の神業だ。


次に視界が晴れた時。

 そこはもう、国境の門ではなかった。

 見渡す限りの金銀財宝で埋め尽くされ、壁も床もすべてが黄金で設えられた、悪趣味なほどに豪奢な玉座の間。


そして、私の目の前には、ホログラムではない『本物』の兄が、玉座からゆっくりと立ち上がるところだった。


「……勝手に引きずり込んでおいて、なんの真似よ」

「歓迎するよ、愛しの妹。ゴミ共がいなくなって、ようやく空気が綺麗になった」


兄は優雅に両手を広げ、残虐な笑みを浮かべた。


「さあ、家族水入らずの『兄妹喧嘩』を始めようか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ