表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歩兵隊長は聖女の侍女に恋をする  作者: 黒笠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/123

98 女王の微笑み

 ラデン王国王都リクロ、その中心にある王宮の執務室にて、女王リオナはヨギラス騎士団長からの報告を受けた。

 東部国境付近を荒らす盗賊団について、その砦が危惧していたとおり、バール帝国側にあるのだという。

(さすがに、バール帝国公認、ではないんでしょうけど)

 女王リオナはトントン、と机を指で叩きながら思考する。

 黒騎士や魔獣に苦労こそしているが、バール帝国皇室もそこまで腐ってはいない。余裕があれば、バール帝国自ら駆逐、殲滅しているはずだ。

「そんなところに砦があるなら、ヨギラス閣下、ご自分で殲滅しちゃえばいいのに」

 レビアが口を尖らせる。双子の兄ビアルと交代で女王リオナの護衛任務に就く。

 どちらも屋内戦闘では屈指の腕利きだ。

「良くも悪くも、そういうことをしないのがヨギラスね」

 女王リオナはつい笑ってしまう。

 自分の想い人カート・シュルーダーであればどうか。

(隣国であろうと入っていって、殲滅しておいてから事後処理だけ頼んでくるのかしらね)

 思い浮かべるだけで、自然、女王リオナの口元がほころぶ。

 無表情なまま、堂々と砦の正面から入っていって、容易く制圧してしまうのだろう。

 それを自分は労うだけだ。本当はともに戦ったり、もっと近くでそれを支えたりしたいのだが。女王という立場がそれを許さない。

 何年も前から抱えてきた葛藤だった。

(それなのに今、急に現れた女が、カートの領土でそれをしている)

 皮肉なことに、そのおかげで南東部国境付近、カートの領土エフロー近郊が平穏になっていた。

(むしろ、あちらから侵入しようとしていた者たちが、北へ流れたと見るのが正確ね)

 女王リオナは自然、頭のなかに国境周辺の地図を思い浮かべるのだった。

「外交問題になっちゃうって、そういうお話です?」

 自分相手であっても、年齢相応の口調となってしまうのがレビアだ。矯正しようと思っていた時期もあったが諦めた。

「そうねぇ。でも、あちらの不手際で、我が国に被害が出ているのだから、むしろ、こちらが問題にしてやるべきなのよねぇ」

 女王リオナは告げて、机上の書類に視線を落とす。

 賠償金ぐらいは簡単に取れるだろう。だが、余裕のない隣国を追い詰めて、妙な摩擦を生みたくない。あちらの方が総合的な国力は上なのだから。

(ま、正直、些末な賠償金なんて要らないのよ。そんなことより、こっちよ、こっち)

 女王リオナは1枚を手に取って一読し、2枚目にも目を通す。 

 何度目かになるが、何度目を通してみても同じだ。

(残念ながら、あまり関係はなさそうなのよねぇ)

 女王リオナは内心で嘆息した。

 口には出せない。表情もだ。

 いかに腹心であり気の置けない護衛レビアとはいえ、表に出せる感情ではない。

 日差しが翳った。

「悪い顔をされてますよ?」

 ニッコリとレビアが笑う。

 口調の矯正が出来なかった上、人の感情を読むのが異様に上手い。

「いいわねぇ。あまり競争相手が貴女にはいなくて」

 さすがに少し腹が立って、女王リオナは混ぜっ返してやった。

 だが、レビアの顔色は変わらない。涼しい表情である。

「他の女の人たちに、見る目がないだけですよ」

 あえなくレビアにいなされてしまった。

 思えば別にけんかをしたいわけでもない。不要な軽口だった。

 パターガーとのことだ。恋しているらしい、とかなり早い段階で分かった。

「そもそも陛下は、競争相手がいない内に、決めきれなかったんじゃないんですか?」

 更に腹の立つことを、腹の立つ笑顔でレビアに言われてしまった。

 やり返してやりたいが、先に始めたのは自分の方だ。女王リオナはグッと我慢する。

 尚、本気で怒らせるのなら簡単だ。パターガーの悪口やら侮辱やらでも始めればいい。涙ながらに激怒してしまうことだろう。

 弱冠16歳の少女相手に一国の女王がすることではない。

 女王リオナはため息をつく。

「いよいよバール帝国がきな臭い。まさか、エストさんの不在がここまで大きな結果になるとはね」

 仕方なく無理やりに話題を変えることとした。

(多分、あの国とエストさん、それか御母上の大聖女様とには、何かある。少し、考えを纏めてみようかしら)

 女王リオナは目を細める。

 結果から逆算すればいい。

(魔獣の出現。それは黒騎士がやっている。でも、どうやって?そして、今までは魔獣が出なかった。エストさんがいたから)

 女王リオナは腕組みをした。

(まだ、考える端緒はある。我が国でも修行に出たエストさんが、魔獣を解放した。それも強力なギガンヒッポスを)

 あれもおかしなことだった。

「いい気味だと思います」

 急にレビアの声が自分を現実に戻す。いつの間にか自分の真横に立って、くっついてきていた。

「あら?何が?」

 女王リオナは落ち着いたふりをして微笑むのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ