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歩兵隊長は聖女の侍女に恋をする  作者: 黒笠


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128 回答2

 女王リオナには特別な賓客用の客室を使ってもらっており、話をするときには応接室を使ってもらっている。つまり、国王を迎えるときの対応だ。

 代々の歩兵隊長がラデン王国王族の訪問を受ける時の基本に準じていた。

 そしてティスに使ってもらっているのは代々の夫人の使ってきた部屋だ。本人には伏せている。侍女や執事に口止めもしている。

 この部屋割りすらも1つの、カートなりの意思表示なのであった。

(この御方は、まだ俺のことを。ラデンの伝統に縛られているのか)

 内心でカートはため息をつく。

 英明な君主であることに疑いはない。

 ラデン王国の政務を若くして担わざるを得なくなり、今では貫禄すらも漂わせている。

 本人不在で、聖女エストですら運営できるほど安定している。

(それも、俺への意思表示だな)

 あまりに露骨だから、鈍いほうだと自覚のあるカートですら、薄々と察せられるほどなのだった。

(それにしても、俺は何度も、陛下のお気持ちは、恋愛感情ではないと、申し上げてきたというのに)

 カートとしては、もう解決済みの話題なのであった。女王リオナが王位に就く時にも、似たような話をしているはずだ。

 婚姻の打診すら来ていない。だから、カートもラデン王国の歩兵隊長ではなく、他国の王族を進めるという形で、意思を伝えたのだ。

「ラデンの狂戦士というものを、久しぶりに列国へ見せつけるのもいいのかもしれません。黒騎士とやらを生贄にして、ですが」

 低い声でカートは告げる。

 自分でも、思ってもみない言葉が口から飛び出してきた。

 女王リオナにとっても同様だったらしい。目を見張っている。

「今、なんて言ったの?いえ、聞いたわ。そんな、貴方が狂戦士であることを、自認する言葉は初めて聞いたわ」

 かすれた声で女王リオナが言葉を並べる。

 ラデン王国の開祖となる、かつて勇者、聖女とともに歴戦を重ねた狂戦士の技術をカートは受け継いでいた。

 出来ればあまり、使いたい技術ではない。

「ティスさんが貴方を変えたって言うの?そして、私があの人を追いやったから、その当てつけなの?」

 更に悲痛な声で女王リオナが言う。

 確かに自分はこれまで、女王リオナのために狂戦士としての技術を用いたことはない。

「そうですね、特に何かをティス殿からしてもらえた、というわけではありません。それを言うのなら、陛下にこそ恩義があるのですが」

 自分なりにカートは言葉を選ぶ。

 厳密にはティスからも何もしてもらえていない、わけがない。あくまで長年の付き合いを考慮した、言葉選びである。

「人の気持ちが傾くというのは、何か借りがあって、とかそういうことではないようです。少なくとも、私の場合は」

 今後も、忠義の限りを尽くそうとは思う。歩兵隊長としての責務にも、これまでどおり取り組むつもりだ。

「一目惚れでしょう?ティスさんとは。私は、ずっと貴方と一緒に育ってきて」

 珍しく女王リオナが露骨に顔を歪める。いつもの神々しい無表情を取り繕うつもりもなくなったようだ。

 カートはただその視線を受け止める。

「もし、陛下が回答をお求めになるのなら、俺の回答はもう、定まっております」

 そして静かに宣言した。

 カートは女王リオナからの返答を待つ。

 わなわなと女王リオナが震え始めた。何度も似たようなやりとりを重ねている。

 ここまで徹底的に話をしたのは初めてかもしれないが。

 女王リオナの場合、自身の気持ちに対して応えないからと言って、カートに何か意趣返しをすることはない。

「求めない。まだ、終わっていないから」

 女王リオナが横を向く。

 回答を求められることよりも、厄介な対応だった。

(本当は、終えるべきです。陛下なら、俺等よりもよほど、良い相手と巡り会えるでしょうに)

 男の価値をどこで決めるべきか、カートにも分からないのだが。何をもって自分よりも良い相手で、自分が悪い相手なのかも分からない。

「ラデンの狂戦士は世襲ではありません。俺からして、先代とも先々代とも血の繋がりは無いのですよ。それが、1つの結論ではありませんか?」

 ラデン王国の王族は代々、狂戦士の血を自身の家系に取り組むことに腐心してきた。

(だが、この能力に血が関係ないのだとしたら?何の意味もない伝統と執着に、我々は振り回されていることとなるのです)

 カートはかねてから考えていたことだ。

 意味の無い伝統ならば捨てるべきだ。歩兵への異様なこだわりにも意味が無い。

 だからヨギラス騎士団長にも惜しみなく協力をしている。歴代歩兵隊長のほぼ大半は騎馬隊など粗略に扱ってきたのだった。

「関係無いわね。そんなものは、私たちの関係の、何の回答にもなっていない」

 硬い声で女王リオナが言う。

 恐ろしいほどに冷たい無表情で、立ち上がった。

「とりあえず、エフローはもう、十分ではなくって?私がこの目で見て、この土地にはもう、何も大きな問題は無いと断ずる」

 更に最後通告のように宣言した。

「貴方ももう、ここに滞在する理由はない。王都に戻って、エフロー領主としてではなく、歩兵隊長としての務めに専念しなさい」

 最低限、女王リオナが自ら足を運んだが故に言えることだった。

「かしこまりました」

 カートとしては頷くより他ない。

「心配しなくとも。ティスさんも一般人の身で盗賊団討伐に尽力してくれたんだから。謝辞を述べなくてはね?王都に帰還してもらって表彰式を主催するわ」

 そして女王リオナが不穏なことを述べるのであった。

 

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