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歩兵隊長は聖女の侍女に恋をする  作者: 黒笠


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124 レビアのエフロー滞在2

 恋人と引き裂かれたレビアに対し、長年の恋煩いのまま、女王リオナの方はカートと二人っきりだ。

「首尾よく、あのティスって人を東へ追っ払ったんだから。陛下がこういうことをするのは当然だろ」

 恋をしたこともないくせにビアルが知ったふうな口を利く。

「じゃあ何?ティスさんがいない隙に、陛下はカートさんとどうかなってるって?あんた、本当に下品ね」

 レビアは容赦なく切り捨ててやった。

 慌てた顔でビアルがする言い訳も当然に無視だ。からかってもまったく面白くない。

(そんな簡単に進展するんなら、陛下はとっくの昔にご結婚されてるわよ)

 今もカートに静かな圧をかけるに留まっているのではないか。

 レビアはため息をつく。付き合わされるのにも疲れてきた。幼くして護衛に抜擢されてから、何度も同じことの繰り返しだ。

(あたしって、便利に使われてる。だって、護衛だけじゃなくて侍女さんと同じことも出来るもん)

 どちらかになる方が今よりも良かったのかはわからない。今に至るまでの自分だったから、パターガーとも出会えたのだと思えば仕方がないような気もする。

「こんなことより、どっか気晴らしでも出来ないかしら」

 レビアは呟く。

 結果、ビアルの言い訳を『こんなこと』扱いした格好となる。

「なんだよ。俺にばっかり、いつも当たりがきついんだからな。お前は」

 ビアルがまた文句を言う。

「だって、あんたといても楽しくない。あんたもそうでしょ?エイトンって人と手合わせするなり、巡邏なり、好きにしてくれば?」

 レビアは窓から離れた。

 もう一度、外を見やる。

 ラデン王国にしては珍しい乾燥帯の、少し砂埃が多いエフローの街並みが見えた。

 王都リクロ育ちのレビアにとって、目新しいところもあって、数日は散歩をして気を紛らわせる事もできたのだが。

(でも、平和になった分、退屈かも)

 カートとエイトンの二人で、ゴロツキを一掃したらしい。自分もゴロツキ相手に暴れれば気も晴れたのだろうか。

「どっちも大事な仕事だからな?お遊びみたいに言うなよ」

 ビアルがどうでもいいことを指摘する。

「巡邏はもちろん、腕を磨くのだって護衛の俺たちにとっては大事な仕事で」

 ビアルのだめなところはくどいところだ。

「だから、あんたはもてない」

 もう一度、レビアは言い放ってやった。

「陛下の護衛はじゃあ、お前に任せるからな?ちゃんとやれよ」

 さすがに本当に怒ってビアルが部屋の出口へと向かう。

「別にいいわよ。シュルーダー卿の領土でここはそのお屋敷で。ここにいる限り、陛下は安全だもの」

 レビアは断言し、しっしと手を振ってビアルを追っ払う。

「気は抜くな」

 捨て台詞を残してビアルが去っていく。

 屋敷の警備にも興味を持っている男だから、ここで自分の話し相手をするよりも楽しいだろう。

「何よ、話し相手なんて要らないのに」

 レビアはまた呟く。

 双子の気遣いぐらいは分かっている。パターガーから引き離されて、落ち込む自分の捌け口ななろうとしたのだろう。

「そんなんだから、本当に吐き出される」

 いざ本当に吐き出されて、こうして逆に怒ってしまうのも、御愛嬌だ。

 レビアはゆっくりと歩き出す。

 どこよりもラデン王国で安全なのはカート・シュルーダーの近くである。

(だから、シュルーダー卿とだけは陛下を二人きりにしても良いことになってる)

 ラデン王国の民であれば誰しもが認めている特別扱いなのであった。

(ティスさんって人は、その、陛下だけのもののはずだった、シュルーダー卿の隣という席を奪っちゃった)

 レビアはトコトコと応接室へと向かう。

 それでも一応は安否を確認すべきだ。

「本当に手薄なのは、王都リクロの方なんだけど」

 聖女エストと貴族たちが残るばかりである。突出した実力者がいすれも不在なのであった。

「大丈夫なのかしら?一度は狙われた聖女様を一人にして」

 一度、レビアは女王リオナ本人に直接、質問はしている。

 パターガーとカートが国外に追っ払ったから、大丈夫との見立てであった。

「留守番して、エスト様の方には私が付くのも手だったけど。良い人だし」

 同い年だとも聞く。

 ただ、やはり職務を放棄するのも忍びなくて今に至る。

(ていうか、応接室なんだ。女王陛下、もう勝ち目ないんじゃないかな)

 どこまでも女王リオナに対して他人行儀なカートについて、レビアは思う。

 カート・シュルーダーにとって、女王リオナというのは応対すべき賓客なのであった。

(そもそも、陛下は自分に対して、うんともすんともならない人のどこがいいんだろ)

 ラデン王国の王族が代々、狂戦士の末裔とされる歩兵隊長と婚姻関係を結んできたことは、国民としてレビアも知っている。

(でもさ、そもそも歩兵隊長って、世襲じゃないのに、なんで、王族の人たちって、歩兵隊長との結婚にこだわってたんだろう?)

 レビアにとっては、そこが素朴な疑問なのであった。

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