123 レビアのエフロー滞在1
想い人のパターガーが、姉妹弟子のアニスに詰められている時、当人のレビアはラデン王国南東部エフローにいた。
女王リオナのエフロー訪問に、護衛として同行したのである。
恋敵のティス・メルンストを体よく追っ払い、その隙を突こうという恋愛面での謀略であった。
(まぁ、陛下が訪問すれば、もっと引き締まるから、これはこれで良い面でもあるんだけど)
恋愛ごとをする時にも、絶対に政治を絡めるのが女王リオナの中での鉄則なのだった。
レビアの知る限り、そこを外したことはない。
「はぁぁ」
レビアは客間の窓辺で深々とため息をつく。
女王リオナにとっては、上手く言っているのだとしても、自分にとっては王都を離れるのは余分ごとだ。
まして、南東部エフローには気晴らしになるものが、何もない。観光地でもなく、物資の中継地点としての側面が強い。
(むしろ、陛下の外出時には気が抜けないから、大変。治安、そんなに良くないし)
レビアにとっては、嫌な仕事なのであった。
カートと顔を合わせられるから、無表情なままはしゃぐ女王リオナが羨ましい。
「さすがシュルーダー卿だ。クイッドがいなくても、今度はエイトンって人を見つけて育ててる。あの人もかなり強いよ。とにかくデカくて力が強いんだ」
何やら楽しそうに双子の兄ビアルがウキウキと言う。
「好きね、あんたもそういうの」
げんなりとして、レビアは相槌を打つに留めた。
誰が強いか弱いかなど、どうでも良い。強くても護衛対象を討たれれば、間抜けの極みなのが護衛というものなのだから。
(要は、仕事がちゃんと出来る人かどうかでしょ)
内心でレビアは告げる。
言葉で出さなくとも、ビアルには伝わるのだった。双子だからかある程度、お互いの考えは分かる。
「そりゃ、大事なところは別だろうけど、でも、強い人には憧れるさ。俺も武術をやるし、強い人には少しでも近づきたいと思う」
悪びれることなくビアルが言う。
エフローに着いてからは楽しそうだ。カート・シュルーダーの屋敷運営が、警護の面では参考となるらしい。
時折、見回りをしては楽しそうに語り出すのだった。
「はぁぁ~」
更に深々とレビアはため息をつく。
ビアルの顔を正視する。紫色の髪に、ぱっちり綺麗な目鼻立ちだ。
整っているとは思う。それなりに同世代女子からは人気のある様子だった。そして、男女の違いはあれど双子なだけあって、レビアも顔の造形は近い。
なぜ、パターガーからはいつまでも子供扱いなのだろうか。
「似た顔にそんな変なことを言われるの、気持ち悪いからやめて」
レビアは八つ当たり気味に告げる。
強ければ良いというものではない、と告げたところ、強さも欲しいと返されただけだ。別に変なことではない。それぐらいはレビアにも分かっている。
「なんだよ、それ。ごく普通の一般論だ」
腹を立てた様子のビアルを、レビアは当然にむしする。
八つ当たりで言っただけなのだから、別に論破したいわけではない。
休憩時間なのだ。
基本的には自分かビアルかが女王リオナの傍についていなくてはならないのだが。
「陛下はいいわよね。気ままに自由に出来て。好きな人と今はイチャイチャ」
ボソッとレビアは呟く。
カートと女王リオナがイチャイチャしているかは極めて微妙なところだ。むしろ、線引きをされて距離を取られている可能性の方が高い。
憎まれ口の1つも叩きたい気分なのだった。
「そんなことないだろ。お忙しい政務の合間を縫って、やっと出来たなけなしの時間を、エフロー滞在に充ててるんじゃないか」
ビアルが独り言を聞き咎める。更には無駄な正論をぶつけてきた。
「分かってるわよ、それぐらい」
同じ姿勢のまま、視線を向けずにレビアは返す。
「あたしだって、陛下のお仕事を横で見てるんだから」
更にレビアは加えるのだった。
したいことが今のところ、何もない。時間を持て余してしまう。
「お前の方から先に、陛下のことを非難し始めたから、俺が指摘したってだけだろ」
ビアルがボヤく。
「そんなことを言ってるから、あんたはいつまでももてない」
レビアは指摘してやるのだった。
本当にただの八つ当たりだ。
(でも、当たってるでしょ?)
真面目で冗談の通じないのがビアルという男だ。だから話をしていてもつまらない。
せっかく顔立ちが整っていても口を開けば面白くない。
「言ってみただけ。そんなことも分かんないから、あんたは女の子に人気がないのよ」
レビアは言い放ってやった。
まだ何やら文句を並べてきたが、当然に無視である。
(パターガー様は任務で東に追いやられて。あたしは仕事で南についてこさせられて。なんでこんな羽目に)
東と南。
レビアとしては、2方向へ引き裂かれてしまった。文句の1つぐらいは言いたいのであった。




