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歩兵隊長は聖女の侍女に恋をする  作者: 黒笠


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117/123

117 討ち入り1

 盗賊の籠る砦部分、その入口の前に、ティスは3人で立つ。

 最早、見張りも立てられなくなったのか。

(いいえ、パターガー様が見張りに立つ者から順に仕留めていくせいね)

 見張りに単独或いは少人数で立つ者など、パターガーにとっては格好の獲物だろう。ティスはすぐに気付く。

「さて、始めるかねぇ」

 のんびりとした口調で、そのパターガーが言う。

 既に弓を構えて矢を番えていた。

「了解です」

 クイッドが円盾を構えて、そのパターガーの前に立つ。

「でも、あの鉄扉をどうします?開ける術が無いのですけど」

 ティスは肩をすくめて2人に告げる。

 少なくとも自分は無理だ。単純な斬撃の威力には自信がない。相手が生身なら急所を見つけて斬り裂くのだが。

「なぁに、ああいうのはな、外で守ってる奴がいるから鉄壁なんさ。一方的に攻撃してりゃ、いつかは壊れる」

 そしてパターガーがなんとも気の長いことを言う。パターガー自身の武器は弓矢なのだ。貫くのに向いているとは思えない。

(扉を開けるのに、何日かけるおつもり?)

 口外することはしない。内心で指摘するだけだ。

 もっとも、本当はティスとしては、こんな用務はとっとと片付けたいのである。

(絶対、女王リオナ様がカート様を口説いている。それも私のいないところで。それか悪口を吹き込んでいるか外堀を埋めているか)

 想像すれば、悪い想像には限りがない。

 よって、ティスとしては、とっとと盗賊退治を片付けて帰りたいのだが、一方で盗賊ごときに足元をすくわれて負傷しては目も当てられない、という葛藤の中にいるのだった。

「よしよし」

 パターガーがティスの苛立ちを他所に、矢を放つ。軽く放ったように見えて、矢が風を纏っている。

 ズドン、と聞いたこともないような音が響く。

 立て続けにパターガーが風を纏う矢を連射し始めた。目にも留まらぬ動きで矢を番えては放つことを繰り返している。

(嘘でしょう?)

 味方のティスは舌を巻く。

 ただ速射しているだけではない。正確に同じ場所に矢を当て続けている。

 とうとう何本目が鋼鉄の扉に突き立つ。そして、そこにもまた正確に矢を当て続けて、何本目かでヒビが走った。

「ま、こういうことなんさ」

 パターガーが軽く言い放つ。

(一体、どういうことなんです?)

 ティスは言葉を飲み込む。

 結果的には上々だ。ただ入り口を作っただけではない。中の盗賊たちには恐怖も抱かせることが出来たはずだ。

 少なくとも自分なら怖い。

 パターガーが弓を引き絞り、もう一矢を放つ。

 重苦しい音ともに、鋼鉄の扉が砕けて鉄片が飛んだ。

 パターガーの神業など当然のような顔で、クイッドが円盾で鉄片を払いながら、砦へと侵入する。中から何人かが剣で斬り掛かってきた。

 応戦するクイッド。

 一呼吸遅れて、ティスも駆け込んでいく。内部は広間のような作りになっていて、奥には十数人が固まっている。

(首領もあの中ね)

 ティスはちらりと見て取った。

 手頃なものから短剣を振り回して斬り倒していく。

「待てっ」

 即時に2人を斬り倒したところ、焦ったような声が響く。

 ティスはクイッドの背後にまで飛び退いた。

 無防備に盗賊たちの前に姿を晒していたくはない。制止すらも罠かもしれないのだから。

「私はバール帝国西部方面軍の将校ギャフォードだ。ここは軍の砦である。何者だ、お前らは」

 盗賊なのだから盗賊と名乗れば良いところ、中心にいる男が軍人と名乗ってきた。確かにバール帝国の軍服を身に纏う、引き締まった体格の男ではあるが。何のために鍛えたのだろうか。

(まさか盗賊をするため?)

 服装や風貌からはどこか荒んだものをティスは感じた。袖口など細かいところにほつれや汚れが目立つ。髭も少し伸びていた。

「盗賊の頭の間違いでしょう?みすぼらしい風体で、よくも軍人を名乗れますこと」

 よってティスは皮肉たっぷりに応じた。

 性懲りもなく物陰から斬りかかる者がいる。ティスは身を躱して斬り倒す。

「誰が盗賊だっ!馬鹿にするなっ、女っ!」

 くわっと目を見開いてギャフォードが叫ぶ。

「私は盗賊を偽装し、仮想敵国から物資を頂戴していただけだ」

 胸を張ってギャフォードが言う。

 盗っ人猛々しいとは正にこのことだ。ティスは呆れてものも言えない。

(同国人にこんなのがいただなんてね)

 デズモンド皇太子やアニスにも同じことを言うつもりなのだろうか。さすがに処断されるだけだろう。

「なら、そのラデン王国から報復されても文句はねぇな?仮想敵国だと?うちがか?どれだけ助けてやったと思ってる?或いは流れてくる魔獣どもの件。どれだけ大目に見てやってると思ってんだ?あぁっ?」

 パターガーが言葉を尽くして怒りをぶつける。

「貴様ら、ラデンの者か。なら、話は早い。私を討てば、バールへの宣戦布告となるぞ。とっとと尻尾を巻いて帰るがいいっ!」

 しかし、かえってパターガーの怒りに油を注ぐようなことをギャフォードが喚くのであった。

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