表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歩兵隊長は聖女の侍女に恋をする  作者: 黒笠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/123

105 合流2



 かなり北上してきた。

 乾燥帯で丈の低い木の多かった、エフロー近郊から気候もかわり、緑のの多い土地柄となる。

 それでも引き続き街道は歩きやすく、賊徒の気配もない。視界の端には長閑な村々が見えるようになった。

(今度は女王リオナ陛下の統治のおかげなのかしら)

 カートの領土を離れてなお、平穏であることは変わらない。これは国土を一貫して、女王リオナの統治が行き届いていることを意味する。

 悔しいがティスとしても認めざるを得ない。

「これも、女王リオナの統治の賜物なのね」

 ポツリとティスは声に出して呟く。

 浮ついていた。今も浮ついている。

 カートに見初められたが、女王リオナの想い人であった。なんら問題のない統治者と取り合う格好になっている。

(でも、カート様に、そんなつもりが無いように思えるから、私だって)

 乗せられてしまうのもしょうがないではないかと思う。

(それは、傍から見れば、なんてところに、割って入ってるんだって、そうなるんでしょうけど)

 まして、亡命当初には分かるわけもない。

 この国を知れば知るほど、似合いの2人と思えてならなかった。

(私も退くつもりが、もう無いから)

 どうしてもカートからの視線には意識させられてしまう。気遣いの一つ一つも優しく、想いを寄せられていると。

 女王リオナの気持ちも理解は出来るが気に入らない。

(私以外の女性にも、こんな陰湿なことをしてきたのね)

 非の打ち所のない、統治の手腕とは裏腹に、恋敵への行いは褒められたものではないようだ。

 侍女ルルから聞く限り、似たようなことをされて、カートへの思いを断ち切った女性が後を絶たなかったとのこと。

「そろそろ、目的地かしら?」

 山の間に広がる、こんもりと森が見えた。

 ランパートの森だろう。カートとの出会いの場所だ。

「あっ、ティスさんだ。ご無沙汰してます」

 街道と街道の交差点、二人の男が待ち受けていて、うち1人はクイッドだった。金髪で秀麗な若者だ。

(エスト様の護衛は終わったのかしら。つまり、エスト様も今は王都かしら?)

 ティスは無邪気に手を振るクイッドを見て思う。

 エストの方が女王リオナとの折り合いが良い。一人でも問題なく過ごしていることだろう。

「マジかよ」

 もう1人は細身の長身、パターガーだ。

 ともにカートの腹心の部下だ。

(別に、カート様抜きでもこういう人たちもいるんだから、問題ないってことだとも思うけど)

 2人を心強く思うがゆえに、かえってティスはそんなことを思う。

「ご無沙汰しております。パターガー様もクイッド様も」

 微笑んでティスは頭を下げる。

 心強くはあった。ランパートの森やサカドゴミムシダマシとの戦闘で、ティスも2人の力量は把握している。

(盗賊ぐらいなら。特にパターガー様なら)

 ティスはほっと胸を撫で下ろす。

 おそらく、女王リオナも盗賊を看過するつもりはないのだ。一方で自分への嫌がらせの機会も見逃さない。

「女王陛下からの指示書にあった増援って、ティスさんだったんですね」

 クイッドが自分をまじまじと眺めて告げる。

(ちょっと、この子は)

 いかにも率直な少年兵士らしい所作だが、クイッドのこういうところがティスは苦手だ。

 無遠慮なのである。

「あんまり、女性をジロジロ見んな。助平小僧め」

 パコン、とパターガーがその頭を叩いて戒める。

「あんたも大変だなぁ。陛下のこったから、とは思っていたが。そのまさか、か」

 自分に向き直って、パターガーが言う。

 普通、増援となればこの2人にとっては、カートの部下なのだから、自身たちの上司が来ると考えるのが普通だ。

(パターガー様は切れ者だものね)

 女王リオナの嫌がらせぐらいは予測できていたようだ。

 ティスはもう一度、頭を下げる。

「我々3人だけですの?盗賊というのはどれほどのものなのでしょう?私には全く、知らされてないのです」

 にこやかにティスは告げた。

 パターガーとクイッドが気不味そうな表情を浮かべる。

 やはりこの2人には詳細な情報が渡されているのだ。

(やっぱり、私の方はただの嫌がらせで、討伐の本命はこの2人ということ?)

 ティスはなんとなく、女王リオナに自身の武芸が評価されているとは思えないのだった。

「あー、俺たちには、盗賊は山寨に立て籠もっていて、それもバール帝国側らしいんです」

 そこまではティスも知っている。

 クイッドの説明に頷いてみせた。

 今度はパターガーが口を開く。

「数百って、聞かされているよ。まだ数字は確認中だが、かなり正確だと思う」 

 たった3人で正面から挑んで勝てる数字ではない。

(パターガー様次第かしら?腕利きなのは雰囲気で分かる)

 直接、強敵との戦闘を見たことはなかった。

 だが、動きの1つ1つから伝わってくる。

「誰かさんは私に死んで欲しいのかしら?」

 笑顔のままティスは呟く。

 パターガーとクイッドも否定しづらいようだ。

(まぁ、たとえ数百だろうと、やりようはあるのだけれど。時間がかかるかしら)

 ティスはため息をつき、カートの顔をつい、思い浮かべるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ