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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 万貴三三
第四章 生まれ廻りて集いし混沌
248/250

十数年停滞してたヴァラド前線は次第に衰え、やがて消えるそうです 5

魔法の街灯により、煌びやかに彩られた夜の街


笑い声、グラスを打ちつけ合う音、人々が行き交う足音

様々な雑多とも言える音を響かせる


その中に混ざり、一組の集団が街の中を歩いていた


「目立ちますね」


「うん」


慣れ親しんだ街にも関わらず、向けられる好奇の視線


耐えきれずトローネが呟くと、フィリアも頷く


その理由は彼女達の後ろにあった


「スゲェ! MRAだ!」


「見た事ないけど、どこのだ?」


「あの人・・・フィリアちゃんとセドさん連れてるけど、誰だろう?」


背後から聞こえる威圧的とも言える金属の擦れ合う音に混じって、民衆の声が耳へと入ってくる


6機のMRAに街のヒーローを2人も連れた男性の姿は、さぞ民衆の目を惹くことだろう


「リーゼ、甘いものでも食べるか?」


だが、そんな視線を向けられた当の本人は気にするそぶりを見せない


甘味を売っている屋台が目に入ると、懐から財布を取り出しながらリーゼへと訊ねている


豪胆

それが、彼の姿を見たフィリアの脳裏に浮かんだ2文字


「お義兄様はどうしますか?」


屋台に目を向けていたリーゼが、セドに顔を向けてそう言うが、彼はあまり気乗りでは無かった様だ


ただ一言だけ断りの言葉を発する


「・・・俺は、いい」


「そう・・・ですか・・・」


彼らの壁はまだ、厚い


リーゼは、力無く目尻を下げ、視線を彷徨わせた


その視線の先に口を結んたトローネの姿を見つけ、慌てて口角を上げて微笑む


「トローネは?」


「あっ・・・私は・・・」


リーゼの気遣いに気付いた彼女は、僅かに慌てながらも屋台へと目を向けた


何か無いか

そう思い目を通していく中でとある物が目に止まる


「・・・っ! これにします!」


「これ・・・、わかったわ」


指を刺した品を見た瞬間、リーゼは目を見開くが、すぐさまトローネへと微笑みかけ商品を購入した


店員から渡された品を見て、トローネは小さく笑うとセドの前まで行く


「熊?」


フィリアが目を向けてみると、彼女の手には3体の熊が手を繋いだ焼き菓子があった


それの1体分を割るとセドへと差し出す


「はい、師匠!」


「いや、俺は・・・」


断ろうとした

だが、屈託のない笑顔を前にして、セドは小さく笑ってしまう


ゆっくりと手を伸ばし、差し出された焼き菓子を受け取る


「・・・ありがとう、トローネ」


「えへへ」と笑うと、今度はソガラに渡す


「おや、ワシにもかい?」


「はい!!」


「ありがとう」


そう言って、彼は渡された焼き菓子を受け取ると、口に含む

焼き固められた生地を小気味良い音を立て割ると、口の中に甘く茶葉の芳ばしい香りが広がる


「美味しいよ、ありがとう」


無意識に上がる口角のままに、ソガラがトローネに礼を言うと、彼女はまた屈託のない笑顔を浮かべ熊の焼き菓子を頬張る


「ところでトローネ、私のは?」


「んぐっ・・・!?」


その一言に焼き菓子を喉に詰まらせかけたのか、彼女は咳き込むと微笑むリーゼへと顔を向けて頬を掻く


「あぁ・・・あはは・・・」


「忘れてたでしょぉ!」


両手のひらで頬を潰されて前後にグリグリと動かされ、まるで大福の様に形を変えていく


細まった唇から「ぎょ、ぎょめんなひゃぁいぃ!!」と楽しげな悲鳴を上げる姿に、皆の表情が明るくなる


「良い弟子を持ったな」


「ええ、俺には勿体無いくらいですよ」


ーーあっ・・・


そんな2人を見て、フィリアは表情に出すことなく気がつく


ぎこちなさの消えた親子の姿だと


今はまだ、幾らかの距離はある

だがーー


ーーすぐに、戻れそう


きっと、この4人が揃っているなら、親子としての姿を取り戻せるのだろうと確信を持って思えた















「アサマトウヤは来てないんですか?」









「・・・っ!?」


投げかけられた問いに皆が視線を向けて目を剥く


セドとソガラの背後

そこに立っていたのは1人の少年


「っ!? 貴様・・・!」


ワナワナと震える拳を握りしめながら、セドは眉間に皺を寄せ全身から闘気を溢れさせた


「お義兄様・・・その子供は・・・?」


「師匠、どうし・・・た・・・」


言い掛けた時、リーゼとトローネは少年から発せられる魔力に覚えがあるのに気がつく


忌々しき、あの時の記憶


「あ・・・あぁ・・・!?」


思い起こされる学園での記憶に、2人の顔が歪み、手が震え息が粗くなる


そんな2人の姿に少年も気が付いたのか、にこやかに微笑むと手を振りながら声を掛けた


「あ、もしかして・・・お久しぶりです。生きてたんですね」


その時、風が強く吹き荒れた


轟音と共に振られた拳が少年の身体を最も容易く殴り飛ばす


響く衝突音

突然の事に民衆は驚き悲鳴を上げるが、セドは構わず声を張り上げた


「テッラァ!!」



街中に響く怒声


暫しの静寂が周囲を包み込んだ



何事かと、ただならぬ様子を感じ取り周囲にいた人々も視線のみを向けた


だがーー


「痛いじゃないですか」


声と共に少年の身体が浮き上がる

黒い、紐の様な物で身体を支えて空中でゆっくりと身体を起こす


「挨拶しただけなのに・・・酷いよ!」


起こされた身体が膨れ上がり、全体的に丸く内側から生えてくる夜闇に紛れてしまう程の黒い腕の様な毛を生やした怪人の姿へと変貌する


「まぁいっか!」


怪人は嗤う

周囲の人間達が恐怖する様を楽しむかの様に


「それじゃ、自己紹介するね!」


怪人は胸を高鳴らせる

果たして彼は来てくれるのかと、生娘の様に


そうして、息を吸うと高らかに名乗りを上げた


「僕テッラ! よろしくね!!」


その言葉と共に周囲に怪人達の姿が現れた




黎明の夜が始まる

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