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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 万貴三三
第四章 生まれ廻りて集いし混沌
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光陰流水さりとて火はまた灯る 8 終


爆発を見届けながら、落下する


解除されたフォトンモードの消えていく光に包まれ、灯夜は地面へと降り立った


ーー取り敢えず、ひと段落


そう思い息を吐くと、肩の力が抜ける


はたと空を見上げると、快晴が広がっており事件の終わりを象徴しているようだった


それを見ていると思わず、灯夜の心も清々しいものになる


「灯夜」


そうしていると、声が掛けられた


自身の為に身を挺してまで動いてくれた少女の声


顔を下ろし、彼女の顔を見つめながらスーツを解除する


淡く輝く粒子となって消えていく残滓の中で、いつもと変わらない姿で薄く微笑む


ーーあぁ・・・いつもの灯夜だ


その表情を見てフィリアは安堵する


いつもと変わらぬ灯夜の姿に


だからこそ、彼女も優しく微笑み呟く


「待ってた」


「待たせてすみません」


温かな感情が、胸を埋めつくす


待ってくれてる人がいる

それだけで帰って来て良かったと思えてしまう


ーーあなたの事が、大切だから


不意に思い出した。あの時の言葉


始めは脳裏を過り

もう一度思い出した時には、意識してしまう


だからかも知れない


いつも無表情な彼女が不意に見せた薄く湛えた微笑みがーー


胸を高鳴らせるのは



「・・・っ!?」


顔が熱くなる

自分でもわかる程に顔が赤く染まっているのだと、恥ずかしくなってくる程に


ーーあれ、あれ・・・!?


以前とは違う

笑顔に見惚れた。では無い


心が踊る感覚


今までの自分達が経験した事のない感覚に困惑する


「どうしたの?」


目元を拭いながら、不思議そうに尋ねてくる

その姿に想いが昂まっていくのを感じた


意図せずとも口元が緩む

それを恥ずかしく思い、必死に隠そうと顔を背けた


「あぁ、いえ・・・!? その・・・なんでも・・・無いです・・・」


我ながら酷い言い訳だと、灯夜は思う


不思議そうに小首を傾げるフィリア

その姿だけでも、愛おしく感じてしまう


「久しぶりの再会で・・・その恥ずかしくなっただけですよ・・・」


言い訳に言い訳を重ね、何とか彼女の意識を自分の行動のおかしさから逸らそうとした


そんな彼を見て、彼女は小さく笑う


「そっか・・・」


見苦しかっただろうか、おかしかっただろうか

不思議な程、不安になってくる気持ちに、答えるようにフィリアは言った


「おかえり」


返ってきた言葉に、思わず息を呑む


彼女の元へ帰って来たという充足感が、灯夜の心を満たしていく


「ただいま」


このかけがえの無い日常にまた戻って来れたのだと


その幸福感に浸るのだ


















ーーその頃、王都では



フィリス・F・フェイルは多忙である


よく王女とは何をやっているのか

そう問われる事があるが、意外と彼女の仕事というのはやる事が多い


第一王女だからか

長兄である第一王子の仕事の補佐

国内外問わずの視察

他国大使との会談


ただサインを書いてるだけと言われる事もあるが、ただサインを書くのですら責任感が問われる


書類の山に忙殺されようとも、一枚一枚を丁寧に確認せねばならない


「バスティ、この新型量産機開発計画・・・少しコストが嵩みすぎじゃないかしら?」


だが、彼女はそれを苦とは思わない

これは王族として生まれた自身の責務なのだと考えているからだ


傍らに控えた老執事に尋ねると、彼は美しい程の直立不動で答えた


「確かにそうですが、新型機の性能向上による開発コストの増加、新技術に関する安全性の確認を行うと思えば適切かと」


「なるほど、確かにあなたの言うとおりね」


軽快な音が響き書類に名前が刻まれていく


何も変わらぬ彼女の日常


しかし、その日はひとつだけ違う事が起こった


執務室の電話が甲高い音を立て鳴り響く


「はい・・・はい、わかりました。変わって下さい」


「どうしました?」


書類にサインをしながらも、電話に出た老執事に尋ねてみる


だが、彼の答えに思わず心臓が飛び出ん勢いで反応する事になった


「何やらお話ししたい事があると、セドさ・・・」


突風が吹き荒れる


何事かと目を白黒させる老執事だったが、直後にフィレスが持ち得る身体能力を用いて自身の元まで来たのだと察した


握られていた筈の受話器が、既に彼女の手元にあるのを見て、心底呆れ返る


「お兄様? あなた様からご連絡していただけるなんて珍しいですね」


本音を言えば、煩わしいとも思える執務の最中に掛かってきた想い人からの電話に、胸を高鳴らせる


『あ、あぁ・・・まぁな・・・』


「ふふ、それでご用件の方は?」


返ってくる一声に思わず声が弾む

要件は何か、まさか声が聞きたくなったのかと妄想を膨らませる


だが、返って来た答えは厄介極まりない物だった


『灯夜が・・・初代勇者の生まれ変わりだった』


「・・・はい?」


暫しの沈黙の後、ようやく絞り出せた言葉がそれだった


幾ら想い人とは言え、一体何を言ってるのかと、思考がぐるぐると絡み合い毛玉の様にしっちゃかめっちゃかになる


「お兄様、頭でも・・・」


『打ってない・・・まぁ信じられないだろうが・・・うん、兎に角だ、生まれ変わりだというのはデアテラ様もお認めになられていた事だ』


この世界の主神である

女神デアテラも認めた


その言葉がトドメとなる


口を小さく開き、ただ茫然と虚空を見つめ思考が止まった


『まぁ・・・そういう事だ、すまん、また連絡する。その時に仔細を詰めよう・・・』


彼女の状態を想像出来たセドは、それだけ伝えると電話を切った


単調なツーツーという音が聞こえてくる中でフィレスは立ち尽くす


「あの・・・姫様・・・?」


彼女の異変に気が付いた老執事は、慌てた様子で問い掛ける


しかし、フィレスは言葉を返す事なく、そっと受話器を戻すとゆっくりと席に座り直した


嵐の前の静けさ

そう形容しても良い程の静寂


故にだろう

老執事は嫌な予感を覚える


そして、期待に応える様に嵐は吹き荒れた


「もう、やぁーーー!!?」


「ひ、姫様!?」


椅子に背中を預けバタバタと手足を動かす


普段は瀟洒で気品を漂わせる姿をしている彼女ではあるが、時として限界が来る時もある


その結果が幼児退行であった


「なんでお兄様の周りにはこうも色々と集まるんですか!?」


国内最強の冒険者オータム

トランセンドの王子エオーネ・ストレングス

和国暗部の次期当主である雨宮雫、その護衛の里晴茜


最近ではそれに前魔王の娘であるフィリア・リースという情報が追加されたばかりだと言うのに


ここにきて初代勇者の生まれ変わりも追加である


「姫様、どうか落ち着い・・・」


「これが落ち着いていられますのー!?」


情報の容量過多

如何に想い人であるセドの言葉とはいえ、もう頭が破裂しそうである


「もうやーなのやー!!」


主の錯乱

何度も見て来た光景ではあるが未だに慣れず

老執事は狼狽えるしか出来なかった


一言で言うのであれば正に混沌である


そんな混沌に包まれた執務室に、軽いドアを叩く音が3度聞こえた


「や・・・んん、どうぞ」


直後、フィレスは先程の取り乱した雰囲気から一転していつもの王女としての姿に戻った


その様子に老執事が胸を撫で下ろすと扉が開かれる


「失礼します・・・愚息がまた、何かしましたかな?」


入って来たのは初老の男性

服の上からでもわかる程の鍛え抜かれた筋肉をした彼は、フィレスへと小さく笑いかけた


「よく来てくださいましたね」


「いえいえ、姫様のお呼びとあらばどこへでも


ーーして、此度は何用で?」


鋭い眼差しがフィレスを射抜く


ーーわかっている癖に


重苦しい圧が執務室内を支配するが、フィレスは涼しげな顔で男性へと笑いかけた


「あなたにはとある方の様子を見て来てほしいのです」


「ほほう、その者に姫様はご執心な様子で」


「えぇ、私としても早く元の地位に戻っていただきたいので」


無論、それは個人的感情のみではない


この国の未来に於いて、外交的な優位性を確保する為に必要な事でもあった


だがーー


「それと、もう1人気になる方がいたので調べてほしいのです」


ここに来て現れたイレギュラーに、もうひとつ"お願い"を増やさざるおえなくなった


その言葉に男性は暫し考え込む仕草を見せる


「ふむ・・・承りました。して、件の人物達の名前は?」


彼の言葉に口角を上げ、待っていたと言わんばかりの様子で答えた


「1人はアサマトウヤ、もう1人はーー



ーーあなたの息子、セド・ヴァラドですわ」


その儀礼的な言葉に男性

ソガラ・ヴァラドは小さく笑った

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