光陰流水さりとて火はまた灯る 7
サプラーーイズ!世界中がーー!
これ以上はやめておこう
新たな装い
青色のスーツに水色の魔力布と色はフェニックスと同じだが、スーツのデザインが全体的に鋭角的な見た目となっており異なっていた
ーーこいつ・・・
そんな新たな装いに、ウツツは警戒する
「ハァイ、トウヤくん・・・またスーツのデザイン変えたんだね」
だが、そんな様子を表に出すことはない
冷静な姿こそ、8大罪の姿であり、相手に圧を与える効果的な手段であると知っているから
ーーなに・・・?
しかし、そんなウツツでも流石に違和感を覚える
確かに存在しているはずなのに、灯夜のほんの僅かな動きがまるで夢、幻の如くブレて見えていた
何かがおかしい
そんな疑問はあった
だが、胸の奥にしまい込む事にした
どんな手を使おうとも、自分達の優位性は覆らない
そう信じていたからーー
「クヒッ」
だってそうだろう
これだけの数に囲まれてどう対処するというのかと
侮り嗤う
「やれ」
その号令と共に1体の怪人が灯夜へと迫る
振り上げられた鋏が、彼の身体を粉砕せんと風を裂き振り下ろされた
相対する灯夜は反応出来ていないのか、微動だにすらしない
「灯夜!!」
悲痛な叫びを上げるフィリアだったが、もう遅い
笑みを深め、ウツツは打撃音が響くのを待った
そう望んでいたが故に目の前の光景に唖然とする
灯夜の姿が怪人の背後にあったからだ
ーー残り98m
「え・・・?」
視界にほんの一瞬映ったあの時と同じ残影の列
音も風も感じなかった
「あ・・・」
それなのに、か細い声を残し怪人は光に包まれ爆散し、光が解かれた後には怪人がいたという痕跡だけが取り残されていた
ーー認識出来なかった・・・?
攻撃をした"過程"を認識する事は出来なかった
それなのに手首から肘に掛けて展開している光の刃で切り裂いたという"結果"のみを、後に察する
「何が起こった・・・」
それは、この場にいる怪人達の抱いたものだった
理解が追いつかない
思考が空回りする
やがて、湧き上がる疑問が理性の器を満たそうとしていた
「ハッ・・・ハッ・・・」
緊張から顔が強張り、呼吸が浅くなりーー
疑問は形をそのままに、恐怖心へと変わっていき溢れ出す
「おお・・・おおおお!!!」
誰が言い出したのかはわからない
ただ、雄叫びを境に怪人達は灯夜へ向けて一斉に攻撃を行う
殴り掛からんと迫り、味方に当たろうともお構いなしに拳銃を撃ち放ち、水流カッターで引き裂こうとする
錯乱、混乱がこの場を支配した
そんな怪人達を前に、僅かに残影を生じさせながら灯夜は構えを取る
『METEOR… ACTIVATE! 』
機械音声が鳴り響くと、灯夜の姿が再びーー
消えた
可視光線すら押し除け、同時に現れた残影の列が怪人達を切り刻む
屋根の上、建物の影
立ち向かおうとした者、逃げ出そうとした者問わず
その尽くを切り裂いた
0.00000000333564095秒
それが、彼が1m進むのに必要な時間であり、その光と同等の速さに誰も追従できない
「な・・・に・・・」
出来ないまま
切り刻まれた
ーー残り60m
「これ・・・」
ウツツの目には瞬きをする間も無く、眼前に灯夜の姿が現れたように見えた
まるでフレームを切り抜かれた映像のように突然
だが、違う
一瞬現れ消えた残影の列から、確かに怪人達を切り裂いたのだと認識させられる
次の瞬間、怪人達は同時に光の膜に覆われると爆散していく
32体
それが今回駆り出された怪人の残数
一瞬で爆煙だけを残して消えた怪人の数ーー
「何よそれ・・・なん・・・で・・・!?」
目の前の光景を信じられず、首を振るい否定しようとする
だが、突きつけられた現実は変わらない
光の如く、走り、切り刻まれ、
その光景にひとつの結論が脳裏に過ぎる
「まさか、光魔法・・・?」
初代勇者にしか扱えなかった魔法
それが目の前で使われたのだとーー
認識した瞬間、身体が震えだす
「あり得ない・・・なんで・・・」
何故この男が使っているのかと
残影を作りながら顔をゆっくりと向けてくる姿に、
生存本能がけたたましく警鈴を鳴らし告げてくるのだ
ーー今すぐ逃げなければ
身体が自然と後ろへ下がり、遂には理性のタガが外れた
「やだ・・・やだぁ!!!」
足が絡まり合いうまく走れない
だが、無理やり身体をバタバタと激しく動かし、なんとか灯夜から離れようともがく
そんな彼女の逃避を否定する様に、彼はゆったりと近付く
「来るなぁ!!」
叫び、腕を振り乱すと、指先が離れた
離された直後は団子状に、その次の瞬間には小さな人形へと変貌し灯夜へと襲い掛かる
だが、最も容易くそれは切り裂かれた
その間にもウツツは逃走を続けた
「逃すか・・・!」
声を荒げると彼はブレスレットを再度擦り合わせた
『METEOR… ACTIVATE! ALL POWER—FULL RELEASE!』
機械音声が高々と声を上げ、安全装置が解除される
ミーティア
流星の名を冠した術式が、臨界まで魔力を供給されたことにより光輝く
ーーマズイ
明確な死が光輝いているのがわかり、鼓動が更に早鳴る
どうにかしなければと思い、周囲を見渡す
ーー何か、何かない・・・
「え、これ・・・」
そこで声が聞こえてきた
戦闘音を聞き、何事かと無用心にも見に来た住民女性の姿
その姿にーー
思わず、ウツツの口角が上がる
身体をスライム状へと変化させると、女性を身体の内側へと取り込む
「この女の命が惜しかったらーー」
迸る閃光
視界を眩い光が覆ったかと思えば、ウツツは全てを言い切る事すら許されず
身体を細切れにされる
「なっ・・・!?」
目の前には光の刃を構えた灯夜が、先ほど取り込んだ筈の女性を抱き寄せていた
何が起こったのかと、目を白黒させる
だが、そんな思考は一瞬で掻き消された
「・・・っ!?」
突然、腹が歪み衝撃が走る
身体の再生もできないまま
勢いだけ
ただそれだけで、視界が暗転し、身体が削られていく
ーー何が、何が・・・っ!?
喋れない
言葉を発する為の部位が欠落している
周囲の景色を見ることも、身体すら動かすことも出来ない
故にウツツは認識出来ない
自身が街の遥か上空に打ち上げられた事をーー
ーー0m、ミーティア稼働限界距離突破
『Meteor Execution‼︎』
遥か下から空を割く流星の姿を、目にする事は無い
「セイヤーー!!!」
「ーーー!!」
打ち上げたウツツの擬似核を、巨大な光刃が両断した
『Breakout‼︎』
その瞬間、街の上空で星が瞬きーー消えた
何が起きたのか、誰にも理解させぬままに
次回エピローグ回!
それで37話終了です!




