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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 万貴三三
第四章 生まれ廻りて集いし混沌
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生誕祭 5 終




ーーみんなを守らないと


自分が消えていなくなる

燃えて喰われて殺されて


内側から湧き出る使命感を持った意思達が自身の身体を操ろうと蝕んでくる


ーー制御出来ない


自身の意識が薄らいでいく

身体の支配が奪われる


何とか奪われまいと必死に抵抗するが、それでも敵わずトウヤの意識は霧散して闇へと消えた








浅間灯夜が行方不明になってから1週間の時が流れた


未だに彼は見つかっていない


あれから街の様相は何も変わっていない

無情とも思える程にトウヤが消える前と同じ、いつも通りの姿を見せていた


「トウヤくんどこいったんだろう・・・」


「南区は隈なく探し回った筈だけど、どこにもいなかったしね・・・」


そんな日の夜

いつものバーエオーネでフィリア達は集まっていた


その雰囲気は少しばかり重く暗い物で、今もこの場にいないトウヤを想い茜と雫は心配そうに声を漏らす


もう1週間、されどである


「フィリアの方は何か手掛かりでも見つかった?」


「・・・ダメ、何もわからない」


トウヤが姿を消した後、兎にも角にも人手がいると考えたフィリアとセドはいつものバーに集まるメンバーに協力を仰ぎトウヤを探していた


だが、西南北、其々の区を探し回ったが収穫はゼロ

彼の姿が発見出来ないどころか、目撃情報などの痕跡すら見つけられなかったのだ


あの時のトウヤは普通では無い

異様な程に身体が膨れ上がり、姿形は人とは違う異形と言っても差し支えのない姿になっていた

だからこそ、少しくらいは情報があるだろうとは思っていたが


それなのに幾ら夜間とは言え目撃情報すら見つからない


ハッキリ言ってこれは異常だ


「トウヤ・・・どこに・・・」


あの時、彼の心配よりも恐怖が勝ってしまい、抑える手の緩みを止めることができなかった


もしもあの時力を緩めなければと、手を離さなければと、この1週間フィリアが後悔しない日は無い


目の前で手がつけられず、すっかり冷め切ってしまったお茶を眺めながら、その水面に浮かぶ自身の顔へと責めるように自問自答を繰り返す


「フィリア、焦って自分を責めちゃダメよ」


「・・・うん」


心配するエオーネの言葉に彼女は心ここに在らずと言った様子で返事をする


どうしたものか

トウヤの情報が何か見つかればと、皆思わずにはいられなかった


そんな時だ

店の扉が鈴の音を鳴らしながら開かれたのは


顔を向けてみればオータムとセドが店の中へと入ってきたのがわかる


彼らは東地区での捜索を行っていたのだが、一言も喋らずに入ってくる様子から聞く前から答えは察せた


「どうだった?」


「すまない、こちらはさっぱりだ」


わかりきっていた答えに落胆する事なく、ただそうだろうなと諦観の念が溢れる


彼らが帰って来た事で東西南北全ての地区の捜索は終わり、トウヤに関する手がかりは何も無いのだという事実だけが残った


これだけ探し回ってもいないのであれば、きっと彼はこの街にはもういないのだろう


だとすればどこに行ったのかと、そう頭を悩ましかけた時だった


フィリアとセドの無線に通信が入る


こんな時に何だと、若干の煩わしさを覚えながらも通信に出るとゼトアの遠慮した声が聞こえて来た


『セドさん、フィリアさん、こんな時にすみません・・・怪人が出現しました』


「・・・わかった。どこに出現した?」


『南区5番地です。行けますか?』


こちらのことを心配しているのだろう

そう問い掛けてくるゼトアだが、これは行けるか行けないかの問題では無い


「俺達が行かないで誰がやるんだ、心配するな、すぐに向かう」


『お願いします』


自分達がやらねば誰がやる

篝野も祝祭以降姿を見せてない、だからこそ、セド達がやらねばならない


トウヤの事を探したいがそれとこれとは別である

寧ろ、怪人を放置したとなっては顔向できない


「フィリア行くぞ」


「・・・うん」


彼の言葉にフィリアも返事をすると立ち上がり店を後にする




果たして、危機的な状況に陥っているトウヤを放ってまで他者を助ける必要があるのだろうか、そうまでしてヒーローとして戦う意味はあるのだろうか


ーーこいつ魔人だ! 殺せ!!


思い起こされる過去の記憶

先の誹謗中傷の件もあってかフィリアの中に疑心が浮かびつつあったのだ












ーー助けないと













現場へと到着したフィリア達だが、見るも無惨な現場の光景に顔を顰めた


「遅かったか・・・」


破壊され尽くした屋台


家の中へと逃げ込もうとした市民を捕まえ逆に家に押し入ったのだろう。中から破壊された家屋が今も火の手を上げている


おそらく下手人は立ち去った後の様だ


「誰かいないか! 助けに来たぞ!」


せめて無事な住人がいないかと当たりを散策すると瓦礫となった家の中から呻き声が聞こえた


「無事か!!」


急ぎ声の方へ向かったセドは瓦礫を退ける

すると、3人の母子の姿があった


「どう?」


「あぁ3人とも無事だ」


完全に崩れた家の瓦礫の隙間に"収まっていた"おかげだろうか

服の汚れは目立つがそれ以外は特に傷も見当たらない親子の姿にほっと胸を撫で下ろす


「さぁ掴まれ・・・」


引き上げようと手を伸ばした時だった言い知れぬ違和感を覚えた


家は完全に崩れ切っている

だが、瓦礫の散らばり方からして他の建物とは違い外側から力をかけられた事による倒壊


家屋保護結界を突き抜ける程の攻撃、さぞ崩れる時も派手に崩れた事だろう


それなのに、この母子3人に外傷は見られない

全くの無傷なのだ


気が付いた瞬間、引き上げようと伸ばした手をすぐに引っ込めて距離を取る


「どうしたの?」


「貴様ら・・・何者だ!」


セドの行動に疑問の声を上げるフィリアを他所に声を張り上げた


「あの人どうしたの?」


「痛いよ・・・早く引き上げてよ・・・」


「何を言ってるのかわかりませんが、早く出してください・・・この子達を・・・」


「なら自分で出てくれば良いだろう」


冷たくあしらう様な言葉と共に、思い当たる存在の名を口にする


「ウココツ」


暫しの沈黙

その名を出した瞬間、母子3人は助けを求めるのをやめて黙り込む


しかし、次の瞬間には腹から湧き出る笑いを抑えるようにクツクツと嗤い出す


「その名前はやめてよ、鶏の鳴き声みたいで嫌いなの」


半液体で出来た身体を軟化させて、這いずるように出て来た2体のスライム

次の瞬間にはその身体を人の形へと変えると顔が、身に纏った衣服が形作られていく


「ウツツ、コウ!?」


「やっ、久しぶり」


「ハァイ、フィリアちゃん迎えに来たよ」


姿を変えて現れたのはウココツの分身体であるウツツとコウだった


2人は旧友にあったかのような気軽さでフィリアへと声をかけて来た


だが、発された言葉にセドは眉を顰める


「迎えに来ただと?」


「そ、なんかスポンサーがフィリアちゃんの事が必要なんだって」


「だから、連れ帰らせてもらうよ、なんでか知らないけどトウヤ君はいないみたいだし」


「フッ・・・」


フィリアが必要とはどういう事か

疑問が浮かぶと共に8大罪討伐実績のあるトウヤがいない今を狙ってきたという言葉に思わずセドは笑ってしまう


「何がおかしいの?」


「いや、トウヤがいないというだけで易々と連れ攫えると思っていると思うとおかしくてな」


「もちろん、君の事は織り込み済みだよ、セド・ヴァラド」


不意にウツツとコウの背後から声がした

何者かと目を凝らしてみれば、先ほどの瓦礫から少年が這い上がってくる


「対魔人の為に研鑽を重ねて来た大貴族がひとつであるヴァラド家の嫡男、君の事を軽視する訳無いじゃないか」


「・・・何者だ?」


歳に似合わぬ冷静沈着な立ち振る舞いにセドも警戒心を露わにする


そんな彼を見て少年は面白そうに嗤った


「君の妹とは会ったことあるけど、君とは初対面だったね。初めまして」


次の瞬間には少年の身体が膨張を始める

全体的に丸く夜闇に紛れてしまう程の黒い体色

内側から生えてくる手の様な毛


その姿にセドは聞き覚えがあった


義妹であるリーゼとトローネが学園で戦った怪人

握る拳に、肩に力が入り、眼差しはどんどんと鋭くなっていく

怒りの感情を全身から溢れ出させながらその怪人の名乗りを聞いた


「僕テッラ! よろしくね!!」


「あぁ・・・聞いたよ、リーゼとトローネが世話になった様だな」


愛すべき家族と愛弟子にトラウマを押し付けた憎き怪人、それが今目の前にいる


怒りから獰猛な笑みを浮かべて、そのまま殴り殺してしまうのではないかと思える程に重い一歩を踏み出す


「セド・・・?」


そんな彼にしては珍しい様相にフィリアは驚き、テッラは尚更笑みを深めた


「怒ってる? 怒ってるのかな?」


「いいや、怒ってないさ・・・ただ世話になった礼をしたいと思っていてな、そこを動くな、すぐに叩きのめしてやる」


「それを怒ってるって言ってるんだよ!!」


一触即発の問答

そんな彼の怒りの歩みに呼応する様にテッラもまた彼に向けて駆け出す


片や風を纏った拳を、片や毛の様な細い手を束ねた拳を突き出しぶつけ合おうとした













その瞬間、2人の動きは止まった


ーーこれは・・・ 


動かない、というよりも動けない


「何・・・これ・・・」


声が震える

粘りつく様な高濃度の魔力がその場にいた全員を包み込む


何が起こっているのかわからないがこれだけはわかる


何かがこちらへと近づいて来ているのだと


そして、その覚えのある魔力にフィリアとセドは絶句する











「あれ、あれれ? セドだ!」


無邪気な女児の声が響く










「おやまぁ、怪人と戦っているんだね」


温和な老婆の声が聞こえる











「なら今すぐ助けるぜ!」


トウヤのものとは違う、活発な男性の声が聞こえる











「待っててね、フィリアちゃん、セド君!」


天真爛漫な少女の声が、フィリアの心を掻き毟る








それが全てひとつの影から聞こえてくる


「なっ・・・!?」


「嘘、違う・・・こんなの・・・」


しかして2人はその姿を見ても驚くのでは無く、真っ先に自身の正気を疑った



だって、おかしいだろう


路地の闇の中から月明かりの下へと完全に姿を現したそれ

人の形をしながらも腹から3本目の足が生え、背中からも1本腕が生えてる人間など

スーツは紫色に変わり、膨張した身体を張り裂けんほどに引き伸ばされながらもなんとか受け止めている


明らかな異形

だが、確かに感じ取る魔力はそれが彼なのだと嫌になる程伝えてくる


ーー嘘だ、ありえない


だが、それは現実に起こっている


ーー違う、違う


認めたく無い

そう思いながらも漸く見つけた彼の姿に、その名を呼ばずにはいられない


「トウ・・・ヤ・・・?」


そして、その呟きに呼応する様に膨張した紫色のそれは名乗りを上げた



「この炎の戦士フレアレッドが!」


「私が!」


「僕が!」



「「「「「「「助ける!!」」」」」」」


幾つもの声を重ね合わせながら











男は見下ろす

ただただ、なんの感情を浮かべることなく

だらしなく無精髭の生えた顔に表情の色は無く


無機質に、無関心に、膨張し肉の塊となったトウヤの末路を眺める


「ハッピーバースデー」


それは彼が意識的にしたものでは無い


気が付けば口にしていた。そんな平坦な言葉


だが、だからこそなのか


その言葉を口にした瞬間から、彼は胸中に湧き上がる感情を知覚する

熱く、熱く燃える様な、弾け飛びそうな程の愉悦


その感情に誘われるがままに自然と口角は上がり呟く


「浅間灯夜」


篝野は嗤う


諦観も、希望も、その全てをない混ぜにしながら嗤うのだ


















『警告、自動製造機にて重大インシデント発生。侵入者あり』


ーーここをこうして


ーーあれをこうして


『警告、自動製造機の書き換えを検知、今すぐ・・・し・・・さ・・・い・・・』


ーーあ、出来たぁ!


ーー出来た出来た


ーー出来た出来た出来た


ーー出来た出来た出来た出来た出来た!!


『デキタデキタデキタデキタデキタ・・・!! 自動製造機より報告、新装備の開発終了、装備めいしししし、コ、ココードネームムムム』


ーーヘルエス!


ーーフォトン!


ーーフォートレス!!


『名称:フォトン、並びにフォートレス』





俺ホラー展開的なの結構好きかも

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