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異世界における他殺死ガイド83

 

 プレアム ―空中庭園―


 チョロチョロ


 石造りの床にある溝を水が流れている。庭園に植えられた植物に水をやるための機構である。


 その溝を辿っていくと直線だった溝が分かれて曲がり、大きな円を描く。その円の床は少し周りより高くなっている。


 その円の周りには様々な植物が植えられており、見る者に癒しと潤いを与えてくれる。


 円の中心に立つのは豪華な装飾の鎧を纏った男。


 ボクシンスキー達兄弟を世に送り出したバギョー家長男、バクシンスキーである。


 バクシンスキーの纏う鎧の隙間から、黄緑色の液体が覗く。



 アリナ・ミンヴィー。



 それが使用者に与えるのは、カラダが疲れているが、もうひとがんばりしたい時の力である。


 シュウウウ


 バクシンスキーの体から黄緑色のオーラが浮かび上がり、それはバクシンスキーの装備している剣と盾に吸われていく。



 神器 茶阿久。


 ティタンの作りし十四神器の内の一つ。



 神器は使用者の生気を吸いとり、それを破壊力へと変換する。だがそれでは敵を倒す前に使用者の力が尽きてしまう恐れがある。そこをアリナ・ミンヴィーの力で補った。これがプレアムの誇る切り札、滋養強壮薬の最も有効な使い方である。



「おらあ!」


 バカン!


 バクシンスキーはモチャムの殴りかかりを盾で防いだ。


「おおおっ!」


 拳を盾で防がれて距離を取ろうとするモチャムを剣で攻撃するかと思いきや、バクシンスキーは剣を盾に突き刺した。


 ジキジキジキ! ガキン!


 なんと剣が盾に接続され、一つの大きな斧のようになったではないか。


 そのままモチャムの体めがけて振り下ろされる斧。


 ドガァ!


「ぐああっ!」


 バクシンスキーの攻撃を両手で防いだものの、神器の力に押され吹き飛ばされるモチャム。


 ドッ!


「グルゥ」


 吹き飛ばされたモチャムを体に当てて止めたのは黒妖犬であった。


「悪ぃ、助かったぜポンタ」


 ポンタと呼んで黒妖犬の体をさするモチャム。だが茶阿久の一撃を防いだモチャムの両腕はボロボロである。


 ジキジキジキ!ガキ!


 大きな斧から再び剣と盾の形態へと戻る茶阿久。攻撃する度、神器は相当量の生気を使用者から吸い取るはずであるが、アリナ・ミンヴィーの力によりバクシンスキーに疲れは見えない。


 攻守一体の神器に、神器の力を使って生気を吸われても疲れ知らずの体。


 バクシンスキーは間違いなく強敵であった。


「くはははは!然しものお前達もこの力の前には手も足も出まい!」


 バクシンスキーが余裕の表情を見せ、モチャムに話しかける。


「しかし聞いた話ではお前達は二人組だったはず。もう一人はどうした?」


 モチャムとブロッホはプレアム攻略を二手に分かれて行っていた。現在ブロッホは坑道で爆走中である。


「野暮用だ」


 モチャムの体が発光した。


 フサァアア


 モチャムのフサフサがフサり、大きな白い獅子が姿を現す。


 それを見てニヤリとするバクシンスキー。


「お前達が魔物に変身することも聞いているぞ。かかってこい、神器の錆にしてくれる!」


「ガルアアア!」「グルウアアア!」


 白獅子と黒妖犬が同時にバクシンスキーに飛び掛かり、前足の爪で攻撃する。


 クロス・クロウである。


 シュガッ!


 だがそれは茶阿久の盾に防がれてしまう。


「くははは!」


 ジキジキジキ!


 茶阿久が斧へと姿を変え、モチャム達に向かって振り下ろされるその瞬間。


 ザバァ!


「ヴロロォ!」


 床の溝を流れる水の中から飛び出したのは具足虫の水棲亜人イゴルであった。


 イゴルの背中から白い蛸の触手がバクシンスキーに向かって伸びる。


 ヒュバッ!


「何ぃ!?」


 完全に虚を突かれたバクシンスキーはイゴルに茶阿久を奪われてしまった。


 すかさずバクシンスキーへと襲い掛かる白獅子と黒妖犬。


「ガルアア!」「グルアア!」


 二匹の獣は鋭い牙でバクシンスキーの鎧を切り裂いた。


 クロス・ファングである。


「ぐわあああああ!」


 ドシャアア!


 バクシンスキーは後ろに吹き飛び、庭園に植えられた植物達に埋もれた。





 フサァァ


「助かったぜイゴル」


 メガ覚醒状態を解除し、イゴルに礼を言うモチャム。だがイゴルの様子がおかしい。


「ヴロロ……」


 シュウウウ


 イゴルは茶阿久に生気を吸い取られていた。


「おい、神器を放せイゴル!」


 だが何故かイゴルは動かない。


 それに焦ったモチャムがイゴルに駆け寄ろうとした時である。


 ザバアァ


 何者かが溝の水の中から飛び出てイゴルへと駆け寄った。


 チョロロー


 じょうろでイゴルの頭に水を掛けるのは蛸の水棲亜人ラチェルであった。


「水かけてないと動けないの」


「ヴロォ……」


 水を掛けられたイゴルは動き出し茶阿久を手から離した。


「そりゃ難儀だな。なんにしろありがとよ」


 モチャムがイゴルに向かって手を突き出す。イゴルはそれに答え、モチャムの手を叩いた。


 モチャム達がバギョー家の者達を残らず倒したことでプレアムの軍部は壊滅した。これでプレアムに残る倒すべき相手はニクスのみである。





「……」


 勝利を喜ぶモチャム達を遠くから見守る黒い影がある。


 シュバッ!


 黒い影はモチャム達に見つかる前に、庭園の植物の中に身を隠した。


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