第5話 バズったのは討伐ではなく救助だった
朝の喫茶店で、俺は人生初の“切り抜き人気”を見せられた。
「ここ見てください」
澪がスマホを差し出す。コメント欄は想像以上にまともだった。
『派手な魔法よりこういう仕事が見たい』
『社会人パーティーを助けるの、妙にリアルで好き』
『保守員さんの続報ありますか』
「終電後救助で検索すると、あなたの名前予想まで飛び交ってます」
「顔出ししてないのに?」
「腕章と声で特定しようとする人はどこにでもいます」
澪はブラックコーヒーを一口飲み、真顔になった。
「だからこそ、先にこっちが主導権を持った方がいい」
「主導権?」
「救助配信です。討伐じゃなくて、保守と避難と事故調査を見せる」
無茶だと思った。
だが、会社に黙って潰されるよりはましだとも思った。
「顔も住所も職場も全部ぼかすなら」
「そこは絶対守ります」
その日の夜、俺は自腹で新しい安全帯と補助ライトを買った。左遷で減った給料には痛い出費だが、昨日みたいな現場で備えが足りない方がもっと痛い。
試しに入ったのは、地下一層の補助通路だった。古い罠センサーが鈍り、金網の足場が軋んでいる。
「派手なことは起きませんよ」
「大歓迎です」
澪がカメラを固定し、俺は壊れた警報ランプへ手を伸ばした。
熱が流れる。
昨日ほどじゃないが、今度は自然に扱えた。切れた配線が繋がり、ランプが点く。続けて安全帯のバックルも修繕してみると、内部の歯がぴたりと噛み合った。
「武器よりそっち向きですね」
「俺もそう思います」
そこへ玲奈から着信が入る。
「須藤さん、今夜すぐ第三層へ行けますか。振動センサーの値が、変なんです」
昨日の救助どころじゃない声だった。
俺は工具箱を持ち直した。
「行きます」




