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第38話 最終列車の乗り遅れ組
月末の夜、桜葉第四層見学コースの初正式運用が始まった。
とはいえ参加者は少人数だ。講習済みの成人探索者四人と、市の確認担当二人。派手なイベントにするつもりは最初からない。
問題が起きたのは帰りだった。
地上の最終列車が強風で数分早く打ち切られ、見学参加者のうち三人が乗り継ぎを失ったのだ。二十九歳の税理士、三十七歳の看護師、四十二歳の物流管理者。全員、明日も普通に仕事がある顔をしている。
「申し訳ないです」
玲奈が頭を下げかけるのを、三十七歳の看護師が止めた。
「助かった帰りに怒るほど若くないです」
そこで俺たちは、急遽閉鎖していた保守連絡通路を使った徒歩退避ルートへ切り替えた。もちろん正式に使える区画だけだ。
強風で地上導線が乱れた夜、地下の正しい逃げ道が役に立つ。皮肉みたいだが、こういう時のために整えてきた。
澪の配信は回っていたが、映るのは足元と案内だけ。
『最終列車の乱れ時は、駅員と安全室の指示を優先してください』
誰も走らない。誰も無茶をしない。大人ばかりの列が、静かに、でも確実に通っていく。
地上へ出た時、四十二歳の物流管理者が笑った。
「派手じゃないけど、こういうのが一番ありがたいんですよ」
その一言で、今までの地味な積み上げが全部報われた気がした。




