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第34話 玲奈の休憩室
大雨対応の翌朝、玲奈は明らかに限界だった。
目の下の隈もそうだが、報告書の改行位置がずれている。あの人がそこを乱す時は、だいたい眠っていない。
「二時間でいいので寝てください」
俺が言うと、玲奈は即答した。
「無理です」
「無理じゃなくて、必要です」
押し問答の末、俺は旧事務室の隅を勝手に片づけ始めた。壊れていた折り畳みベッドを修繕し、うるさい換気扇を静かにし、非常灯の色温度を少し落とす。
澪が呆れ半分で笑う。
「何してるんですか」
「休憩室の補修です」
「急に生活感ある話になりましたね」
辻本が毛布を持ってきて、香織が保温ポットを置き、由佳が“二時間は起こさない”札を作った。気づけば、現場の大人たちが全員で一人の休み場所を作っている。
玲奈は最後まで抵抗したが、ベッドへ座った瞬間に負けた。
「……二時間だけ」
「はい」
ドアを閉めた後、澪が小さく言う。
「須藤さん、前より人の疲れ方にも気づくようになりましたね」
「壊れる前に見つけるのが仕事なので」
「設備だけじゃなくて?」
返事に困って、俺は工具箱の留め具を直した。
配信には映らないし、数字にもならない。
でも、こういう休憩室があるかないかで、次の夜の判断は変わる。




