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第31話 第四層の開通試験
仮設見学コースの開通試験は、土曜の夜に行った。
参加者は市の監査担当、玲奈、俺、辻本、由佳、それに講習を終えた三十代の社会人探索者二人。全員成人、装備確認済み、無理をしないと理解している人間だけだ。
第四層保守路は、閉鎖エリアとはいえ完全な死地じゃない。危険なのは、古い案内と違法配線が混ざって、本来の逃げ道が見えにくいことだ。
「照度、良し。手すり、良し。換気、良し」
俺が確認しながら進むと、背後の参加者が驚いたように言う。
「こんなに確認するんですね」
「確認してから通るのが、保守側の普通です」
第四層の保守床は思ったより静かだった。昔のケーブルラックと今の魔力導線が重なり、無機質な青い光が細く走っている。
順調に見えた試験は、終盤で崩れた。
分岐扉の認証盤が、突然エラーを吐いたのだ。画面には正規コードじゃない入場記録が残っている。
「偽パスです」
由佳が即座に言う。
「違法ツアー側が使ってた認証形式」
誰かが先にここを通った。しかも今夜、俺たちの試験に合わせて。
扉そのものは修繕で戻せる。だが向こう側から、足音が近づいてきた。
軽い。慣れている。逃げるんじゃなく、こちらの反応を見に来る歩き方だ。
玲奈が低く命じる。
「灯り、絞って」
第四層の静けさの中で、違法側はまだこちらを諦めていなかった。




