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第28話 切らないマイク

翌日の取材会見で、一番落ち着いていたのは澪だった。


 栄都メンテの件が漏れ始め、複数のメディアが“臨時保全部隊の内幕”を欲しがっていた。派手な救助回だけを切り取れば、いくらでも視聴数は取れる。


「でも切りません」


 澪は会見前にそう言った。


「準備八割、救助二割。それでつまらないって言うなら、そこまでの相手です」


 彼女のマイクはいつも、見せ場より少し前から回っている。点検表を書く手、ヘルメットを渡す声、避難路を先に確認する足音。そういうものを削らない。


 会見では案の定、露骨な質問が飛んだ。


「次の大事故の可能性は?」

「救助映像の独占契約は?」

「市と配信の癒着では?」


 玲奈がいなし、俺が必要な部分だけ答える。澪は会見の端で、質問だけじゃなく会場外の雑音も拾っていた。


 そこで彼女が俺へ端末を見せる。


「今の、聞こえました?」


 休憩に立った記者席の後ろで、栄都メンテの担当者が誰かへ電話している音声が入っていた。


『予算前に実績だけ取れればいい。避難路の交換は次年度へ回せ』


 事故を減らすんじゃない。事故が起きにくいふりだけ先に整える気だ。


 澪が小さく息を吐く。


「だから切らないんですよ。前後ごと残ってると、変な本音も混ざるので」


 会見後、俺たちはその音声を玲奈へ渡した。


 大げさなスクープじゃない。けれど、こういう小さい本音が、現場を一番壊す。


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