第27話 四層行きの講習会
違法ツアーの客を追い返すだけでは足りない。
需要があるなら、正規の入口を作るしかない。
市は急遽、成人探索者向けの第四層安全講習を始めることになった。閉鎖区画そのものを開けるわけじゃない。だが保守路に隣接する公式点検見学コースを整え、危険と限界を最初から教える。
講師は俺。補助は玲奈、配信記録は澪、実地説明は辻本。
「地味スキル持ちが講師って、ちょっと面白いですね」
参加した三十二歳の会社員が笑う。
「派手な人の方が死ににくいわけじゃないですから」
俺がそう返すと、会場が少しだけ和んだ。
講習会ではモンスター対応より先に、通路の幅、避難扉の待機位置、魔力停電時の会話手順を教える。参加者は皆大人で、質問も現実的だった。
「残業帰りで疲れてる時は潜らない方がいいですか」
「いいです」
「酒が抜けてれば」
「抜けてても判断が鈍いなら駄目です」
澪が横で笑いを堪えている。
終盤、由佳が資料を配りながら小さく言った。
「こういう普通の説明、前は誰もしてくれなかった」
普通だからだろう。普通は映えないし、金にもなりにくい。
だが講習後の申込用紙には、想像以上にしっかりした字で記入が並んだ。二十九歳の税理士、四十四歳の物流管理者、三十七歳の看護師。皆、危険を知ったうえで、それでも入りたいと書いている。
大人は無茶をしないわけじゃない。
ただ、理由を知った上で選べるなら、その選び方は変わる。
講習会が終わる頃、玲奈の端末に通知が入った。
「栄都メンテの入札担当、明日こっちへ来るそうです」
どうやら今度は正面から、仕事を取りに来るらしい。




