第26話 高架下バスターミナルの支線
桜葉ターミナルの高架下には、使われなくなった連絡支線がある。
昔はバスターミナルへの荷捌きと保守員移動に使われていたが、ダンジョン化の影響で閉鎖された。今はシャッターが下り、表向きはただの倉庫だ。
表向き、というのが面倒だった。
中へ入ると、違法ツアーの準備はかなり進んでいた。案内テープ、安物のヘッドライト、レンタル安全帯。命を守る装備の形だけ整えて、危険な客を安心させるやり口だ。
「性質が悪い」
辻本が吐き捨てる。
奥の連絡扉には、新しい送風機が仮付けされていた。俺が触れると、軸受けだけが不自然に安い部材へ替えられている。
「二時間持てばいい作りです」
「ツアーの往復だけ持てば十分、ってことか」
玲奈が周囲の写真を押さえる一方で、由佳が壁の業者印を見つけた。
「この下請け、前にも倉田が使ってました」
名前は栄都メンテ。表向きは安価な駅設備修理会社だが、地下では“壊れない程度にだけ直す”仕事で食っているらしい。
ちょうどその時、シャッターの外で物音がした。集合時間を勘違いした客が二人来たのだ。
三十八歳の営業職と、四十一歳の自営業者。二人ともスーツの上に貸し出しヘルメットを抱えていた。
「あの、第四層の特別見学って」
玲奈がすぐに身分を示し、違法案内だと説明すると、二人は本気で驚いていた。
「ネットで“保守室公認”って……」
つまり連中は、俺たちの存在まで勝手に看板へ使っていた。
俺はため息を押し殺した。
地味な仕事は、信用ごと盗まれると本当に厄介だ。




