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第25話 市議会視察と安全予算

違法ツアーの入口を封じる作業と並行して、俺たちは昼間の視察対応もやる羽目になった。


 市議会の生活安全委員会。予算査定前の現場確認だ。


 来たのは五十代の委員長と四十代の財政担当、それに三十七歳の若手市議。全員、見たいのは安全そのものじゃなく、金額の根拠という顔をしている。


「つまり、保守を強化すると事故が減る、と」


「はい」


「事故が起きていないなら、今の体制で足りてるとも言えますよね」


 よくある理屈だった。


 何も起きていない時ほど、何もしていないように見える。


 俺は案内しながら、南改札裏の非常扉A―17を見せた。


「この扉、去年は三回噛みました。今月はゼロです」


「交換したからですか」


「交換したあと、誰が、どの周期で、どこまで締めるかを変えたからです」


 さらに第三層の避難通路、地下二層の訓練記録、配信後に増えた事業者講習の申込数を見せる。数字にすると地味だ。でも地味な積み重ねこそ、予算がないと続かない。


 若手市議が立ち止まった。


「この配信、うちの事務所でも見ました。母が駅ナカ勤務なんですが、“こういうのを先に知れて安心した”って」


 それなら話は少し早い。


 委員長は最後まで渋い顔をしていたが、帰り際に一言だけ落とした。


「派手な事故が起きる前に数字を出せるなら、安いのかもしれませんね」


 安い、でいい。まずはそこからだ。


 視察が終わると、玲奈が端末を見ていた。


「週末ツアー、集合場所が変わりました。高架下バスターミナル支線」


 地下だけじゃなく、地上側の老朽設備まで巻き込む気らしい。


 俺は点検表を閉じた。


 予算の話が通る前に、現場の方が先に走り始めている。


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